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今日もこの潮臭い街で。
「遥くん、お弁当。」
母親が弁当を差し出した。いつもの弁当箱より、一回り小さい。
俺が、全然食べてないことに気づいているんだ。
だってそうだろ、あの日から全部、味がしなくて、雲の中にいるみたいで……。
ただ、日常だけが知らん顔して歩いていく。
俺は一体、どこを見て歩けばいいんだろう。
郁子の席から花瓶が消えたのと同時に、みんな悲しむのをやめていた。
俺だけが取り残されていて。郁子の1番の親友だった倉本詩織ももう違う友達と笑っている。
俺は、郁子の席に座ってみた。
郁子の気持ちがわかるんじゃないかと思ったんだ。
でも、そんなはずもなく。もう帰ろうと思った、その時だった。
「七瀬…?」
そこで出会ったのが、あいつじゃなかったら、どんなによかっただろう。