テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「…どうして?」
「どうして?」
「どうして殺したの?どうして?」
メテヲは、完全に壊れていた。
憎しみに覆われ、だが聞こうとしていた。
ユピテは声すら出なかった。
居場所を失い、心から絶望し、ただ穢れてしまったプリュートを見ていた。
「ごめんなさい…ごめんなさい、ごめんなさ…」
「おれが、おれが悪いやつだから、おれが、愛しちゃったから」
「だからこうしないといけなかっ…」
「…愛した?」
「嘘だ、嘘なんでしょ?」
必死そうなプリュートの言葉を遮るように、メテヲは問い詰める。
「愛してたらこんなことしないよね、ね?」
表情ひとつ変えず、まるで諭すように問い詰める。
冷静でいようとしても、どうしてもそれは叶わない。
呼吸が浅いまま戻らない。
疑いの目で、プリュートを見つめる。
おおよそいつものメテヲとは思えない、彼が向ける眼
怒り、やるせなさ、苦しみ_様々な感情がぐちゃぐちゃに混ざり、考えれば考えるほど、それを受け入れなくてはならないことにひどく絶望する。
「…ごめんなさ…」
プリュートは震えながら、メテヲを見る。
ユピテはその目に嘘はないと、頭ではわかっていた、だがそれを口にするのはいい事なのか?
そう思ったからだろう、それを声に出すことができない。
血の臭いが鼻を劈く、痛いほど残酷で、ナイフで心臓でも刺されたかのようだ。
いっそ楽にしてくれ、そう願う。
だが、今タヒぬなんて不可能で、誰も助けてくれやしない。
分かっている。
わかっているのに
(…ころしてくれよ…)
(なんで…?あの時、なにがあったの…?)
(なんで誰もしゃべらないの?)
(なんでプリュート先輩しか見れないの?)
(なんで…目を逸らせないの…?)
___
「おっ、ユピテじゃ〜ん!どう?探索は?」
「っえへへ、皆さん凄く優しくて…もちろん先輩もですよ!!」
「ユピテ!!?大丈夫?立てそう?」
「は、はい…すみませ…」
「すみませんなんてなくていーの!みんなこうやって失敗してくもんだよ?」
「せ、先輩…!」
「っはは!お前ってほんとかわいいやつだよな〜!」
「ほんと、このメンバー最っ高!」
「そう、ですね!!」
「はは、そう言ってくれんのは嬉しいけど…油断すんなよ?」
「はーいっ。」
「はっ、そうでした…気をつけます!」
「まぁユピテはしょうがないか…」
「はぁ!!?デアモント先輩〜!!?」
___
(………せんぱい…)
(…あの時の先輩は、どこいっちゃったの?)
ユピテにはどうしようもなかった。
どうしても、楽しかったあの頃を思い出してしまう。
(…ここしかない、って思ったのに…)
(…こんな僕を受け入れてくれて…)
(親なんかよりも…愛をくれて…)
(蔑まれたりなんかしないところだった…のに…)
「せん、ぱい」
なんとか、言葉をかけようとする。
49
56
60
変貌してしまった彼に、なんと声をかけるべきか、ユピテには分からない。
「さいこうのチーム、って、いって……」
ユピテは掠れた声で、そう訴えかける。
必死に、出そうと頑張った声で、言葉だ。
それは半ば失望なのかもしれない、だがユピテは、心の底から、そう問いたかった。
プリュートが、嘘なんかではない、本物の感情で、それを肯定しようとする。
___その瞬間だった。
異様なほどの光が、一瞬、視界を白く染め尽くす。
「…え…?」
ユピテは、必死に光がどこから来たのか、見ようとした。
救助隊なのか?そう考える_だが、そんなわけはなかった。
それは白に、赤に、緑に_何もかもが混ざったかのように、ノイズでもかかったかのように、不規則に色が変わり続けた。
_それを発するのは、メテヲだった。
メテヲの目はタヒに、プリュートのことすら見ず、ただ虚空を見つめている。
普段彼にはない悪魔のような翼と、強く光り続ける光輪。
それはまるで_終末を告げる神のようにすら思えた。
だが、彼は他でもないメテヲだ。
宙に浮いて、人間離れした姿かもしれない。
だがユピテは知っている。
_今からメテヲは、能力を使おうとしている。
何度かはこんな様子を見た。
危険が迫ったときにしょうがないからと、自分達以外に向けられたもの。
だが、それは今___どこかに向かおうとしている。
「…うぁっ!!?」
洞窟が、揺れ始める。
飛行機が墜落した時のように、ただ地面が、天井が激しく揺れ、岩はボロボロと崩れる。
それはメテヲにも当たる。だがメテヲはいにも介さず、呪文のような旋律を唱え続けている。
(…ごめんなさい)
(ごめんなさい、ごめんなさい…)
プリュートは懇願するようにメテヲに跪くが、揺れはどんどんと激しくなり、すぐに体制を崩し倒れ込んでしまう。
ドンッ!!と、ユピテの右斜め前の岩が爆発する。
それはどんどん不規則に続く。
上も、真後ろも、前も、全てが破壊の限りを尽くし、洞窟だったものは瓦礫の山で覆われていく。
「め、メテヲ、さ…」
プリュートの声も、ユピテの声も届くことはない。
呪いを、呪詛を、悲しみを、ただ唱え続けた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!