テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
これが変身もののアニメだったら、どれほどよかったのだろうか。
ユピテはそう考える、だが現実はそんなことを考える余裕すら与えてはくれなかった。
_天井が、大きく抉られる。
「…あっ…あ、ぁあ…」
抉れた場所から落ちてきた岩が、ユピテの背中に直撃する。
「め、てをさん、おねがいです、とまって」
その言葉を無視し、今度は脚に岩が直撃する。
「…っが…がは、ゲホッゲホッ…」
能力は、自分すらも傷つけた。
メテヲの頭からだらりと血が流れる。
だがメテヲはそんなこと眼中にすらなく、洞窟は瞬く間に穴が開き、破壊されていく。
それはプリュートの脚を抉り、地面に穴を作り、プリュートは危うく穴に落ちそうになる。
「天罰、てんばつだ、俺が狂ってて、おかしいやつだから」
「だからメテヲさん、は…」
「ぁ゛……」
痛みが、言葉を途切れさせた。
痛みが視界を明滅させ、頭から流れる血が視界を真っ赤に染めた。
「いた、いよ…いた…いよ…」
まるで純粋な子供が転んだかのように、そう呟いて泣くことしか今はできなかった。
プリュートは動くことはなかった。
メテヲを止めることは出来ないとわかっていたからだ。
「…もう、タヒんだほうがましだよ、あはは」
「あはは、あははは」
そう言って額を歪ませ、精一杯の笑顔を作ろうとする。
「あははは、あははははは」
彼はとうに狂っていた。
自分はもうじきタヒぬと、心からそう思った。
もう、そっちの方がいい。
今ここで消えなくては、この世界にまた迷惑をかけてしまう。
「めて、をさん、ころし、ころして、ください」
それは懇願だ。
それは最後の願いだ。
「おれがおかしいやつ、ってまま、ころして、おれをまともだって、思わせないで」
「罪人は、いきてるべきじゃない、から」
瞬間、メテヲの破壊によって落ちてきた大きな岩が、プリュートの喉を貫く。
「…っ!!」
その痛みを最後に、プリュートの声は途切れた。
ユピテはメテヲに手を伸ばした。
49
56
60
「とま、って、とまってくださ…」
「…あなたが、みとめてくれたの、嬉しかったんです」
「優しさをくれたあなたのこと、大好きなんです。」
「アンドロ…っげほ、メダも…ぜんぶぜんぶだいすき……」
ユピテが必死にかけた言葉も、もはや届くことはない。
何度呼びかけても、彼はユピテを見ることも無く、ただ破壊だけを続けている。
メテヲの身体もボロボロになっていた、そのはずなのに、一切彼は勢いを止めない。
_ユピテが、その命を終わろうとした、その時だった。
…ごめんね。
そんなメテヲの声が聞こえる。
「…ぇ…」
彼はユピテの方を向こうともしない、破壊の手は止まることはない。
(…幻聴…?なに…?メテヲさん、しょうき…なの?)
(わかんない…わかんないよ…)
だが、その言葉を最後に、ユピテの背中すらも貫くほどの大きな岩が、直撃する。
「…めて…さ………。」
最期まで呼びかけた彼も、意識を落とした。
その後も、30分ほどだろうか、洞窟そのものを破壊し尽くしたメテヲは、頭に岩が何度も当たるうちに限界を迎える。
「…………」
旋律は途切れ、メテヲの光輪も、悪魔の翼も無くなると、地面にバタリ、と倒れ込む。
最後には、全身がボロボロになったメテヲと、岩に埋められた仲間だけが残っていた。
そこはもう洞窟ですらないただの穴と化して、陽の光が残酷に、ボロボロになったメテヲだけを照らしていた。
堂々と佇む陽は、まるで舞台のスポットライトのようだった。
_だがこれは舞台ではない。
メテヲは起き上がることなく、ただ瓦礫の上で、 静かに眠っていた。
あの日聞いた笑い声も、何も残っていない。
そこに、観客など誰1人いない。
ただ静かで、ただ孤独な青空の下だ。
____
「速報です!!⛌⛌洞窟にて、大規模の破壊行為が行われたとの事です!!」
ニュースキャスターの女性がひどく焦った様子でそう報じる。
「…え、怖〜い。」
「かわいそうに…」
「…はぁ、こんなニュース見てたら気が滅入るからやめよっと。」
何も知らぬ一般人は哀れんだ。
そこに感情なぞ籠っていない、あくまで全員が”部外者”であり、何一つ関係のない人間だ。
「…そんな…酷すぎる…。」
酷く傷つく者もいた、だがそれもまた、どこか表面的なものだ。
ウパバロンは、酷く傷つく側だった。
「…そんな…」
「…リィン・システムがあったら、もっと…」
「…いや、こんな状態で生き返ったら…」
それは、価値観を揺るがすものなのかもしれない。
___
「タヒなないことって、本当に救いなのかな?あはは。」
八幡宮は机に頬杖を着きながら呟く。
「…でも、私はシステムの根本に触れるまで、やめる気はないよ。」
そう宣言するように言って、隣に座る人物を見やった。
「ねぇ?レイラーさん?」
質素な部屋で、 八幡宮はそう言ってニヤリと笑いかける。
少しうるさいくらいのクーラーの音が、少しの沈黙を余計強調する。
顔を顰めたレイラーは、呆れたように深くため息をついた。
「ちょっとは傷つくものなんじゃないんですか?こういうのって。」
レイラーはそう言って目を閉じ、八幡宮と同じように頬杖をつく。
そして、そっぽを向きながら呟く。
「タヒが救いかとか、私にはわからないですよ。」
「…確かに、根本を知るまでやめる気がないのは私も同じですけど…あはは。」
「…けど、本当に惨い、ですね。」
テレビの方に視線を戻し、レイラーは言う。
八幡宮も、それに答えた。
「そうだねぇ、嫌な事故だと思う。」