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メイズは表情一つ変えずにフリーザにじりじりと近寄ってくる。なんだこれは、とフリーザは思っていた。
しかしフリーザの直感は言っていた。そろそろメイズは何か仕掛けてくると。
根拠はなかったが、反射的に体を横にずらした。それと同時にフリーザの横を掠って行ったメイズの拳。
凄まじいスピードで突っ込んでいた。少しでも避けるのが遅くなっていたらあの拳が直撃していたのは、火を見るより明らかだった。
自分の攻撃を避けられてしまったメイズは、特段驚きを示すことはしなかった。
それもそのはず、メイズには感情というものが一切備わっていないからだ。
喜怒哀楽を感じることもなければ、想定外の事態に対する驚きも未知のものに対する恐れも感じることはない。
開発段階の後半で、メイズの感情についても話し合われていた。感情が備わっていた方が良いと言う者と、感情を持ち合わせていない方が良いと言う者とで意見は割れていた。
しかし、フリーザ達が優先していたのは「フリーザの言うことに100%従う」ということ。感情が存在することで、知らぬ間にフリーザへの服従に対して違和感を覚えるようなことが起こってはいけなかった。
まだその判断が正しかったのか間違っていたのかは分からない。だが、メイズの体をこれ以上改造できないと言うわけではない。必要に応じてアップデートすることだってできる。
やはり感情が必要だと思ったらその時は感情のプログラムを組み込めば良い。
どこか冷酷にも見える黒い瞳でフリーザを見るメイズ。そこら辺のフリーザ兵であれば気絶しているような目線だ。
「どうしたのです?あなたの攻撃は掠りもしていませんよ?」
「ええ、確かに当たりませんでした」
「ではなぜそれで攻撃を終わらせるのですか?攻撃しなければ敵を倒すことはできませんよ」
「しかし、フリーザ様に攻撃することにはやはり…躊躇いがあります」
メイズに組み込まれた非常に強い忠誠心。それは、フリーザに攻撃することに対し本能的に良くない反応を示していた。
いくら組み手とはいえ、メイズの中ではフリーザに攻撃すると言うのは即ち自分の唯一の主人に手を上げるということ。傷をつけるようなことはまず間違いなくしてはいけないことだった。
思った以上の忠誠心にフリーザは驚いた。忠誠心の強さはギニュー特戦隊と同等かそれ以上かもしれない。彼らもフリーザに対し深く忠誠を誓っているが、メイズからも同じようなものを感じた。
「私以外の相手であれば良いのですね、では誰かに代わりに相手をしてもらいますか」
「ありがとうございます」
「私以外にあなたを相手できそうなのはギニュー特戦隊ぐらいです、折角ですから彼らにも挨拶をしなさい」
「はい」