テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
炭酸@サイダー
6,845
#愛され
あんこ
183
ましろ🩵🎤🎧🩶
18,115
空乃 風♋🥀🐇
12,230
朝事務所に入ると、銀髪に寝癖がついた髪を持ち、パジャマのような服を着ている彼ーーー
恵美まどかが椅子に座っていた。 そして神柴健三はそんな彼に声をかける。
「まどかさん!おはようございます。今日はお早いお目覚めですね」
そう言って彼は振り返り、瞳に私の姿を捉える。だがその顔は、初対面の人を見るかのような、冷ややかなものだった。
「…君、だれ?」
「……え?」
頭の理解が追いつかなかった。朝が早いから、寝ぼけているのだろうか。
いや、そんなわけない。まどかさんは記憶の天才。日常的なこと、ましてや自分の記録者のことなんて、忘れるわけがない。悪い冗談だ、きっとそうだ。そんなことを思いつつ、この聡明で知的な方が、そんな冗談をつくのだろうか、という矛盾の思いがあった。
前者であってほしいーーーそのような願いを込めて、言葉を紡いだ。言葉の節々が震えていると気づかずに。
「…ま、まどかさん?なんのご冗談でしょう」
しかしそのような願いは虚しく、残酷な言葉が紡がれる。
「冗談じゃないよ。本当に君はだれなんだ。用がないなら早く出ていってくれない?」
「…ッッ」
な…なんで?昨日は普通に話しかけてくれたのに。何かまどかさんに気に触るようなことをしてしまったのだろうか。とりあえず、深呼吸して事実確認をする。
「…え…えっと…私は…神柴…健三と申します。…あなたの…記録者を務めています」
「…本当に冗談はよしてくれない?僕は君に初めてあったし、僕の記録者は誠一ただ一人だ」
「………」
そんなわけ無い。はぐれ記録者として私をあたたかく迎え入れてくれた日を昨日のことのように思い出せる。じゃあなんでまどかさんに私の記憶がないんだろう?これまでの日々は私の妄想…夢だったのだろうか?
そのとき、事務所の扉が勢いよく開いた。
「おはよーさん!今日もいい天気やなあ!」
そう言って、彼ーーー踏分誠一が入ってきた。
「せ、誠一くん…」
私はすがるように彼に話しかける。いつもケンカばかりしているのだ。このアクの強い顔を忘れるわけもないだろうという最後の願いを込めて。
「…っと、恵美?お客さんか?」
「知らないよ。事務所に勝手に入ってきたんだ。僕の記録者の一人だとか言っちゃってさ」
「…え?なんともそれは…けったいな話やなあ。すんませんけど、名前を聞いても?」
「…か、神柴…健三…です」
「うーん…聞き覚え無いなあ。何かの間違いとちゃうんか?」
もう私はこの時点で心の整理がつかなくなっていた。一旦冷静に考えようとしても、二人が私のことを忘れている。その事実だけで頭がおかしくなりそうだった。我慢ができなくなってしまって咄嗟に叫んでしまう。
「……ッッ、冗談はよしてください!私はあなた達の…スワロウテイルの仲間ですッッ!!!名探偵のまどかさんと記録者の誠一くん、そして…私の3人で活動してきたではありませんかッッ!!!」
そうすると、声の大きさのせいか、顔を顰めたまどかさんから、今一番聞きたくない、残酷な言葉が口から溢れる。
「変なことを言ってるのは君だよ。僕らにとって君はーーー
やめて。お願い。その先は、聞きたくない。
聞いたら、現実になってしまう気がするから。
ーーー仲間じゃない」
その一言で、世界が暗転した。
コメント
1件
第2話、読ませていただきました……。 「仲間じゃない」、その一言が本当に刺さりました。 昨日まで一緒にいた人が、当たり前のように自分を覚えていない——その恐怖と孤独が、健三さんの視点からひしひしと伝わってきました。 「やめて、お願い。その先は聞きたくない」という願いにも似た心の声が、もう胸に迫ります。 この世界がどうしてこうなったのか、続きが気になって仕方ないです……!