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95 - 第95話*愛し愛され食べごろ果実*6

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2025年06月19日

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「夢なら別にいいだろって、散々……余計なことも言って。だから、お前に何を言って接近したかわからないけど、名草は俺の気持ちもお前の存在も何もかも知ってる」

「余計なこと言って……?」


優奈の問いかけには、曖昧な視線だけが返ってきた。答えてくれる気はないらしい。


「優奈のこと、すぐ調べてきたよ。あの女は。そのまま”兄”でいたいなら協力すると。見返りはいつでも会える関係でいろってわけだ。まあ、お前への気持ちを隠し通したかった俺には何よりの脅しだな。そして、俺も都合が良かったし」


なんの都合が? とは、話の流れ的に理解できない純粋さは悲しいかな。持ち合わせていない。性的欲求の捌け口は必要だったということだ。


「名草さん、綺麗もんね」

「……大多数はそう捉える容姿だな」


他人事のように答える雅人に少しだけイラッと湧き上がる怒り。


「でも、じゃあ、これからは会わないんだよね? 必要ないもんねぇ?」


チクチクとした雰囲気に気がついたのか、慌てたように雅人は起き上がってオロオロと身振り手振り。


「も、もちろん会わない」

「でもあの人、そんなにすんなり引き下がるのかなぁ? 都合よくさ。無理じゃない? まーくん女を舐めすぎだよね!」


今度は優奈がふんっと横を向く。


「優奈を盾にしておいて俺が何も用意していないなんて、あると思うか?」


拗ねる優奈の髪を柔く梳かして、雅人は言う。

チラリと見れば不敵に笑う、それは、兄でもなければ、優奈に好きだと告げたどこか頼りない男でもなく。


「俺にとっては優奈のかわりでも、あっちは違うっていうなら。いつお前に目が向くかわからないんだから」


雑誌やネットで横目にチラリ、見ないふりしてた、野心いっぱいの高遠雅人の自信溢れる表情だ。


「名草の会社が急激に拡大したのは、リトルの社長がバックにいるからだよ」

「リトル?」


とは、優奈の知るファストファッション最大手のことだろうか?


「不倫関係にあるな。パトロンとも言うのか?」

「パトロン……」


縁のない言葉に、優奈はただ繰り返すのみ。


「俺はあの女が誰と関係を持とうが心底興味はないけど、ブランドのターゲット層はどうなんだろうな?」

「ターゲット層……」

「ああ。あいつのターゲット層。同年代の子育て世代の女性たちは、昨今の傾向に関わらず不倫には大きく拒否反応を示すだろ? 追従して世間からの反応も大きくなる」


雅人の細められた瞳の奥。


「俺はとても寛容だろ? 今後一切俺と優奈に関わらなければそれでいいと、そう終わらせるつもりでいるよ」


そこに光るものは邪悪に映る。


「そ、そんなものなのかな」

「ああ。あの女は経営者としては素晴らしい野心を持ってると思うよ。だからこそそれを投げ捨ててまで俺に関わることはない」


何年もの間、きっと雅人の一番近くにいたのだろう、名草。


「まあ、今後も続ける関係なら、このネット社会だ。いつかはバレるかもしれないけど。そんなことは俺の知ったことじゃない」


切り捨てられるのも、また、雅人の持つ一面なのである。


「……軽蔑するか?」


そこまで言い終えて、雅人は初めて不安そうに優奈の様子を伺った。


「ううん」


しかし優奈は横に首を振った。

本当に優しい人間ならば、心を痛め、雅人に軽蔑の眼差しをぶつけるだろうか。


何を切り捨てても、ここにいてくれるならばそれでいい。そう思う優奈もまた、非情なのかもしれない。


「でも、これからは、私以外の人に目を向けたら許してあげないから」


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