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カトがそのまま盗賊のことを気にしていると、砂を舞い上がらせる強い風が吹いてきた。


カトは砂が目に入りそうになり、目を閉じていた。


「どうしたの、カト?」


優しい女の人の声だった。


スラ?


「そうだよ。ちゃんと私の名前覚えてくれてたんだね。」


うん。


「嬉しい。カトは盗賊、怖い?」


ちょっとだけ・・・。


「じゃぁ、いいこと教えてあげるね。」


何?


「スパネイに盗賊がたくさんいるのは、盗賊が支配して作った国だから。」


そうなんだ。


「それから、盗賊しか知らない盗賊のルールってものがあるの。」


そんなものあるの?


「盗賊にだって、良心はあるのよ。」


そっか。


「ルールの1つに、スパネイの中ではどんな人がいても相手には親切にすることってものがあるの。」


いいルールだね。


「そうね。だからカトのバッグの中にあるその水は、さっきすれ違った盗賊が、カトのためにこっそり入れてくれたの。」


そうなんだ。


「そろそろ、パライダに出発したら?」


そうする。


「頑張ってね。」


ありがとう。


「スウッ」と風が止むと、スラがこの場を去ったような気がした。


カトは水が入っている筒状の入れ物の1つを手に取り、水をぐいっと一気に飲んだ。


そして再びパライダに向かった。


しばらく歩き続けると砂漠はなくなっていき、背の高い森林が立ち並ぶようになっていった。


ここはドイラかな?


だとしたらもうすぐパライダに着くはず。


カトは希望を持って、歩くスピードを速めた。


すると一瞬、1本の木陰で何かがキラッと光ったような気がした。


なんだろ・・・。


カトは気になって、木陰に近寄った。


「ガサガサ」と辺りの草が音を鳴らし、緊張感を高めた。


草の中からはコロコロと淡い赤色を滲ませたような球が転がってきた。


球はカトの手のひらよりも一回り大きめで、小さな光の粒が周りにパラパラと舞っていた。


球はカトに気が付いたように不自然にその場で止まると、クルクルと勢いよく回り始めた。


そよそよと風が吹き始めた。


すると球から光の粒が風と共に勢いよくカトの方へと飛んできた。


っ?!


目をつぶる暇もなく辺り周辺を光の粒が飛び交い、粒がいくつかカトの目の中へと入り込んだ。


すると粒たちは目に沁み込むように溶け、カトの目の中で輝き始めた。


カトからしたら視界が真っ白で目が痛い状態だが、周りに人がいたならばその人達はカトの目に見惚れるだろう。


輝きを放つ粒たちは、カトの目の中で溶け込むかのように濃紺色に混ざっていった。


「い˝っ!」


すると球はカトの声に驚いたように回るのをピタリと止めた。


カトの目の色が少しづつ変わっていくのと同時に目の痛みは増していった。


痛みに耐えきれないカトの目からはボロボロと涙が流れた。


相変わらず真っ白な視界はじわじわと青色が滲み始めた。


カトの目は濃紺色から瑠璃色へぼわぼわと変化していき、小さな光をいくつも帯びていった。


痛みが引き、カトはそっと目を開き周囲を見渡した。


少し違和感はあったものの、周りをしっかり見ることはできた。


球はカトの目を確認すると、ビクッと動いた。


カトの目は、瑠璃色にキラキラとした光りが散りばめられていて、目を疑うほどに美しかった。


まるで雲1つない夜空に満開の星々が美しく輝いているように。


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