「‥んっ、‥あああっ‥」
乾いた部屋に響くのは腰を打ち付ける音と水音。深く折り曲げられた膝裏に彼の指が食い込み、痛みが走る。
激しい抽挿になす術なく、俺の身体は揺さぶられ続けていた。視界が歪む。
あまりの激しさに首を振って嫌だ‥と口にするが、狂ったように律動を刻む祐希さんが応えることはない。
肉欲を思うがまま貫き、悲鳴を上げる俺の口を塞ぎ、時折愛しそうに名前を呼ぶばかり。
耳元で名を呼ぶ声色は甘く優しい。されど、下半身を苛む動きだけは野獣のように荒々しかった。
奥へと挿入された欲望が上下するたびに、結合部分からぐちゃぐちゃ‥と水音が響き渡る。それは先程解き放たれた精液も相まって卑猥さを一段と増していた。
挿入されてすぐに祐希さんは一度、内奥で果てていた。
熱い液体を注ぎ込まれる奇妙な感覚に身体が粟立つが、内心ホッとした。
これで終わるんだと‥
だが、予想に反して、体内に留まる祐希さんの熱は萎えるどころかすぐさま、硬さを増していく。
「嘘‥やだ‥」
再度、襲ってくるであろう痛みを予想し、頭を振り懇願した。
子供のように大粒の涙を流せば、困ったように眉を寄せた祐希さんの顔が近づき、顔中に熱い唇を寄せる。
瞼、頬、鼻の上、おでこに、優しく唇が押し当てられた。
「ごめん、まだ藍の中にいたい‥」
一言だけ詫びるように呟かれた後、啄むようなキスを降らしながら、祐希さんの腰が前後に揺すられる。
無慈悲にもそれは激しさを増す。
何度、懇願しても終わりそうのない行為に、声も掠れ、強く掴まれた足の感覚すらも無くなりかけ‥
もうこのまま意識が無くなって欲しいと、願わずにはいられなくなった時、
それは突然襲ってきた。
「んんっっ、あっ‥‥」
激しく抜き差しする屹立が、最奥にある一点を刺激した瞬間、反射的に身体がビクンと飛び跳ねる。
痛みとは明らかに違う別の感覚。
それがジワジワと侵食していく。止められない。先端部分が、内奥を擦りあげられる度に、打って変わって甘ったるい声が口をついて出てしまう。媚びるような強請るような響きを含めながら。
嘘‥これが俺の声‥‥?
信じられなかった。
無知の感覚に、必死で抗おうとするも、それは凄まじく俺を掴んで離してくれそうも無い。気がつけば、勝手に腰が蠢き出していた。
「感じてきた?お前のここ、締め付けやばいな‥」
嬉々として呟く声と共に、首筋にピリッとした痛みが灯る。
噛まれた。歯を立てられた場所が徐々に熱くなる。
いや、
祐希さんが触れる部分が全て熱い。
赤い斑点を残しつつ、熱い舌が縦横無尽に這い回る所も‥
跡が残るんじゃないかと不安になるほど腰を握りしめてくる手の強さも‥
否応なしに俺の熱を上げてしまう。
「いやだ‥そこは‥いやや‥」
「嫌?嘘じゃん‥こんなになってるのに?」
「あっ‥‥‥‥やっ、」
もはや誤魔化せるはずがなかった。不意に熱い掌に握られた陰茎の先端からは、透明な液体をタラタラと垂らし、反応を示していた。
鈴口を爪で弄られると溜まらないとばかりに腰が揺れる。快感を追うことしか考えられない。
前も後ろも。激しく攻め立てられ、いつしか景色が歪み始めた。
奥深くまで肉襞を擦り上げられ、その度に喘ぎ声を漏らした。閉じることも忘れ、口元からはダラダラとはしたなく唾液が零れ落ちる。
それを絡め取るように祐希さんの舌が這い回っているのを感じた。
何度も何度も、貪るように唇を吸われ、打ち付ける肉欲をギリギリまで引き抜いたかと思えば、勢いのままに最奥まで貫かれ‥
いつの間にか、俺の腹部には白濁が飛び散っていた。
白く濁る液体を祐希さんが確かめるようになぞる感覚だけがやけに鮮明で‥
深く抉られ、内奥に熱い熱を感じる頃には、意識を手放していた。
痛みと激しい快感からも逃れるように‥
「‥‥ん‥‥‥」
ゆっくりと浮上しつつある意識を掴むように目を瞬かせた。異様にまぶたが重い。乾いた涙が張り付く不快感を感じながらも、ゆっくりと起き上がる。腰から感じる鈍痛に顔をしかめながら。
いつの間にか寝ていたらしい。起きたはずみでズルリと落ちた布団から足を出すと、いつの間にか身体が綺麗に整えられている事に気がつく。
少し大きめの袖口を摘み、祐希さんの服だとぼんやり思いながら腰を上げる。
「‥‥‥んっ‥‥‥‥」
下腹部に力を込め立ち上がった動作で、漏れてしまう感覚に身震いした。気持ちが悪い。ツーっと太腿まで伝い落ちるものに嫌悪しながらも、慌てて浴室へと駆け込む。
綺麗に身支度されていたが、内部までは処理出来なかったんだろう。シャワーを浴びながら、伝い落ちたものが、中に出された精液だと気付き‥訳もなく涙が溢れた。
痛む身体を何とか綺麗に洗い流すと、またベッドへと戻った。
浴室に入る前から気付いていたが、祐希さんは不在らしい。
慌てて出ていったんだろうか。テーブルの上に無造作に置かれたスマホを見てそう判断した。
俺を置いてどこに行ったんやろか‥
祐希さんもおらんのに、出ていってもいいものか‥取り留めもなくベッドに腰かけ思案していたが、不意に襲う睡魔に疲れ切った身体が勝てるはずもなく、俺はまた眠りについてしまった。
どのくらいそうしていたのか‥
何度も鳴らされるインターホンの音で目覚める。
祐希さんが帰ってきたんだと疑いもせずに、痛む身体を引きずりながらモニターを確認することなく、扉を開けた。
「祐希!!何回も電話してるのに何で出てくれないの?」
開け放たれた扉から、勢いよく発せられた高い声に思わず後ずさる。
「え?祐希じゃない?誰?あんた?」
扉から顔を出したその人は、俺を見て怪訝そうな顔へと変貌する。小柄な女性だった。胸下まで伸びる茶髪のストレートヘアーに活発そうな眉、大きな瞳が印象的だが、その視線はキツく睨みつけるかのようだった。
悪意にも感じる眼差しに慌てて声を掛けようとしたが‥
それよりも先に気がついてしまう。
この香り‥
どこかで匂った事のある香り‥
そう、それは‥
キツイ香水の香り。
昨夜、祐希さんの身体に纏わりついていたあの香水の匂いだった‥
コメント
4件
おぉっと!まさかの女性登場!いや、祐希に限って浮気なわけ、いやいや大学生やし遊びたい年頃やん?モテるやろうし?この女性の正体は一体?! 次回も楽しみにしてます!
余裕の全くないゆうきさん、 それもいい👍️ それにしても謎な大学生生活〜。藍くん不安だよね😤 藍くんのこと大事にしないと許しませんよ😗