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藍Side
突然の出来事に、思いも寄らない行動に、身体が
動かなかった‥。
甲斐が‥‥‥キスしてる!?驚きで固まる俺の
後頭部を左手で掴み、右手は腰を支えている。
ちょっ‥‥そう言いかけた俺の少し開いた口腔内
に甲斐の舌が割り込んでくる。
「‥‥‥んっ!」
相手が甲斐という事もあり、噛むことも出来ず
必死になって背中を叩く。
ドンドン‥‥‥。
それでも口づけは止まらない。まるで生き 物のよ うに口腔内を駆け巡り、俺の舌に絡みつい てく る。首を振って逃れようとするが、それすら
も簡単に押さえ込まれて逃げられない。
深い口づけは角度を変えて何度も吸い付いてきて
息も切れ切れになる。
「‥ん!‥‥はぁっ、‥‥だ‥‥め!」
それでも角度を変えるときに 甲斐を止めようとするが、 無視するかのように甲斐は止めてくれない。
更に深く、深く、全身を求めるかのような情熱
的なキスに頭がボーーーっとする。
‥やっと離れてくれた‥‥。
ハァハァ‥息を整えながら甲斐を見上げる。
唇がお互いの唾液で濡れていて‥キス したんだと
いう事実がリアルに感じられ 、思わ ず顔を背ける。
「藍さん‥」
「‥‥‥」
「お‥怒って‥ますか?」
話せる気がしなかったが、声が震えていた
のを感じ、そっと横目で見ると甲斐は静かに 泣いていた。
「ちょっ!なんでお前が泣くねん!」
「‥ふっ、ぐずっ‥すいま‥‥せん。藍‥さ‥ん、嫌い
にならないで‥‥」
「‥あーもう、俺一言だって嫌いなんて言ってな
いやろ?泣かんといてよ、」
子供みたいにポロポロ涙を流す甲斐の頭をぽんっ
と撫でた。
「正直びっくりはしたよ。でも、嫌いになんかな
らへんよ」
その言葉にコクコクっと頷く。涙が止まらない甲斐を
ベッドに腰掛けさせて暫く、落ち着くのを待つこ
とにした。
「藍さん‥」
少し落ち着いたのか、一つ一つ言葉を選び
ながら話しだした。
「僕‥ずっと前から藍さんの事が好きでした。初
めて会った時から、ずっと‥ 藍さんを見てたか
ら‥だから、すぐに分かったんです。藍さんが
祐希さんを見ている事も ‥‥」
「‥バレてたんやね、恥ずいやん」
「藍さん」
甲斐はスッとベッドに腰掛けている俺の足元に跪
いたかと思うと、俺の両手を壊れ物でも扱かのよ
うな繊細さで そっと持ち上げて見つめる 。
「藍さん、僕と付き合ってくれませんか?」
「甲斐‥‥でも、俺は‥‥‥」
「藍さんの心の中を祐希さんが占めていることは
わかってます。でも、いつかきっと僕が忘れさせ
ます!僕だけを見てもらえるように努力します」
「‥初めてこんなに好きになったのが祐希さんな
んよ。そんな人を忘れられるんかな‥」
「頑張ります!僕が1番になれるように、藍さん
を悲しませたりしない、ずっと一緒にいます!
だから、僕を選んで欲しい!僕が藍さんを幸せに
してあげたいんです。絶対に大事にします」
藍さんの気持ちが僕に向くまで待ってますから、
甲斐はそう言って、俺の両手にそっとキスをし
て、微笑んでいる。
こんな優しいキスもあるんやな‥。
まだ甲斐の気持ちに答える余裕はないけれど、
いつか‥‥
この先‥‥
祐希さんを過去として思い出す日がくれば‥‥
俺は笑って前に歩き出せるだろうか‥
明日も練習だからと、おやすみと声をかけ、布団
に潜り込む。
俺は自慢じゃないが、布団に入ればものの数分で
眠りにつける。祐希さんと別れてからはその快眠を得るのは難しい事だったが‥今夜は泣いたせいもあるのか、眠れる気がする。携帯を頭元に置き、ゆっくりと 眠りの中に沈んでいこうとした時‥
妙に布団が沈む感じがした。なに?頭を軽く動
かして暗闇に目を凝らすと‥
甲斐が俺の布団に腰掛けていた。
「?どしたん?寝られへんの?」
「‥‥‥藍さん‥今夜だけ‥‥一緒に‥寝てもいいですか?」
「は?何言うてんの?//」
「‥どうしても一緒に寝たいんです。襲いませんから!!」
「なっ//、あ‥当たり前やろ!!いやっ、ベッド
狭なるから無理だって!」
‥‥‥断る俺を見てあからさま にシュンとなるの止めてくれ‥。
「‥‥ハァ‥」
「‥‥甲斐?」
「‥‥はい‥‥」
「‥もう、わかった!今日だけやで!」
その言葉に‥途端に満面の笑顔になる。ベッドの上で 跳ねて喜ぶ様は、まるで大型犬だな。
そして、あっという間に枕を並べて、ベッドに潜り込んで くるのをチラリと見ると、顔を真っ赤にしながら こちらを覗いていた。
‥狭くなったけど、いつも甲斐には世話になっ
てるからな‥‥
隣に人がいて寝れるだろうか?と思ったが、
子供体温の甲斐の温かさとそばに誰かいるという
安心感もあってからか‥俺はすぐ眠りについた。
「すや‥すや‥」
久しぶりによく眠れたのかもしれない。その日は
珍しく祐希さんの夢すら見なかった‥‥‥。
朝の気配を何気に感じとり、自然と目を開く。
‥いま、何時やろ?と携帯を探す時に気付いた。
目の前は肩で塞がれる形になっている。
少し目線を上にあげると、いつの間にか起きて
いた甲斐と目が合う。
そして、自分の両腕が甲斐を抱きしめていると
言う事にそこで気付く。
「はっ、ちょっ、何なん?これ?」
「藍さんの方から僕に抱きついてくれま した ♡」
「そうなん?全然覚えてへんわ‥あっ!」
「‥‥?」
「俺が寝てるときに変な事してないよね? 」
「!‥‥‥はい、勿論です」
‥‥下を向いてモジモジしてるように見えるが、
さすがに寝てても何かされたら起きるだろうと
思い、さほど気にもしなかった。
甲斐は意味ありげに時々俺を見つめていたが‥‥‥。