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朝食を食べに食堂に向かう。
「おー、今日早いじゃん」
「小川さん‥早いっすね、めずらしー」
「一言多いんだよ」
自分の前を指差して促す小川さん。
‥座って気付く。小川さんの隣に
祐希さんと小野寺さんがいた。
‥席移ろうかな等と考えていたが、俺の隣に
甲斐が来て座ったため、それも出来ない。
平常心‥平常心‥。
心で呟きながら、朝食の味噌汁を啜ってると、
「なぁ、藍?」
「?何すか?」
「お前‥昨日は甲斐に襲われてたの?」
「ぶーーーーーーっ!」
「ちょっ!お前汚い‥」
ゲホゲホと咳込む。
「ゲホッ‥トントントン‥お、小川さんが変な事い
うからでしょー!!」
気管に入ったかもしれない。涙ぐむ俺を見て、
「んじゃあさ、それ、何?」
行儀悪く箸でソレを指される。
「それ?」
「首のやつ」
首‥なんかあったっけ?首元を確認してみるが
特に違和感はない。
しかし、その様子を見ていた小野寺さんが、
「あっ、キスマークだ!」
と指を指す。
キスマーク‥‥???
何のことやろ?キスマークなわけがない。と
携帯で確認してみると、確かに左の首筋部分に
赤くなってる箇所がある‥
「虫にでも刺されたんかな‥??」
「そーなんだ!てっきり甲斐に襲われたのかと思
った」
「何でそうなんの笑、なぁ?甲斐?」
同意を求めようと隣を見ると‥顔を真っ赤にした
甲斐の視線は不自然なぐらい落ち着かない。
動揺してるのが丸わかりだ。
その顔で察した‥‥‥‥後で説教やな!!
ガタンっ‥‥‥。
「あれ?祐希もう食べないの?」
「ああ‥もういい。先に戻ってる」
あまり、食べていないのか祐希さんはそれだけ
小野寺さんに話すと食堂から出ていった。
「‥なんか、いつもと違うよな、祐希さん」
小川さんがヨーグルトを食べながら呟く。
確かに‥いつもの祐希さんとは違うみたいだった。
何かあったんだろうか‥‥‥。食事をしながらも、
そればかり考えていた。
部屋に戻るとすぐに甲斐に説教をした。
話を聞くと、早朝先に目覚めた甲斐に抱きついて
寝て る俺 が嬉しかったらしく、ついついヤッてしまったと‥‥。
跡がつくとは思ってなくて‥‥‥///
照れてる場合かと長々と説教してしまった‥。
その後はいつものように練習に打ち込む。
合宿もいよいよ明日までだ。明日‥
明日になれば、それこそもう祐希さんに会うこと
は ほとんど無くなる‥。
ボールを触ってる間は忘れられたが、ひとたび
離れるとやっぱり祐希さんの事を考えてしまう。
そんな風にして、今日の練習も終わりを迎えた。
夕食も終わり、シャワーを済ませて部屋でストレッチを していると
コンコンコン‥‥。
扉を開けると、小野寺さんだった。
「どうしたんすか?」
チョイチョイっと手招きをされてついて行く。
非常階段の所で立ち止まった。
「ごめん、夜に呼び出して、大丈夫だった?」
「はい、ストレッチしてただけですから。でも、 どうしたんです?」
「実はさ、朝食の時の祐希、覚えてる?変だった
ろ ?」
「ああ‥はい」
「最近ちょっと変だなとは思ってたんだよ。で
も、アイツって相談とか特にしないからさ、聞く
に聞けなくて‥んで、合宿も明日までだからって
持ってたビール飲むか?ってさっき飲ませたの」
‥一本ぐらいなら飲むかなと思ったらしいが、祐
希 さんはそのまま一気に数本飲んだらしい。
「ペース早いなとは思ったんだけど‥祐希だから
考えて飲むだろうと思って見てたら‥意外に潰れ
ちゃって‥いま、水買いに行ってたところ」
ヒラヒラと手に持っている水を揺らしてみせる。
「意外ですねー祐希さんが?」
「俺も初めて‥でさ、俺、藍に聞きたい事があっ
たんだ」
「‥‥?」
「一ヶ月ぐらい前に◯◯体育館に夜居なかった?」
「一ヶ月前‥‥」
忘れるわけがない。祐希さんに呼ばれて振られた
あの日の夜。
俺の顔を察して、小野寺さんは話し始める。
「あの日、近くを通ったとき、祐希の車が止まっ
てたんだよ。何でいるのかな?って思って入ろう
とした時に、雨の中走っていく人がいたからさ、
遠くからだったからよくわからなかったけど、な
んとなく藍に似てる気がして」
‥確かに俺だ。
「中覗いたら、電気も付いてない薄暗いロビーで
祐希が一人座ってたから、近寄ったら‥‥アイツ 、泣いてたんだよ」
泣いてた?にわかには信じられな かった。
「俺、ビックリして、まぁ、落ち着くまでそばに
いたわけ。祐希が話せるのを待ってたんだけど、
アイツ何も言わなくってさ。俺の問題だからって。
だから、失恋でもした?って和ませようと思って聞いたら、
“ずっと守ってやるって約束した人がいたんだけどな‥ ” って」
「‥‥‥」
「誰の事を言ってるのかはわからなかったけど‥
でも この合宿に来て‥なんとなく祐希が言ってた
のは 藍の事なんじゃないかって思って、違う?」
なんで‥‥。言葉に詰まる。
「図星?まぁ、あの夜見たのが藍に似てたっ
ていうのもあるんだけど、藍が倒れた時、祐希尋
常じゃなかったんだよな。キャプテンだからと
言われればそうなんだけど、多分藍の具合が
悪いって気づいたのも祐希が1番早かったと
思う」
じゃなきゃ、あの距離でお前が床に倒れる前に
支えらんないよ、と小野寺さんは話す。
「花火の後だって、祐希途中で戻ったろ?俺も後
から向かったんだけど、忘れ物あった?って聞い
たら、”あっ、ああ‥あったよ”ってどう見ても忘れ
物取りに来た顔じゃなかったし、あれは‥藍と甲
斐が一緒にいるのを見たくなかったんじゃないか
と俺は思う」
勘だけどねと小野寺さんは目配せを1つ。気が付くと、水をほらっと俺の 前に差し出ている。
「いま、祐希部屋にいるからさ?藍がこの水持っ
ていってくれない?」
「えっ、俺がっすか?でも俺が行っても迷惑なん
じゃ‥」
困らせてしまうだけだ、そんな顔は見たくない。
「祐希って、まぁ立場上色んな人と平等にコミ ュ
ニケーションとって距離を縮めているんだと思う
んだけど‥お前と話してる時が1番嬉しそうなの
よ。お前がよく色んな人のところ行って
スキンシップ取ってる時も、よく考えたら祐希は
いつもお前の方を見てたと思う。その時はお前が
賑やかなだけで見てるのかなって思ってたけど」
不意にニコッと笑って小野寺さんはこう言った。
「長く一緒にいた俺が断言するよ!祐希は藍を大
切に思ってる。お前も同じ気持ちなら行ってくれ
ない?」
‥‥‥本当だろうか?
‥‥‥俺は振られた側なのに。
‥‥‥いま、行ってまた傷つくことになったら。
マイナスな事しか頭に浮かばない。
‥‥‥でも、俺の気持ちは‥‥
あの時伝えられなかった気持ちを伝えるのだとし
たら今しかないんじゃないかと‥‥。
そう思ったら居ても立っても居られず、水を
受け取り、踵を返す‥
「あっ、藍!俺たちの部屋知ってる?」
「あっ‥‥!!」
ったく、しょうがねーな笑。小野寺さんは笑いな
がらルームキ ーを渡 してくれた。そして、俺の耳元で提案を1つ囁く。
「甲斐には俺から後で話しとく!!」
駆け出した俺の後ろで‥手を振り笑う先輩は
本当に頼もしい先輩だ。
一度自分の部屋に戻る。どうしたのかと甲斐が尋ねてくるが荷物を持ち、そそくさと立ち去ってしまった。甲斐‥ごめん!心の中で呟く。
でも、俺は祐希さんと話がしたい。
自分の気持ちをちゃんと伝えたい。
それがまた悲しいエンドロールになったとしても‥‥‥。
後悔しないように。