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第32章(リライト版)「影の英雄と、偽りの記憶」
――静寂な宙域を抜けたその先に、不気味な星が存在した。
ゲズとセレナがたどり着いたのは、伝承に語られぬ“禁忌の星”。
その星の中心――
かつて誰かが眠っていた痕跡がある古代神殿に、違和感を覚えるふたり。
セレナ「ここ……記録にないはずの場所なのに、何かがおかしい……」
ゲズ「妙な気配がする。誰かが俺たちを誘ってるような……」
⸻
【黒の棺と“もう一人の英雄”】
神殿の奥深く、暗黒の空間に封じられた“黒曜石の棺”。
その中で、ひとりの男が目覚めようとしていた。
――白銀の髪、鋭い目元、確かに“ウカビル”に酷似していた。
セレナ(でも違う……これは、あの人じゃない。何かが歪んでる……)
次の瞬間、棺が砕け、暗黒の雷とともにその男が現れる。
???「俺は……英雄などではない。破壊の意志だ」
その眼には一片の理性もなく、まるで機械のように動くその姿に、セレナは気づく。
セレナ「……この人は本物のウカビルじゃない! ルシフェルが創った、影のウカビルよ!」
⸻
【影のウカビル、暴走】
影のウカビルは、本物のウカビルの記憶と戦闘データをコピーされ、完全なる戦闘兵器として創られた存在。
セレナが本物と接していたからこそ、その違いにすぐ気づいた。
ゲズ「くそっ……強い……! 本物と同じ戦い方……!」
剣を交えるたび、空が裂け、大地が軋む。
セレナ「攻撃は利いてる。でも、この人は戦いしか知らない……“心”がないのよ!」
ゲズは一か八か、心を揺さぶる言葉を叫ぶ。
ゲズ「お前は誰だ!? ウカビルの顔をして……何を守るんだ!?」
影のウカビルの動きが、一瞬だけ止まった。
⸻
【揺らぎと崩壊】
その隙を突き、セレナが封印魔法を再展開。
力を集中させた結界によって、影ウカビルの動きを一時停止させる。
セレナ「ゲズ、今よ!」
ゲズの一撃が、影のウカビルの胸に突き刺さる――だが、彼は消えずに呟いた。
影ウカビル「……俺は、おまえらが創った絶望の器……ウカビルの影……
本物は、おまえらの“希望”とともに、まだ眠っている……」
そのまま、彼の身体は闇の粒子と化し、星の中心部へと消えていった。
⸻
【すれ違う“英雄の意志”】
帰還後、セレナは静かに語った。
セレナ「私たちが見たのは“ウカビルの記憶の亡霊”。
でも、本物は今もあの水晶の棺で、静かに……光を取り戻そうとしてる」
ゲズ「だったら、俺たちは……本物の英雄に恥じない戦いをしよう」
ふたりは決意を新たにする。
影は過去の写しでしかない。
だが、彼らは未来を創る側なのだ。