テラーノベル
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星野さんに車に乗せてもらって、ホームセンターに向かってる。バジルとかオレガノとかタイムとかローズマリーとか、料理に使えるハーブの種と苗が買いたかったから、星野さんがホームセンターに用事があるついでに車に乗せてもらってるんだ。
助手席で、ワシは改めて買うものを確認した。
『プランターとー、土とー、肥料とー……』
最初は庭に植えようと思ってたんだけど、畑が趣味の星野さんの旦那さんに「シソ科の地植えは増えて手に負えなくなるからやめなさい」って教えてもらったから、プランターに土詰めて植えるんだ。
星野さんが運転しながら「育ったら分けてね、使い方も教えてね」と言った。
『そりゃもちろん。肉とか魚とかトマトとかに合うやつ選んで買うから!』
「ありがたいわー、うちの旦那、育てるばっかりで食べることを全然考えないんだもの」
『夏にトマトくれたらさ、オレガノとバジルでおいしいトマトソースにして返すな』
「最高だわ……」
車は緩いカーブを行く。星野さんが聞いてきた。
「和泉さん、まだ千歳ちゃんにしつこく好き好きって言ってるの?」
『別に、そんなにしつこくはないけど……』
どうしようかな、星野さんには話しておこうかな。秘密にしとくのも大変そうだしな。
『ここだけの話だけどさ』
「うん」
『ワシさ、しばらくあいつの恋人をやることにした』
「ええ!?」
星野さんは驚いてこっちを見た。ちょ、脇見運転!
『し、しばらくだから! ずっとじゃないから! ワシ、あいつがいい女と結婚して子供作るのあきらめてないから! 恋人やるのはここだけの秘密な!』
「えー、どういう心境の変化なの?」
『んー、なんていうか……最初は、和泉が女を捕まえるための練習させてやろうと思ったんだけど、あいつは5年間がんが再発しないか心配な体だから、5年間で何かあったらワシ、もっと何かしてやれたんじゃないかってものすごく後悔すると思って、だから5年くらい恋人やってやろうかって思って』
「そうだったの……」
『でも和泉ずるいんだ!』
ワシはぶーたれた。
「どうずるいの?」
『あいつ、5年間だけじゃ嫌だ、自分に好きな人ができるまで恋人でいてくれって言うから、しょうがないなって言ったら、自分はワシより好きになれる人いないから一生だよとか言うんだ!』
「あらまあ……」
星野さんは目を丸くし、そして言った。
「愛されてるのねえ、千歳ちゃん」
『うれしくない!』
和泉、ワシに惚れ抜いてるんだよな。あいつの惚れに付き合うの、まあ悪くはないんだけど、ワシはあいつにいい女を捕まえて子供を作ってほしいよ。
あいつは、きっといい父ちゃんになるから。
コメント
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うわあ、この番外編、めちゃくちゃ良かったです……! 千歳さんが和泉さんの恋人を「しばらくやる」って決めた理由、すごくじんわり来ました。5年後も何かあったら後悔するって思うところ、千歳さんの優しさと誠実さが滲んでて。でもその後「一生だよ」って和泉さんに言われて「うれしくない!」って叫ぶ千歳さん、その照れ隠しが可愛すぎて笑っちゃいました。星野さんの「愛されてるのねえ」が全てを物語ってますね……。ハーブの話からの流れも自然で、ほっこりするエピソードでした🌿
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