この作品はいかがでしたか?
408
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1話
この世界には男女の性別の他に、
第二の性と呼ばれるものがあった。
α(アルファ)、β(ベータ)、Ω(オメガ)
これらがその第二の性。
αは二本線以上の者がなりやすい。
βは一本線以上。
Ωは一本線以下の者がなりやすいと
されている。
そして、物語の主人公、
マッシュ・バーンデットはΩだった。
だが彼はヒートが来ない。
その理由は少し昔に遡る。
ある日マッシュはレグロに連れられて、
街へ出かけていた。
もちろん作り物のあざを付けて。
この時のマッシュは10歳だった。
レグロが少し待っててくれと言い、
店の中に入っていった時だった。
柄の悪い大人がマッシュの手を引き、
暗い路地裏へと連れ込んだ。
「お前……オメガだろ?
すっげぇいい匂いするわァ」
ハァハァと息を上がらせて言う男は
αであった。
マッシュは恐怖で逃げることもできず、
ただ震えていることしか出来なかった。
そしてそこからは察しの通り、
マッシュは無惨に抱かれた。
レグロが駆けつけた時にはもう遅かった。
「すまん、すまんのう……マッシュ……」
そう泣きながら謝るレグロにマッシュは
何も言うことができなかった。
不幸中の幸いか、項には歯型はなかった。
だが、この出来事がきっかけでマッシュは
αのことを拒絶し始め、
防衛反応なのかヒートが来なくなった。
ヒートを復活させるには
医者曰く、
αとの交流を深めることらしい。
首につける、項を守るためのチョーカー。
マッシュはこれを毎日付ける。
ヒートは来ないと言っても、心配でたまらなかったからだ。
黒のチョーカーなので、マッシュがいつも着ているトレーニーに同化して、他の人からは
付けているように見えない。
だから皆からはマッシは
βだと思われていた。
「……今日の授業はここまでです」
先生がそう言うと、生徒たちは席を立ち、
次々と去っていく。
今日は午前中の授業だけだった。
「僕達も行こうか」
マッシュのルームメイト
フィン・エイムズが言った。
フィンはβでマッシュにとって、とても安心できる存在だ。
それにマッシュがΩだと言うことも 知っている。
これはマッシュが自ら打ち明けたのだ。
同室になるフィンに迷惑をかけたくない、
そうゆう思いがあったからだ。
マッシュが打ち明けると、フィンは驚いたが
決して軽蔑はしなかった。
むしろ、優しい言葉をかけてくれた。
だけど、あの時のことは言えていなかった。
自分が穢れていると知られたくなかったから。
廊下に出ると、生徒たちは
午後は何する?
遊びに行こうぜ!
などと会話をしていた。
「マッシュくんは午後何する予定?」
「うーん、とりあえずシュークリーム
作りますかな。フィン君は?」
「僕は本でも読もうかな。この前買った本、まだ読んでなくて」
そんな会話をしていると、
後ろから声が聞こえた。
「おい、お前達。課題はどうした」
声の主はランス・クラウン。
水色の髪に、水色の瞳。
整った顔立ちだが、シスコンで有名な人だ。
ランスはαだったため、
マッシュはあまり関わりたくはなかった。
「あぁ〜そうだった!あったんだ……」
フィンがあからさまに落ち込む。
マッシュは動けずにいた。
「どうした、マッシュ……」
そう言って、ランスはマッシュに手を伸ばす。
マッシュはあの時のことがフラッシュバック
して咄嗟に、
「やだッ!!」
そうランスの手を振り払い、
拒絶した。
「……マッシュくん?」
フィンとランスはマッシュのその行動に驚き、
目を見開いていた。
「ッ…!ご、ごめん……」
マッシュはここにいるのが気まずくなっり、
この場を逃げ出してしまった。
人気のない場所まで来た時、マッシュは
後悔していた。
(ランスくんは悪くないのに……どうして僕は……っ)
そう1人で泣いていた。
「……どうしたんだろうマッシュくん……」
マッシュがいなくなった廊下でランスとフィンは立ち尽くしていた。
(あれは明らかな拒絶……だが何故?)
ランスはマッシュに振り払われた自分の手を
見ながら思った。
コメント
2件
やばいめっちゃ好き…… 応援してます!