「ちょっと話そう」と森さんは言った。健太は今からそっちにお邪魔すると言って電話を切った。
彼は森さんの部屋へ向かいながら、新ドリーム三号は赤いコルベットにしようと決めた。もちろん今すぐ買えなくても、夢見るだけでも楽しくなる。森さんはどんな楽しい思いつきを話すのだろう。
健太は、今日もおつかれさんと言って森さんの部屋に入った。
「そこへ座れよ」
リビングには前回来たときにあった古ぼけた椅子はなく、代わって青いビニール製の新品が、小さな四角いテーブルを挟んでペアで備え付けられていた。健太は片方に座った。
森さんは部屋に流れていた英語ニュースを消すと、正面に座って煙草を吹かした。
「あのさ、利益を均等分けするの、やめにしない?」
えっ?
「ちょっと不公平だと思うんだよな。俺やツヨシさんは汗水垂らして働いてんのに、ケンタ君は仕事持ってくるだけで何もしないだろ」
な、何もしてない?
「森さん、よく考えてみてくれよ。俺が仕事持ってこなかったら、事業は成り立っていかないよ」
それでも汗水垂らしてるのは自分達だと言って、森さんは引かない。健太も、森さんの意見に同意できない。話は平行線となった。森さんは、吸殻の山を台所の隅のゴミ箱に捨てて戻ってきた。
「例えば、こういうことだよ。ドリーム一号だけのときは、収益の九割を俺がもってって、一割をケンタ君。ドリーム二号が出動するときは、四割五分ずつ自分とツヨシさん、一割をケンタ君。ドリーム三号まで出すときは、これまで通りの山分けにしよう」
健太は、そもそもその案自体承服しかねるが、さらに言えば、ドリーム一号のみのときはツヨシがガイドで入るのに、彼の分け前がゼロなのはどうしてかと聞いた。
「ガイドいらないっしょ。一号だけのときは俺が運転しながらやれば済むし」
平行線だった話はハの字となった。
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