「莉犬/くん⁉」
君がそこにいることに、僕とお兄ちゃんは驚いた。
「なんでそこに⁉」
聞かれたことにはすぐ答える。
「わすれもの。」
その時僕は、この現場を小さい弟に目撃させてしまったことを、後悔した。
「ホントにころにいがやったの?」
疑わしく覗き込む君の目に、僕は驚いた。
丸くて大きい君の目が、いつもより、怖かった。
「この状況で、「そうじゃない」と言えるか?」
里海くんがそう言った。
だけど君は、
「ころにいじゃあないよ?おねえさんがやったの。」
「証拠でもあんのか?見てたのか?」
「きいてた。」
その時僕は思ったんだ。
後ろには誰もいなかったはずだし、
屋上の扉は透明だから、誰かいたらすぐわかるし、
しかも中からは外の音がものすごく聞きづらい。
なぜだろうって。
でも、こういうことだったんだね。
莉犬くん。
「そんなこと、あった?」
君の目は、いつもみたいに丸くて大きい目。
「あったよ。莉犬くんまでイジメられないように、僕が記憶を消したの。」
「へぇ。消さなくても良かったのに。」
「心配かけたくなかったからさ。月海斗くんのも消したよ。」
「じゃあ、なんでるーちゃんは?」
「家では僕、ダメな子を演じてるからさ。」
「そっかぁ…。」
プルルルルプルルルル
「あ、僕だ。ちょっと待っててね。」
「もしもし。」
『もしもし。じゃなくて!美菜!今日は__がある日でしょ⁉』
「え?そんなワケ…。」
『今日は23日!忘れないでよね!』
「ごめんって!恵愛はもう行ったの?」
『こっちでは恵愛じゃなくて絢!忘れないで!アタシはもう着いてるよ!』
「ハヤっ!」
『いや、アンタが遅いだけだって。それより早く来てよね。』
「は〜い。」
「ごめん!今日、用事があるんだっt」
「__?ころにいって、____もやってるの?」
「!」
しまった。この子は相手の考えが読めるんだった。
「と、とりあえず内緒ね!行ってきます!」
「うん。」
ヤバいヤバい。
今日が1番遅れちゃダメな日だ。
電車あと何分?間に合うか…。
「それでさ〜。」
「え?ホントですか?」
ん?あ、お兄ちゃんたちいるわ。
大丈夫だ。今は男装といてるし。
[苺野駅〜苺野駅〜ご乗車、ありがとうございます。]
よし。今日も誰にも気づかれずに電車から降りられた…。
って、ヤバい!絶対えm((じゃなくて絢に怒られるって!