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#NL
瀬名 紫陽花
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深夜のBLACK CATを後にし、ナオミに促されるままに乗り込んだタクシーの後部座席。
『XYZ』の強いアルコールがじわじわと全身に回り、穂乃果の身体は心地よい気怠さと熱に包まれていた。
窓の外を、都会のネオンが目まぐるしく流れていく。
隣に座るナオミからは、バーの喧騒を離れた今も、あの魅惑的な香水の香りと、男のものとしか思えない強い体温が伝わってきた。
ナオミの大きな手が穂乃果の腰をぐいっと抱き寄せ、もう片方の手がその頬を優しく包み込む。
視線を上げると、すぐ目の前に、グロスでぷっくりとした綺麗な唇が見えた。それと同時に穂乃果の唇をナオミの長い指先でそっとなぞられ、ぞくっと腰が震えてしまう。
(どうしよう……)
ナオミの唇を見ていると、なんだか心臓の音がうるさくて、無性にキスがしたい気分になってくる。昨夜のあの激しい快感が、手慣れた口づけの記憶が、頭の奥を支配して離れない。
そんな穂乃果の、熱を帯びて潤んだ感情が視線を通して伝わったのだろう。
ナオミは美しく整った眉をわずかに上げると、ふっと愉しげに、けれど酷く雄々しい笑みをその唇に浮かべた。
「全く……そんな顔して……。誰かに襲われたりしないか心配だわ」
苦笑気味な呟きが耳元に届く。
(……自分を襲いたいと思うのは、ナオミさんくらいじゃないか)
ぼんやりと、けれど確かにそんなことを意識してしまった。
それというのも、BLACK CATを出る前に、こっそりトイレの中でスマホを確認してしまったからだ。気になって検索した「XYZ」のカクテル言葉。
【これ以上ない】【終わり】【もう後がない】、などの言葉が画面に並び、そして――【あなたを今夜、手に入れたい】という文字が目に飛び込んできた時の衝撃。
「たまたまよ! たまたま! 深い意味なんてないんだから!」
なんてナオミは言っていたけれど、カクテルの中身に気付いた湊がニヤニヤしながらこっちを見ていたのも頷ける。
(手に入れたい、なんて……っ)
ナオミがどんなつもりで、自分にあの琥珀色のグラスを差し出したのか。
そんなことを、カクテルを通じて伝えられて、意識しない方がどうかしている。
隣に座るナオミの大きな手が、穂乃果の肩をぐいっと引き寄せた。
香水の甘い香りが爆発するように近づき、二人の身体がますます密着する。
(こんなことをして、運転手さんに気付かれてしまわないだろうか……?)
ほんの一瞬、強い不安と羞恥心に駆られたが、すぐに穂乃果はある事実に思い至った。
バックミラーに映る自分たちの姿。何処からどう見ても、仕立ての良いドレスを着た美女と、仕事帰りの若い女性――ただの「女性二人が乗っている」ようにしか見えないのだ。