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#NL
瀬名 紫陽花
6,789
(そっか……女同士の、お喋りとか、甘え合いにしか見えないよね……?)
その視覚的な免罪符が、アルコールでとろけかけた穂乃果の理性を、さらに甘く狂わせる。
「誰にも怪しまれない」という奇妙な安心感が、ナオミの胸に飛び込むための最後の言い訳になってしまった。
けれど、肩を抱く手の骨格の逞しさも、服越しに伝わってくる硬い胸板の厚みも、すべてがまぎれもない『男』のものだった。周りには女同士に見えていても、自分だけが、この大きな身体にいいように蹂躙されている。その秘密の背徳感が、じわじわと下腹部を熱く疼かせた。
そんな穂乃果の、微かな吐息の変化をナオミが見逃すはずもなかった。
「……抵抗しないんだ。アタシが男だって、ちゃんと分かってるくせに」
耳元を震わせる、低く掠れたナオミの地声。
ハッと息を呑んだ、その瞬間だった。
「んっ……!?」
ちゅ、と一度触れるだけの軽いキス。
あまりに切ないその感触に穂乃果が小さく熱い息を漏らした隙に、すぐにもう一度重なった唇から、今度は容赦なく熱い舌が滑り込んでくる。
前部座席には、黙々とハンドルを握る運転手の背中がある。少しでもバックミラーを見られたら、自分たちが何をしているか一発でバレてしまうかもしれない。
外からは「仲の良い女同士」に見えていても、自分を組み敷いているこの腕の力強さは本物の『男』のものだ。そんな何とも言えない背徳感を見透かしたように、ナオミはクスクスと喉を鳴らした。
さらに深く、強く、逃がさないように唇を吸い上げてくる。
運転席からはちょうど死角になるように、自分の広い背中で穂乃果の身体をすっぽりと隠しながら。
「ふう, ん……っ、ん、ぅ……」
巧みな舌の動きで口内を隅々まで愛撫され、ラムの香りとナオミの甘い味が、互いの唾液とともに混ざり合っていく。
見つかるかもしれないというスリリングな背徳感が、さっき飲んだ『XYZ』の酔いを何倍にも跳ね上げ、穂乃果の脳内はあっという間に真っ白に染まった。
(どうしよう。やっぱり、気持ちがいい……)
直樹に裏切られた傷も、里奈への怒りも、すべてがこの濃厚な口づけの快感のなかに溶けて消えていく。
反抗するはずだった両手は、いつの間にかナオミの首の後ろにしっかりと回され、もっと深く愛してほしいとねだるように、そのドレスの背中にしがみついてしまっていた。
「……ん、はぁ……っ」
ようやく唇が離されたとき、穂乃果の瞳は完全に潤み、呼吸は激しく乱れていた。
薄暗い車内、繋がっていた口元から細い銀の糸が微かに引き、衣服の下の身体は芯からとろとろに溶かされて、ナオミの胸に寄りかかるのが精一杯だった。
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