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5 - 露天カフェの陰で sxxn:ntks

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2026年02月12日

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露天カフェの陰で


「暇!雨乃!接客入ってくれ!」

担任の怒号が響く文化祭当日。うちのクラスは男女逆転喫茶として賑わっていた。


「了解っす」

俺は仕方なく女装姿(もちろんスカートなし)でホールに立つ。一方、こさめは完璧なメイド姿で次々と客をもてなしていた。


「いらっしゃいませ♪ご主人様!」

女子生徒たちからは黄色い歓声が上がる。

「雨乃くんかわいすぎ!」

「写真撮っていいですか?」


「どうぞどうぞ〜!」

こさめはにこやかにポーズを決める。その無防備な笑顔に、俺の胸がざわりと波立った。


「おいこさめ、テーブル7番に紅茶2つ!」

いるまが厨房から呼びかける。

「は〜い!」

こさめは俺の隣をすり抜けながら小さな紙片を渡してきた。

《忙しいね、後で合流しよ》


控室の影で、俺はその紙を開く。こさめの丸っこい字に苦笑する。

「あのバカ……バレたらどうすんだ」


「なっちゃん、ボーっとしてないでオーダー入ったよ」

クラス委員長のLANが背中を押す。

「わかってるって」

紙片をポケットに押し込み、俺は再びホールへ。


***


ピークを越えた午後3時過ぎ。休憩に入った俺は校舎裏の非常階段でこさめを待つことにした。

「なつく〜ん!こさも交代できたよ!」

パタパタと駆け寄ってくるこさめの髪は少し乱れている。俺は無意識に指で整えてやった。

「すげぇ人気者だったな」

「うん、みんな褒めてくれて嬉しいよ。でも……」

こさめが俺の制服の裾をつまむ。

「なつくんが遠いところで働いてるから、寂しかった」

「バーカ」

俺はこさめの額を軽く弾いたが、心の中では安堵していた。あいつが俺を求めてくれている。その事実だけで充分だった。


「ね、こさのお勧めスポットがあるんだ。屋上行かない?」

こさめに誘われるまま、旧校舎の錆びた階段を登る。

「こんなとこあるのか」

「うん!秘密基地みたいな雰囲気でしょ?文化祭中は誰も来ない穴場なんだ」


確かに古びたフェンス越しには色とりどりの看板が並ぶ中庭が一望できた。賑やかな喧騒が遠くに聞こえるだけだ。


「最高の特等席だな」

俺が感心していると、こさめは持っていたかばんから何かを取り出した。

「じゃじゃーん!秘密兵器〜」

それは手作り感溢れるフルーツティーのボトルだ。

「こさ特製ブレンド!ナツくんのために作ったんだ」


「また余計な手間かけやがって」

口では悪態をつきつつも、差し出されたグラスに口をつける。爽やかな柑橘系の香りと微かな蜂蜜の甘さが喉を潤した。

「…悪くねぇ」


「でしょ〜!なつくんの好みはバッチリ把握済みですから!」

得意げなこさめが俺の肩に頭を預けてきた。

「でも本当にここ誰も来ないのか?」


「絶対平気だよ。それに……」

こさめが突然真剣な眼差しで俺を見上げる。

「もし誰か来ても、こさだけ見えてればいいじゃん?」


心臓が跳ねた。こんなストレートな告白、予想していなかった。

「お前な……」

言葉に詰まる俺を見て、こさめはいたずらっぽく笑う。

「ほら、なつくんの照れ顔ゲット♪」


「調子に乗るなよ」

俺はこさめの鼻先を軽くつまんだ。柔らかな感触。こんな小さな仕草さえ愛おしく感じる自分に呆れる。

「なぁ、その……」

言いかけた瞬間、遠くから声が聞こえた。


「あれ?誰かいるんじゃない?」

「こさめくんの声聞こえたような……」


校内放送のBGMに紛れて、確かに複数人の話し声が近づいてくる。俺たちは慌てて離れるべきなのに、どちらも動けなかった。

「なつくん……」

こさめの瞳が潤む。不安と期待が入り混じった表情だ。


「静かにしてろ」

俺は周囲を見渡し、咄嗟の判断でこさめの肩を引き寄せた。背後の壁に体を密着させる形で覆いかぶさる。


「キャッ……」

「バカ、声出すな」


至近距離で交わす吐息。心拍数が異常に速くなる。背中越しにこさめの小さな身体の震えが伝わってくる。

やがて足音はそのまま階下へ向かい、気配は消えた。


「行ったな」

俺が体を離すと、こさめは放心したように壁にもたれたままだった。

「こさ……大丈夫か?」

顔を覗き込むと、その頬は林檎のように真っ赤になっている。

「……ん。心臓バクバクしてる」

弱々しく呟くこさめがたまらなく可愛くて、俺は思わず手を伸ばしていた。


「もうちょっと……このまま」

壁に背を預けたこさめの隣に、俺も体重を預ける。こさめは躊躇いながらも俺の腕の中に収まった。

「バレちゃったら、どうしようね……」

ぽつりとこぼれる不安の言葉。

「大丈夫だ。何があっても俺が守る」


「なつくん……」

こさめの指が俺の手を探り、そっと絡みついてくる。まるで誓いの印みたいに。


遠くから聞こえる文化祭の喧噪が、今は非日常のBGMにしか聞こえない。この狭い空間だけが世界の全てのようで、俺たちはゆっくりと唇を重ね合わせた。

誰にも見られていないはずなのに、なぜか背徳感が痺れるように全身を駆け巡る。罪深い甘さだ。


長いキスの後、名残惜しそうに離れたこさめが呟いた。

「文化祭が終わるまで、あと何時間あるかなぁ……」


「終わっても、2人っきりでいるから」

俺の言葉に、こさめは弾けるような笑顔を見せた。

「うん!約束だよ、なつくん!」


小指を絡ませて再び触れ合う二人の影が、古い床に長く伸びていた。

この文化祭が終わった後、俺たちの関係はどう変わっていくのだろう?

そんな考えが一瞬頭をよぎったが、今は目の前の恋人をただ強く抱きしめることしかできなかった。



𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝番外編、そして迎える夜



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