テラーノベル
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出発直前――
作戦室の片隅。
畑中は誰にも気付かれないよう、静かにジュリーへ歩み寄った。
ポケットから取り出したのは、一つの黒いカプセル。
親指ほどの大きさだが、無骨な金属の光沢を放ち、ひんやりとした冷たさを帯びていた。
「……これを預かってくれ」
畑中はカプセルを差し出す。
「もし俺に何かあったら……
迷わず使え」
「……えっ、これ……!」
ジュリーは戸惑いながら受け取る。
指先がわずかに震えた。
中身は分からない。
だが、本能が告げている。
――これは、ただの道具ではない。
「まさか……これって……!」
畑中は静かに首を振る。
「今は聞くな」
「お前なら……
正しく使えると信じてる」
それだけ言い残し、畑中は背を向けた。
「行くぞ」
「ハッ!」
精鋭隊員たちが一斉に敬礼する。
畑中を先頭に、ORVAS精鋭部隊五名。
そして原田。
計七名は静かに基地のゲートを抜けた。
向かう先は――
ジュリーが突き止めた、鷹野修司のアジト。
敵の心臓部だった。
冷たい通路を、足音だけが静かに響く。
通信はすべてジュリーが管理していた。
『その先を右へ。
距離三十メートル……
生命反応あり。
警戒して』
畑中は小さく頷き、前へ進む。
角を曲がった、その瞬間――
ずらりと並ぶ黒ずくめの武装兵。
無数の銃口が、一斉に畑中たちへ向けられた。
張り詰める空気。
引き金一つで戦闘が始まる――
しかし。
『彼らは通せ』
通信機から聞こえた声に、その場の空気が変わる。
『……待っていたぞ、畑中君』
鷹野修司。
その一言だけで、武装兵たちは一斉に銃を下ろした。
無言のまま左右へ道を開ける。
畑中たちは互いに視線を交わし、警戒を解くことなく歩き出した。
やがて巨大な自動扉が低い音を立てて開く。
その奥に立っていたのは――
鷹野修司。
黒縁眼鏡。
背中には不気味な電子装置。
派手な衣装はまるで道化師。
だが、その瞳だけは鋭い刃のように冷たく、底知れぬ狂気を宿していた。
鷹野はゆっくりと笑みを浮かべる。
「やぁ、畑中君」
「来ないと思ってたよ……
いや、来ると思ってた」
「君は……
そういう男だからねぇ」
その時――
原田が静かに一歩前へ出た。
「……修司」
「話がある」
鷹野は目を丸くすると、大げさに両手を広げて笑う。
「おやおや……
先生じゃないか」
「裏切ってここまで来るなんて……
それとも、わざわざ死にに来たのかな?」
静まり返る研究施設。
畑中。
鷹野。
原田。
交わるはずのなかった三人の運命が、ついに一つの場所で交差した。
そして、この師弟の再会が――
世界の均衡を大きく揺るがす引き金になることを、
まだ誰も知らなかった。
コメント
1件
おお、第78話!畑中がジュリーに預けた黒いカプセル、あれ何なんだろうな……「迷わず使え」って台詞が重くて、もうフラグにしか見えねぇ(笑)。でも、その覚悟がかっこいいんだよな。 んで、いよいよ鷹野修司とご対面。「先生じゃないか」って軽く言うとこ、狂気に満ちててゾッとしたわ。原田がどんな切り口で話をつけるのか、次回がめちゃくちゃ気になる!続き楽しみにしてる🔥
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成瀬りん
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