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それから、数日
俺たちの関係は、客観的に見ても、主観的に見ても、明らかにおかしかった。
竜牙さんからの連絡は、途絶えることはない。
『ちゃんと朝飯食えよ』
『今日は夜から冷えるから、厚めの上着着て行けよ』
『仕事、無理しすぎるなよ』
画面の向こうの竜牙さんは、いつだっていつも通りに優しかった。
俺の体調を気遣い、生活を慮り、甘やかしてくれる。
でも。
会おうとは、言われない。
そして俺も、自分から会いに行くことができなかった。
あの夜
バーであんな酷い言葉を投げつけてしまったあと
一体どんな顔をして、どんなテンションで彼に会えばいいのか、正解が全く分からなかったからだ。
彼が経営するバーにも、足が向かない。
返信しようとしてスマホを握りしめたまま
結局何を打てばいいのか分からず、既読だけつけて放置してしまう日もあった。
そんな不義理を働く自分に、また激しい自己嫌悪を抱く。
最悪なループ。
出口の見えない泥沼に、足を取られているみたいだった。
「……はぁ」
真っ暗な自室のベッドに寝転がりながら、ぼんやりと天井を見つめる。
竜牙さんは、今、何をしてるんだろう。
仕事中かな。
ちゃんと合間に何か食べてるかな。
一人で無理してないかな。
……そして、俺のことを、本当は嫌いになったりしてないかな。
そこまで考えて、胸がぎゅっと、引きちぎられるように痛んだ。
嫌だ。そんなの、絶対に嫌だ。
俺は竜牙さんのことが大好きで、今も、これっぽっちも別れたいなんて思ってない。
でも、同時に頭の片隅で冷めた声が響く。
このまま付き合っていても、俺たちは幸せになれるんだろうか、って。
俺ばっかりが「もっと見せて」と子供みたいに求めて
竜牙さんばっかりが「完璧な彼氏」であろうと無理をして、秘密を抱えて我慢して。
何かが決定的に噛み合っていない。
その事実が、俺をじわじわと追い詰めていた。
スマホを手に取る。
トーク画面の一番上に表示されているのは、もちろん竜牙さんだ。
最後のメッセージは昨日の夜。
『おやすみ』
短い、たった四文字。
それだけなのに、その行間から滲み出るような不器用な優しさが今の俺には苦しくて仕方がなかった。
(…俺、何やってんだろ。本当、ガキすぎる……)
好きな人を傷つけて、謝りたいのにプライドや気まずさが邪魔をして。
そんなふうに自分を責めていた時、不意に手の中でスマホが短く震えた。
『今日、少し話せるか』
竜牙さんからだった。
心臓が、ドクンと大きく跳ねる。
数秒間、息をすることさえ忘れて画面を凝視したあと、俺は震える指で返信を打った。
『うん』
すぐに既読がつく。
『今日、俺の家に来れるか』
その文字を見た瞬間、喉の奥がキュッと詰まった。
怖い。
もし、これが「最後の話し合い」だったら。
いや、でも俺だって考えていたはずだ。
俺たち、合わないんじゃないかって。
……なのに、いざ現実として「終わり」の気配が近づいてきたと思うと
立っていられないほど怖くてたまらなくなった。
俺はしばらく画面を見つめたあと、逃げ場をなくすように一言だけ返した。
『行く』
◆◇◆◇
竜牙さんの家の前
インターホンを押そうとする指が、まるで鉄の塊でもついているみたいに重かった。
意を決してチャイムを鳴らすと、数秒後、重々しく扉が開いた。
「……慧斗」
「…っ」
数日ぶりに至近距離で見る竜牙さんは、どこか少しやつれて見えた。
いつもはぴしっとしている髪も少し乱れていて、目の下には微かに隈がある。
「入れよ」
「うん……」
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#ざまぁ