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今日も今日とて仕事詰め。
ラボを抜け出してからの日々は手探りで大変だったが、殺連という組織を知り、その中でも発足されたばかりのorderを立ち上げた人物の1人に拾われたのはある意味良かったのかもしれない…。
殺し屋としての手解きを受け、
武器の扱いだけでなく、体術、体の動かし方を教えてくた。
加えて学校に通ったことのなかった俺に学ぶ場もくれた。
ラボにいた頃はおっさんたちがなにをしているのか理解もできなかったが、おかげで少しはわかるようになった気がする。
俺はオヤジの手がかりを掴みたかったこともあり、
貪欲に知識や技術を学んできた。
年齢は周りからするとだいぶ幼いのだろうがorderにはまだまだ敵わないもののそれなりの実力はあるつもりだ。
おかげさまで今は1人でも任務遂行を行えている。
それはそれとして、俺の武器の一つ"エスパー"
俺を拾ってくれた恩人のキンダカにも伝えてある。
この力もだいぶ使いこなせるようになってきている。
大抵の人物の思考なら読み取れるし、位置の把握ができる距離も伸びてきた。ON/OFFも自在に操れるようにもなったが、基本はON状態にしている。何かあった時すぐ対応できないと困るしな。
「お、シン戻ったか。怪我はなさそうだな〜」
「キンダカさん!怪我はない、です。服はまあ、ちょっと汚れちゃいましたけど…」
せっかく買ってもらったスーツだけど毎回仕事ですぐダメになるのだけはいただけない。そんなことを考えていると
「殺し屋も板についてきたな。シン、エスパーの方はどうだ?副作用とかは出ていないな?」
「はい。もう大体使いこなせてる気はするけど、なんで言ったらいい?相手の思考の書き換えにまだタイムラグがある気がするんです。副作用はだいぶマシになってきたと思うんすけど…。」
「ふ〜ん。まあ、副作用がマシになってきたならだいぶ使いこなせてるってことだろう。知識も頭に入っているようだし、あとは実践あるのみってとこか?これからorderの任務なんだが、シン、着いてこい。」
「え?いいですか!?是非同行させてください!!」
キンダカさんからorderの任務に誘われるなんて!
今までもそれなりのレベルの奴らを相手にはしてきたが、orderの任務は初めてで緊張もするけど、もっとレベル上げはしたい!
「お前もだいぶ動けるようになってきたしな。それに、今回の任務にはお前のエスパーの力が必要になりそうでな〜」
「俺の力が役に立つなら是非!どんな任務なんですか??」
「薬の闇取引らしい。実際に売買を受け持っている組織は目星ついているんだが、どうにも大元がわからないらしくてな。シンにはこれから向かう組織のボスから大元の主犯を聞き出してもらいたい。加えて、お前のエスパーを使った戦闘力を少しみたいっていうのもあるな。まあ、簡単にいうと実力試しだな!」
「orderの任務の場を俺の実力試しに使うんですか!?」
「ちょうどいいだろ?そろそろお前の実力を再確認しないとと思っていたところだしな〜」
「う、分かりました!頑張りますね!」
「んじゃ、早速向かうとするか。車呼んであるから行くぞ」
「はい!」
着いた先はいかにもって感じの廃倉庫。
人数はざっと20人前後ってところか…。
キンダカさんはわりと真正面から入っていくタイプだから今回もそうするつもりかな?
さてさて、さっき見せてもらった写真を元に組織のバスとやらから主犯を聞き出すのが俺の1番の任務。こればかりは忘れてはならない。
そして、キンダカの速さについていくのも課題の一つ。
「シン、いつも通り行くが、今回は俺はサポートに回る。分かってるな?」
「はい、大丈夫です。行けます!」
「ならよし!んじゃ、さくっと終わらせよう」
「ここか〜?薬の売買やってるって組織はのアジトは。」
「誰だお前!?いつからいた??」
「誰だっていいだろう?てか、お前らも殺し屋生業としてんなら普通気づくだろう?あー、三流じゃ無理か!」
「ふざけてんじゃねぇよ!!おい!ネズミが入り込んだぞ!やっちまえ!」
「「おおぉぉ!!」」
「はあ、やだやだ。活気盛んな連中だね〜。」
「キンダカさん。俺から行きますね。」
「おう、頼んだぞ〜」
「はい!」
所詮キンダカさんが言ってたように三流レベルのやつらだ。素手やら銃ならまだしも鉄パイプって…。
速さとキンダカの知り合いから教わった体術を駆使して次々と殺していく。殺しながらも思考を探るのは辞めない。ボスはどこにいる??
““ピーン””
いた!あいつ下の奴らおいて逃げる気だ!
「キンダカさん!」
「いたか!ここはいい、行け!」
声を張り上げて伝えるだけで意図は伝わったようだ。
逃げようとしてるやつを見て"とまれ"と念じる。
相手が驚愕した表情で固まった隙に身動きが取れないように押さえつけることに成功!
「お前、ここの組織のボスだよな?下の連中おいて逃げるとかサイテーだな。」
「アイツらは俺の部下なんだから囮になるのは当たり前だろ!いいから離せ!!!!!!」
「無駄だ。話して欲しければ今から俺が聞く質問に素直に答えろ、良いな?答えないならそうだな〜とりあえず逃げられないように足から逝っとく?」
と言いながら銃を足に当てると焦り出したようだ。
「し、質問に答えるから!何が知りたいんだ!?」
「お前の組織の上に大元がいるよな?主犯は誰だ?今、どこにいる?答えろ!」
「主犯?なんのこっ…答える答えるから!確か、白兎って呼ばれてた!本名かは分からない!普段通りなら多分ここの近くの駅裏の繁華街にいるはずだ!そこを拠点としてる!!」
「ふ〜ん。嘘は言ってないみたいだな?んじゃ、もう一つ教えてくれたら命は助けてやってもいい。」
「な、なんだ?」
「その白兎ってやつの容姿は?例えば髪型、身長、体型、身体的な特徴…なんでもいい。言葉で言いづらいなら思い浮かべるだけでもいいが、嘘はつくなよ?俺にはすぐ分かる。」
「顔ははっきりとみたことないが、目の色が琥珀色で、短髪に背は俺と同じくらい。なあ、知ってることは言っただろ!」
「お前、一つ嘘ついたよな?顔はっきりみてんじゃんかん。目の下に大きな傷」
と言った瞬間相手は狼狽え始めたけど、それが答えだ。
「嘘つきは泥棒の始まりって聞いたことないか?てことでさよーなら。」
「お、シン戻ってきたな。主犯は分かったか?」
「ここの近くの駅の裏側にある繁華街にいるらしい。名前は本名かわからないけど白兎。茶色の短髪に琥珀の目、目の下に大きな傷がある。これくらい特徴あれば分かりますよね?」
「……上出来じゃないの。それじゃあ、このまま主犯のアジトも潰して終わらせるか〜」
「はい!」
「シンの実力も確認できたことだし、終わったらご飯行くか!何食べたい?」
「え!?いいんですか?それじゃあ、寿司が食べたいです!」
「いいね〜。サクッと終わらせて回らない寿司行こう!」
宣言通りサクッと仕事も終わり、キンダカさんの奢りで寿司も食べて満足!
実力も評価してもらえたし、嬉しい♪
明日も仕事か〜とも思いつつ、今日は少しいい気分を味わえて幸福感を感じられた。明日の仕事も頑張るか!
あれ以来キンタガさんのサポートのような形でorderの任務についている。おかげさまでだいぶ力がついたと思う。エスパーの力も安定してきているし、なにより、キンダカさんのサポートとして認められたのが嬉しい。
今日も朝から任務かと思ったが、なにやら事情が違うようだった。キンダカさんはorderの任務以外に殺し屋育成学校JCCの問題児たちの相手も行なっているようだ。俺に体の動かし方を教えてくれた佐藤田先生が勤めてる学校。
キンダカさんと同じorderのメンバーである四ツ村さんの紹介もあり少しだけ教わったこともあるが、学生には会ったことがほとんどない。ほとんどっていうのは、キンダカさんの相手としてきたJCCの学生の相手を俺もしたことがあるからだ。確かにまだまだ幼い部類だろうが、舐めてかかってくるんだもの。馬鹿にされるのだけは嫌いだからついムキになってしまい、キンダカさんに怒られることもしばしばある。
今日の仕事ももしかしてJCC関係なのかな?
「おはようございます、キンダカさん!」
「おっ、シンおはよう。今日も元気そうだな!」
「はい!ところで今日の仕事は?いつもと違うようですがもしかして学校関連ですか?」
「なにも言ってないのにそこまで察したか。当たりだ。」
「てことは、またJCCの問題児相手ですか?俺も出ていいんですか!?」
「そうそう。今回もシンに手伝ってもらいたくて。特に今回の相手はお前も知ってる佐藤田から聞かされたんだが、学校内での実力は折り紙つきだが問題行動が多すぎて手を焼いているらしい3人組と編入成績はトップレベルだが目立ったところがない奴が1人だと。」
「え?あの佐藤田先生でも手を焼くやつらなんですか!?しかも全部で4人。今回は多いですね〜。佐藤田先生元気かな〜?」
「ま、シンなら相手できるだろ!俺の速さについて来れるんだからな。その後要人警護の仕事もあるが、どちらも手伝ってもらうからな。全部終わったら久々にJCCにでも行ってくるか?」
「〜〜〜〜っっはい!もちろん手伝わせてください!では、お言葉に甘えて終わり次第少しだけ見に行ってきたいです。」
「ハハっ!んじゃ、早速準備して待つとしますか。」
「はい!!」
いつのタイミングでその問題児たちが来るかわからないが、とりあえず俺はキンダカさんの側で気配を消して待つことにした。全て終わったら久々に学校というものを見に行ける楽しみができたことでやる気も十分!楽しみだな〜。
と考えていると思考の端に引っかかるものがある。ついに来たか。下はだいぶ騒がしくなっているようだ。
「キンダカさん。来たみたいです。下はだいぶやられちゃってますね。」
「ほぉ〜、噂通りのヤンチャどもってことだな。シン、気を抜くな、本気でやれよ。」
「はい!」
キンダカさんが注意するくらいなんだからだいぶヤバい連中だと思っていいだろう。少し緊張もするが大丈夫。いつも通りやろう。
♢♢♢♢♢
殺し屋デパート。
着々と殺りながら二手に分かれ、南雲と坂本は3階まできていた。
「こいつら各フロアに客や従業員のフリして紛れてるみたいだね。中途半端に一般客もいるからやりづらいな〜」
「?そうか…?」
「殺しの技術だけでは一流の殺し屋にはなれないぞ。お前らJCCのガキどもだな。佐藤田悦子は元気か?」
(殺気消すのうまっ!?)
「誰?おじさん。佐藤田先生の知り合い?」
「ああ昔、うちの組織に誘ったんだが断られてなー」
「お前が鋼龍か?」
「鋼龍?ああスチールドラゴンな。速そうで良い偽名だろ?俺はorderってチーム仕切ってるキンダカってんだ。さて、強いのはどっちだ?」
キンダカさんとJCCの生徒が話してる間俺は気配も殺気も消してこいつらの後ろに立っている。気づいてるのはやはりキンダカさんくらいだ。こいつら本当に強いのか?4人と聞いていたが他の2人は〜あ、下の階にいるのか。ん〜でも俺はここでサポートする要因だし、そのうち下の奴らも合流するだろう…。さてさてどんな行動に出るのだろうか?
と考えてる間にも視線と意識は絶対に晒さない。片方の黒髪は元諜報活動科って言ってる。学科については知らないが、そうか諜報活動…。
「さくっと殺そ、坂本くん。」
二手に分かれてキンダカさんに攻撃を始めたが、速さについていけてない。俺でも目で追えるぐらいゆっくりだ。それに、キンダカさんの速さに驚いているようだ。思考を読もうにも坂本って呼ばれてた方は普段から無口なのか?って疑いたくなるくらい静かだ。もう片方の黒髪は速さに驚きつつもどうすべきか考えている。そろそろ俺も出る頃合いかな〜。
「キンダカさん、下に残り2人もいます。そのうち合流するでしょう。俺、とりあえずこっちの男相手していいですか?」
速さに驚いてるところに割り込み、キンダカさんに声をかけながらもその勢いで黒髪の男を蹴り飛ばしキンダカさんから距離を取らせる。
「お、シン。やっと動く気になったのか?」
「いや、いつ動こうかと考えながら見てたんすけど、キンダカさんの速さについていけてないようだしどうしようかな〜と迷ってただけです。」
「ふ〜ん。まっ、なんでもいいや。そっちは頼むな!」
「はい!任せてください!」
俺に蹴り飛ばされたことに驚きながらもすでに立ち上がりこちらの様子を伺っている男。
内心動揺しているようで思考が読みやすい。
「(この子、いつからいた?)って思ってるね。教えてあげる。ずっと後ろにいたよ?お前らがキンダカさんと話し始めてからずっと。」
「はあ?君だれ?僕たちの後ろにずっといたって言うの?」
と言いながら蹴りを入れてくる。瞬時に避け、拳をふるいながら答える。
「うん。立ってたのに気づいてくれないから様子見てた。お仲間は下に2人きてるよね?なんだか仲は良くないみたいだけど…。」
「余裕だね。そんなに話しながらで大丈夫っ!」
(この子、さっきから僕の動きが読めてる?そんなわけないよね。偶然??てか、この子もだいぶ速い!!人間ってこんな速く動けるものなんだ?)
「お前の想像通り、動き読めてるよ。てか、見えてる?って言ったほうが正しいのか?ちなみにキンダカさんは殺し屋界で1番足が速い。そんなキンダカさんに教わってきたんだから、俺も当然お前らよりは速いつもりだよっ!」
思考を読み取った上で答えながら応戦するが、まだまだひよっこなんだろう。俺の言葉に動揺が見られる。JCCでは問題児なのだろうが、単体ではorderの相手としては不足だな。orderでもない俺に押されてるようでは…。
(さっきからこの子何言ってるの?動きが見えてる?てか、僕の考えがわかってる?)
「だからさっきから言ってんじゃん。お前の考えも読めるし、動きも見えてるって。」
「ねえ、僕声に出してないよね?君に何が分かるの?僕の考えがわかるっていうの?」
「えぇ〜だからさっきも言っただろ〜?ほら、右ストレートから左で刺すイメージしっかり伝わってるってば!」
思考を読み上げながら攻撃を避けてみせる。その上で刃物を持った方の左腕を思いっきり蹴り上げ、右腕をつかみ、腰に軸を置き、円運動で攻撃をさばく。すると、その動きを見た奴が驚愕の表情を浮かべた。
(え?待って今の動きってもしかして…)
「そんなにびっくりするか?JCC生なら知ってるだろ?佐藤田先生。少しだけ教わったんだ。」
「てか、え?君本当に僕の思考分かるの?もしかして、エスパーだったりする?」
「あ、やっと理解してくれた?もしかしなくてもエスパーだったりして〜」
動き出そうとしたやつに“とまれ”と念じる。
急に動きが止まったことで目を見開き驚いているようだった。その先を狙い片腕をひいて押し倒す。瞬間的に倒れ、そのまま動きを封じられたことで足掻くのを辞めこちらに顔を向けた。
「え?本当にエスパーなの?エスパーなんているの??」
「本当にエスパーですが?まあ、俺の場合後天的なんだけどなー。てか、いつまでもお前じゃなんだよな。お前の名前は?」
「……南雲。」
「なぐも、南雲ね。俺はシン。キンダカさんのサポート役。まあ、助手的な?」
「てか、君何歳なの?」
「バカにするだろうから言いたくない。」
「僕今18歳なんだけど。ほら、僕も教えたんだから教えてよ。」
「………12歳。」
「……はっ!?12歳???本当に!?」
「なんだよ、悪いかよ!?」
「いや、悪くはないんだけど…うん。12歳に負けたとか…。シンくん相当苦労したんだね〜」
「シ、シンくん!?いや、苦労というか俺が勝手にやってこうなってるだけだし。俺を拾ってくれたキンダカさんには感謝しかないし…。てか、なんで和んでんだよ。これ以上やる気ないんだったらさっさと立て。キンダカさんのところ行くぞ。」
「え?殺さなくていいの?君の任務じゃないの?」
「あぁ〜南雲、お前知らないんだな。ここでキンダカさん殺してもJCCの退学は免れないらしいぞ?」
「え?なにそれ?どういうこと??」
「ん〜 俺から話すより下の奴らと一緒にまとめてキンダカさんから聞いたほうが早い。ほら、行くぞ。」
まだ困惑したままの南雲を連れてキンダカさんのところを目指して歩く。はぁ、なんだか疲れた気分だ。
南雲を連れてキンダカさんのいるところを目指す。
時々様子を伺う視線はあるが、手を出してくるような仕草は見られないため気にせず歩いていく。あ〜、だいぶメチャクチャになってんな。これも全部フローターの人たちが直すのか?なんか、ごめんなさいって感じ。
下ではまだ戦う騒音が聞こえてくる。今は2対1ってところかな?
「なあ、南雲。」
「な〜に〜シンくん?」
「お前の仲間のうち残り2人の名前は?」
「知りたい?どうしよっかな〜」
「…教える気ないなら別にいい。後で直接聞く。」
「え〜!ちゃんと教えるよ?(赤尾リオン、有月憬)」
「いや、普通に言葉でいいだろ?」
名前を確認した後最後の1人の居場所を確認する。
んん?なんか様子がおかしい気はするが、近づいてきている。キンダカさんのところに着く前に先に接触しておいた方が良さそうだな。
まっすぐ下を目指して進んでいた道を変えて歩き出す。南雲は何も言わずに着いてきているが、ま、言わなくてもいっか。
思考を頼りに進んでいくとちょうど向こうもこちらに向かって歩いてきていた。
「なあ、アイツが有月憬か?」
「ん?そうそうアイツが有月だよ。」
「何?やっぱり仲悪いの?」
「ん〜?仲悪いっていうか、僕ら3人はいつもつるんでるんだけど、有月は今回が初めてだからまだ見定中ってところかな?」
「なるほどね。1人だけ雰囲気違うのもそういうことか。」
南雲から話を聞き、その間に有月との距離が縮まっていく。
向こうもこちらに気付き声をかけてきた。
「あれ?南雲くん。どうしたの?」
「いや、君こそどーしたの?赤尾と一緒だったはずだよね?」
「あぁ、えっと、怒らせちゃって?」
「赤尾が怒ったの?何しちゃったの〜有月くん。あ、僕はね、この子に負けちゃって〜。」
「はっ!?君が負けたっていうのかい?この子に????」
「あはっ!びっくりしてる〜。そそ、この子こう見えてめちゃくちゃ強いよ〜」
「あのさ、そろそろ俺話してもいい?とりあえずあんたが有月憬?俺はシン。よろしくな!」
「あ、えっと、うん。僕は有月、よろしく?」
「んじゃ、あんたも着いてきて。キンダカさんとこ行くから。」
「え?着いてきてって言われても…」
「あー、この任務意味ないよ。キンダカさん倒しても退学のままだから。詳しい話はキンダカさんから直接聞いた方がいいから、とりあえず行くぞ。」
「というか、キンダカさんって?」
「いい質問だね、有月くん。なんと鋼龍は偽名で、この任務自体も学校側に計られたものなんだってさ〜!驚きだよね〜」
南雲と有月の会話を聞きながら、再度キンダカさんを目指して歩く。そろそろあっちも終わるかな〜。終わってなかったら強制的に止めればいっか!次の任務も控えてることだし、キンダカさんも許してくれるはず!!
「キンダカさん。こっちは終わりましたよ!」
「お、シンか。流石だな〜。こっちはもうちょっと待ってくれ。」
「強制的に終わらせてもいいですか?」
「あぁ〜んじゃ、1人頼んでもいいか?」
「はい!んじゃ、そっちの坂本?って方止めてきます。」
キンダカさんに許可をもらい坂本の方へ歩いて行く。
なぜか2人とも着いてきているが…なんでだ?
ま、邪魔されなければいっか。
さてさて〜お!キンダカさんの速さに翻弄されてる。
んじゃ、今のうちに近づいちゃうか。
「えっと、南雲と有月。ここで待ってろ。着いてくんなよ?」
伝えるだけ伝えて返事は聞かずに気配も殺気も消して真後ろへ。そこにきてさっきを出すと驚きながらもすぐさま拳を振り上げてきた。その手を掴み、円転の理を用いて倒し“動くな”と思考を書き換える。体が動かなくなった瞬間を狙い立てないように押さえつけると任務成功!
「坂本だっけか?お前の負け。話があるから南雲と有月も待ってるから行くぞ。無駄なことしないで着いてこいよ?」
「…!?いや、待て。お前南雲と戦ってたやつだろ?というか、今の動き…(円転の理)」
「あぁ、南雲は俺に負けた。んで、今お前が思ったように俺が使った技は佐藤田先生に教えてもらったもの。納得したなら立て」
坂本を連れて2人のところに戻ると南雲はなぜか笑顔を浮かべているし、有月はまたもや驚いた表情をしていた。そんなに南雲はよくわからないが、ま、驚くのも無理はないよな。
「キンダカさーん、こっち止めました。そちらはどうですか?」
「おお、こっちも終わったぞ。さてさてJCCのガキども。お前らorderくるか?」
「はぁ?orderってなんだよ?」
「ねえ、それよりさ〜シンくんが言ってたのってどういうこと?」
「シンくん?お前といるその子のことか?てか、なんだ?」
「そうそう。この子シンくんって言うんだって〜。僕負けたちゃってさ〜。」
「南雲が負けたー!?このガキに????」
「ガキガキうるせえよ!いいから話進めろよ!」
「まあ、とりあえず一回話整理するか。自己紹介からな!俺はキンダカ。鋼龍は偽名だ。んで、こっちがシン。」
「シン。12歳。キンダカさんのサポート役」
(((………12歳!?!?!?!?!?)))
「なんだよ、12歳で悪いかよ!?」
「そんなことないよ〜シンくん!みんなきみが強いことに驚いてるだけだって〜」
(((シンくん!?てか、南雲/くんが言うと胡散臭いな)))
「…南雲、お前実は嫌われてたりする?」
「え?そんなことないと思うけど…どうして?」
「こいつらお前のこと胡散臭いってさ」
「あぁ、なんかいつも言われるんだよね〜。」
「お前が気にしてないならいいんだけど…」
「心配してくれたの!?ありがとう、シンくん!」
「そんなこと言ってないだろう!あぁーもう!キンダカさん話進めましょう!」
キンダカさんが4人にorderについて伝えている。
南雲、坂本、赤尾の3人は素直に驚き話を聞いてはいるが、有月は反応が違う。こいつ、orderを知っているな?南雲たちがJCCに確認をとっている間にちょっと鎌をかけてみるか…
「なあ、有月。お前さ、order知ってたんだな。」
「…あぁ、ちょっと耳に挟んだことがあって。会ったのは初めてだから驚いてるよ。」
初めて会ったことは本当みたいだな。
「そっか。んじゃ、あいつは?orderじゃないけど殺連会長のそばにいる麻樹ってやつ」
麻樹の名前を出した途端こいつの雰囲気が変わった。やはり何か関係があるのだろう。何か戸惑ってる?
(この子、なんで麻樹を知っている?もしかしてこの子もあいつの仲間?いや、こんな幼い子まで…)
俺は思い切って聞いてみることにした。俺の知っている情報を元にこいつがどっちの立場なのか見定めてみよう。
「俺、麻樹ってやつ嫌いなんだよな〜。一回キンダカさんと一緒に会ったことあんだけどさ、考えていることがもう最悪…。体調崩すレベルでさ〜。今キンダカさん達も尻尾を掴もうと調べてるみたいなんだけど、なんか知らない?例えば、身寄りのない子どもを集めた施設のこととか。」
話し終えた途端有月が攻撃を仕掛けてきた。
まあ、もちろん未来を読んで普通に避けたけど。
こっちの騒動に気づかれるのもすぐだろう。その前に話を聞きたいからとりあえず取り押さえるか!
「なあ、有月。お前さ、アルカマルって聞いたことある?てか、もしかしてお前そこのメンバー?」
さらに動揺が大きくなった。こいつもしかして、脅されてる?嫌な予想だけど人質取られてるとかだったらやだな〜。
「君こそ何者なんだい?なぜアルカマルを知っている!?お前も麻樹の手下なのか!?」
「ねぇ、聞いてたかさっきの話。俺、そいつのこと嫌いだって言っただろう?そいつに会った時に流れてきた強い思考。殺連会長暗殺、人為的なorder育成計画。まじふざけんなって!!!」
「なぜそこまで知っている!?というか、思考????」
「あれ?俺言ってなかったっけ?俺さ〜エスパーなんだよねー。普段はOFFにしてるけど、戦闘中、怪しいやつわ見かけた際、任務中は基本ONにしてるから大抵のやつの思考はやめるの。このことはキンダカさん、もう1人のorder創設者四ツ村さん、そして殺連会長は知ってるよ。その上でさっき言ったことも伝えてある。」
そこまで伝えることでやっと抵抗がやんだ。
こちらの騒ぎに気づいたキンダカさんたちも様子を見ている。話し声までは聞こえているかなんとも言えないが、もう少し話を聞いてみるか。
「んで、もう一回聞く。お前はアルカマルを知っているか?」
「……知っている。」
「話してくれる?俺、お前らのこと助けたい。というか、アイツを殺したい…」
「話したら何か変わるのか?」
「ん〜俺1人では無理だけど、確実に殺連会長とorderを味方にすることはできる。」
「…わかった。僕はアルカマルで育った。麻樹に言われてJCCに編入したんだ。僕の仲間もまだアルカマルにいて、僕の行動次第で罰を受ける、所謂人質がとられている。僕は本当は人殺しなんかしたくないのに…」
思った以上に根が深い。というかまじでありえねぇ。
証言を元にどうにかアルカマルにいる人たち解放できねぇかな?とりあえずキンダカさんに話してみるか。
有月との話し合いを終え、キンダカさんのもとに戻る。
「キンダカさん、すみません。お待たせしました。」
「話し合いは終わったか?んで、どうだったんだ?」
俺は有月をチラッと見てからキンダカさんにことの詳細を話した。これから違う任務があるからすぐに取り掛かるのは難しいと思うが、どう判断するのか…。俺の話を全て聞いたキンダカさんは
「話はわかった。これからある任務ちょいと厳しいものだからすぐに終わらすってのもな〜。あっ、待て。一旦今の話四ツ村にも伝えてくる。シン、その間にこのガキどもにこの後の任務について伝えといてくれ!」
そういうとキンダカさんは電話するために場を離れて行った。てか、次の任務こいつらも一緒にってことか?マジかよ…人数過多じゃね?とりあえず頼まれたことだし内容は話しておかないと。
「ねぇ、シンくん。有月についてはなんとなく把握できたけど、僕らはとりあえず次の任務?強制参加ってことで合ってる?」
「合ってる。キンダカさんが決めたなら参加するしかねぇよ。てことでこの後の任務について伝えるからよ〜く聞いとけよ?」
南雲の疑問に答えたのち、護衛任務について伝えた。しかし、護衛相手については俺らも知らされていないため、そこは直接会ってからだな。キンダカさんみたいなorderに来る任務ってことなんだから相当重要人物の護衛ってことだろ?ある意味ではこいつら使えるな、うん。
さて、有月にも今後のことで一つ伝えておかなければ…。
「大まかな流れはこんな感じ。なんか質問ある?」
「いや、特には…」
「私も大丈夫だ。」
「僕も…」
「はいはい!僕から質問!シンくんってエスパーでしょ?戦闘面では攻撃タイプ?それとも支援タイプ?僕とやる時は体術メインだったけど、武器とか使うの??」
「えっと、任務内容についてはOKてことでいいな?んで、南雲の質問だけど…ん〜と、キンダカさんと行動するときは基本支援かな?でも、1人でやる時もある。だから、その時の行動する人や場合に合わせて体術と武器合わせて使ってるな。まあ、使う武器は基本銃だけど。」
「ありがと〜。やっぱりシンくんすごく動けるタイプだね!12歳なのにすご〜い!!」
「年齢は言うな!てか、たぶんお前ら対俺だったら俺負けるぞ?南雲1人相手だったから勝てただけ。」
「それはやっぱり体格差とかこみで?」
「…いや、うん。正直いうと体格差はまだいいけど単純な力問題。俺の場合、このエスパーの力で相手の考えてることを読み取って先手を打つことが多いから。」
「なるほどな。んじゃ、今回の任務は私らが主に動いてやるよ!エスパーくんは支援に徹していい。」
「分かった。俺は今回支援に徹するが、状況に応じて動くし、キンダカさんから言われたらその通りにするからな。」
「…シンにとってキンダカとはどんな存在だ?」
「え〜てか、赤尾も坂本も急に呼び方変えんなよ。キンダカさんが俺にとってどんな存在かって?んと、命の恩人?殺し屋界の育ての親?尊敬できる師匠?って感じか?詳しいことはこの任務が無事終えられたらまた話してやるよ。」
「ああ、今はそれでいい。」
「一通り話し合いが終わったところで俺から有月へ忠告というかお願い。アイツとの連絡手段は切らなくていい。ただ、この任務の中で何か指示があった場合は口に出さなくていいから思考で俺に教えて。俺はそれを読み取った上でキンダカさんに伝えるし、今後の動きについても一緒に考えたいから…いいか?」
「…分かった。ただ、アイツが僕に何か指示を出す時はいつも僕の仲間を人質にとる。でも、orderが動いてくれるって考えていいだよね?」
「任務中にそちらもっていうのは難しいが、この任務さえ終わればアルカマルの方に専念できるはずだ。そこは保証する。」
「分かった。よろしくね。」
「おう!」
ある程度話し合いが済んだところでキンダカさんが戻ってきた。こちらにくる中で(シン、こっちは話がついた。そっちは大丈夫そうか?)と聞いてきたので黙って頷いた。それだけで意図は伝わるはずだ。後は、話し合いの中で決まったことや有月へしたお願い事について伝えておこう。orderの方の方針も気になるし!
「四ツ村に話はついた。麻樹のやつは前からきな臭い行動や言動ばかりだったから俺らも警戒してたんだわ。今すぐにとは行かないが、この任務が終わり次第必ず動くと約束する。」
「ありがとうございます。」
「よし!んじゃ、任務の詳細も聞いてるだろうし向こうさんも待っているらしいから急ぐぞ!」
◇◇◇
「よ〜わりー近藤」
「キンダカさん!もう要人の方待たせて…って、誰ですかその子たちは…!?」
「ん?シンのこと忘れたのか〜?」
「いやいやいや!キンダカさんわざとでしょ。俺じゃなくてこっちの4人のことでしょ、近藤さん。こいつらいつものJCCの退学者たちだよ。」
「あぁ、いつものあれですね。ってorderの任務前に何考えてるんですか!?てか、なんで連れてきたんです?」
「ん〜俺の労力使わせた責任みたいな ?まぁ、実力は折り紙つきだ。シンからの、な。」
(…なるほど。キンダカさんだけじゃなく、朝倉くんからのか。もう、後のことは知りませんからね!)
近藤さん、相変わらずかわいそうに。俺のことも信用してくれてるのはありがたいが、毎回なにかしらのトラブル持ってこられるのは大変だろうな。
などと考えてると““ピーン””こっちを狙ってる奴が既にいるな。
「奇襲!2時の方向!!」
伝えると同時に赤尾が動いた。
「ありゃ、スナイパーだな。坂本!」
「あぁ、これ借りるぞ。」
坂本がそう言ってハンドガンを投げた。
すごっ!?普通ハンドガンって投げてスナイパー倒せるもんか!?
俺はすぐに要人のそばにつく。
「南雲、くるぞ」
「うん、大丈夫だよ!」
南雲奇襲を仕掛けてきた残り2人をすぐさま撃退した。
その間に有月が車を持ってきたことでみんなでそれに乗り込む。ところで、この要人何者だ?2人分の思考がある…。
「なんか、ぬるっと任務始まったね〜」
「おもいっきし定員オーバーじゃん。ところで、あなたは誰ですか?」
「おいおいシン。こちらから聞くことではないだろう?何か気になることでも?」
「キンダカさん、こちらの方お二人ですよ?絶対話聞いといたほうがいいです。片方は子供のようですし…」
「はっ!?2人??てか、子供だって!?」
「暑いよ〜。ねぇ、ママもういい?」
子供の声がすると変装が解け中から女の人と女の子が出てきた。
「あなたがキンダカさんですか?私は天羽藍。殺連会長の妻です。この子は娘のこのみ。あなたのことは夫と四ツ村さんから聞いています。」
「おいおいおい、会長は独身のはずだぞ!?」
「私たちの存在は一部の人たちしか知りません。」
「マジかよ…見たところあんた一般人だな…」
「キンダカさん、間違いないみたいです。でも、天羽会長も四ツ村さんも周りは味方しかつけないようにしてるはずですが、どうしたんでしょう?」
「あぁ、以前シンに探ってもらってから安全圏の奴らしか周りに配置しないようにしたはずだ。」
「あぁ、あなたがシンくんですね。その節はお世話になりました。おっしゃる通りなのですが、最近、反殺連側の動きが活発化してきて、私たちもいた抗争に巻き込まれるかわかりません。せめてこの子だけでも海外に逃がしたいのです!」
「…えっと、天羽さん。一つお聞きします。今会長の側に麻樹っていう名前のやついますか?」
「麻樹、ですか…。以前は側についていましたがシンくんからの情報もあり今は外しているはずです。しかし、私たちのことは知られているかもしれません…。」
「ん〜、キンダカさん。これ、マズイかもです。急いだほうが良さそうですね。すでに近くまで来ています。」
「まあ、会長直々の任務ならやらないわけにはいかないか〜。しかし、四ツ村の野郎。さっきの電話で一言教えてくれてもよかったと思うんだが!?」
「キンダカ、怒ってるのか?」
「怒ってるには怒っている、が今はそれどころじゃないな。シン、敵は何人だ?」
「2人組、前の車両。なんか、変なやつです。」
「変ってなにが?てか、前の車両かよ」
「ん〜片方のやつが徳がどうとか言ってる…あ!前手榴弾!」
いきなり戦闘開始と思ったら、やっぱりこの坂本って人も変だ。何故つかむ。そして下水道に落とすとか…。すごいんだろうけど、変人な気がする。
手榴弾を回避したと思いきやすぐに車へ襲撃。俺は事前に決めていた通り支援に回る。キンダカさんと赤尾が天羽さんを、このみちゃんは…って攫われてる!?いや、片方は南雲か?あいつ、変装が得意なんだな。この一瞬で変わるだなんて…。
““ピーン””
「南雲!毒だ!」
気付くのが少し遅れた。
言うと同時に毒ガスが撒かれてしまった。
南雲とこのみちゃんは敵の車に…。
でも、赤尾と坂本がすぐ救出した。
やっぱりアイツら変だ。
◇◇◇
「こちら中央車キンダカ。坂本、後方はどうだ?」
あの襲撃の後から三手に分かれて護衛任務を続行している。
先頭車は有月、赤尾、そして俺。
中央車はキンダカさん、天羽親子に南雲。
そして後方車のバイクに坂本だ。
有月へ麻樹から何か指示が入るのでは?と思い俺は同じ車に乗ることにした。キンダカさんも俺の意図を汲んでくれている。
坂本はやはりあの中でも規格外なところがあるらしい。こういう場面では一番強いとのこと。南雲はなんでも器用にこなす、また、変装が得意ってこともあってかキンダカさんと一緒に護衛だ。
さてさて、どのタイミングで指示が来るか…。
途中で寄ったサービスエリアで飯の調達。っと、このタイミングで(電話。麻樹。)有月からと端的に思考が流れてきた。
遠すぎず近すぎず、一定の距離を保ちながら見守る。
有月の様子から電話内容は想像通り最悪なものなのだろう。そして、有月は任務内容をなんとなくだが聞いていたらしいな。電話が終わったら内容を教えてもらわないとな。
「有月、飯の調達終わったってよ。行くぞ!」
電話が切れたタイミングで声をかける。本当は赤尾がちょっかいかけに行こうとしてたが止めておいた。タイミング考えろって…。
車に戻る最中に流れてきた思考を読む。
(麻樹から、天羽親子を攫う任務を言いつけられている。天羽会長を釣るための餌として。僕には一般人に手を出す勇気はない。だから大勘案としてキンダカを殺すと伝えた。反対されたが怪我を負っていると嘘をついた。そこで連絡は途絶えてる。)
ふ〜ん。キンダカさんを殺すと言ったのはムカつくが、本気ではないだろうし、最悪任務に失敗したように見せかけて雲隠れしてもらおう。とりあえず、全員に報告だ。
「分かった。伝えておく。」
どこで聞かれてるか分からない。小声で思考に対し答えた。
出発してすぐに再度奇襲。てか、南雲車酔いするんだな。あんなんで大丈夫かよ。キンダカさんが天羽親子を連れ出し無事戦闘車に追いついた。坂本が残り俺らは進むが、例の毒使いがきた。
「毒使いです。南雲はさっき吸ってたろ。お前は一旦後方に回れ!赤尾、キンダカさん、時間稼ぎお願いします!」
「えぇ〜シンくん。僕毒にはちょっと慣れてるからまだ動けるよ〜」
「いや、シンのいう通りいったん下がれ。俺が出るから親子の護衛だ。有月、南雲と一緒にシンの事も見といてくれ。」
「…わかったよ〜。じゃ、このみちゃんたちは少し離れようね〜。」
赤尾はまだ疑問視しているが、南雲は納得したようだ。
さて、俺はこの間に毒の特徴を掴まないと。
何が原因だ?こちらが動くたびに意気揚々と話してくる敵の思考に集中する…あ、分かった。運動量だ!
「全員動くな!この毒、運動量が関係している!」
そう言った途端敵も動きを止めてこちらを見ている。
すると突然有月が天羽親子を気絶させた。
「有月!?なにしてるんだよ!」
「…運動量ってことは鼓動関係している可能性がある。だから、一旦眠ってもらおうかと…」
「一利あるけど、手荒だな。」
動くのもダメ。ビビったりして鼓動を早めるのもダメって無理ゲーかよ。今のところ動けそうなのは俺と有月。でも、南雲と赤尾も諦める気はなさそうだ。車のトラック部分の物色をしている。今から気配を消して近づいても難しいだろうしな〜。けど、あいつらが気を引いてくれればチャンスはある。
いや、気を引いてくれるとありがたいな〜とは思ってはいたよ?けど、こいつらやっぱり変だ!車椅子と手榴弾で行動手段作るとか…。
さて、敵さんがあいつらに気を引かれてるうちに近づくか。解毒剤も持ってるみたいだし!
俺は気配を消しそっと近づいていく。
近づいた途端にこちらに気付いたならそれはそれでいい。後1mと言ったところで向こうもこちらにやっと気付いたようだ。俺はすぐ((動くな))と念じた上でさらに近づき、相手の動きを封じる。
「解毒剤持ってるよな?どこだ?」
答える気はないようだが、解毒剤と聞いた時自身の胸ポケットのイメージが伝わってきた。俺は答えないやつを無視してそのまま胸ポケットを探り解毒剤を取り上げる。足りるかわかんねぇし、とりあえずある分だけ全部貰っておくか。
坂本も合流し、穴を開けてくれたことで新鮮な空気が入ってきた。その後、無事全員が解毒を終えた。探ってみるが近くに新手もいないようだ。護衛任務は最後まで全うしなければならないが、ここからが本番だ。有月はキンダカさんを代わりに殺すと麻樹に伝えている。でも、こちらも事情を知っているからこそやらないだろう。ていうことは、だ。有月が逃走したように見せかけるのが1番だろう。容疑はやはり、orderであるキンダカさん殺人未遂的なものかな?ここからは二手に分かれるのが1番だ。有月を追うもの、護衛を担うもの。
「キンダカさん、これからどうします?有月の件を考えると二手に分かれたほうがいい気もするんですが…」
「そうだな〜、有月は俺を殺すって麻樹に言ったんだよな?それならいっそのこと、死なない程度に俺に攻撃して逃げろ。」
「…はっ!?キンダカさん、待ってください!そしたら護衛任務はどうするんですか??」
「お前と残り3人でやりきれ。空港まで後少しだろ?」
「ですが………」
「シンくん言いたいことはわかるけど、キンダカの言う通りだと思うよ?有月も、できるよね?」
「…分かった。少し入院が必要ってレベルに抑えられるよう気をつけます。」
「おうよ。俺もやばいと思ったら少し防御させてもらうから大丈夫だ!シン、俺は死なない。入院中は俺のそばにいろよ?」
「………はい。」
「うし!いい子だ!」
キンダカさんはそう言って俺の頭をガシガシと撫でた。
天羽親子を車に避難させ、南雲と俺がそちらにつく。
赤尾と坂本は念のため様子を見守るといって外に残っている。
ガガガガガガッッッとすごい音がした。そういえば有月の武器は見たことがない。キンダカさん、大丈夫かな?
「シンくん、大丈夫だよ。もしもの時は赤尾と坂本くんが止めに入れるよう残っているし。僕もある程度の治療ならできる。」
「南雲………そうだよな。信じないとダメだよな。」
坂本がキンダカさんを抱えて戻ってきた。俺は急いで意識の確認をする。思った以上に血まみれで本当に生きているのか不安になってきた。震える手をなんとか抑え込み、確認をするとしっかり脈は取れた。
「キンダカさん!」
「……おい、シン。何泣いてんだ。死なねぇって言っただろ?でもちょっと休ませろ」
動かすのも辛いだろうに俺の頭をまたガシガシと撫でて目を閉じた。その様子を見守っててくれた南雲がすぐ止血に入る。そういえば、赤尾はどうしたのだろう?坂本を見上げると言いたいことがわかったのだろう。
「赤尾は有月について行った。あいつがいるなら有月もしばらくは大丈夫だろう。赤尾もキンダカに手をかけたやつを追うという名目があるから。」
その後、護衛任務は無事終えた。
天羽親子は海外へと飛び立っていた。
俺たちはその足で急いでキンダカさんを殺連関係者用の病院へ運び込む。すぐに手術が始まったが、命に別状はないようだ。本当に良かった…。
◇◇◇
3日後…。
やはりすぐに病院へ連れて来れなかったことによる、失血がひどくキンダカさんはまだ目を覚さないでいる。俺はキンダカさんが言った通りになるべく離れず病室に留まるようにした。なにせ、殺連の病院だ。麻樹に伝わるのも早いだろう。離れるわけにはいかない。そんな俺を見かねて南雲と坂本が毎日欠かさず通ってくれている。アイツらがきてくれている間に俺は用事を済ませたり、仮眠をとるようにしていた。1人の方が目立たないのに必ず南雲がついてくるのだけはちょっと鬱陶しいと思うけど…。
しかし今日は珍客のようだ。
「あ、四ツ村さん!お疲れ様です。」
「ああ、シン。お前も護衛任務ご苦労だったな。さて、こいつがこうなった原因聞いてもいいか?」
俺は初めから全て四ツ村さんに伝えた。と言っても前半は電話ですでに報告を受けているだろうから後半の話に重点を置いて話した。四ツ村さんは最後まで真剣に話を聞いてくれた。
「そうか。シンも辛い思いをさせて悪かった。お前にとってこいつは親同然だもんな。」
「…いえ、大丈夫です。だって、有月は約束を守ってくれた。キンダカさんはまだ生きてる。」
そう伝えると四ツ村さんが頭を撫でてくれた。キンダカさんとは違いぐしゃぐしゃって感じで優しい撫で方だった。ずっと気を張ってたのもあってか少し安心した。
「ところで、四ツ村さん。アイツ…麻樹はどうなってます?会長は無事ですか??それに、周は…」
「会長は無事だ。お前のおかげもあって、会議の間もそれ以外も周りは信用が置ける奴しかいない。周もなんとかJCCに保護してある。あっちには祖父もいるから大丈夫だろう。お前のおかげで先手が打てたんだ。本当に感謝する。」
「いえ、俺こそ感謝しかありません!こんな力を持った俺を普通に受け入れてくれた。話も信じてくれた。感謝してもしきれません!!」
そんな話をしているとコンコンッとノックの音が聞こえてきた。どうぞと声をかけると南雲と坂本が入ってきた。四ツ村さんを見て一瞬不思議そうな顔をしていたが、すぐに俺を見て声をかけてきた。
「シンくん〜お疲れ様!ちょっと休憩しよ!」
「いつもありがと…。でも、その前に四ツ村さんとの話がまだ終わってない。」
「話ってなんだ?」
「お前らが南雲と坂本だな。護衛任務ご苦労だった。今シンから報告を受けていたところだ。」
「ふ〜ん、それで?有月が警戒していた麻樹だっけ?そいつは今どうしてるの?キンダカから事前に話はあったんでしょ?」
「麻樹は会長殺害未遂で追われる身となった。このことから芋蔓式にアイツの悪行がわんさか出てきて今や殺連は上に下への大騒ぎ。人手不足だ。シンから報告を受けたアルカマルの施設もやっと見つけることができた。」
「じゃあ、有月は自由の身ってことですか?」
「まあ、そうなるな。けど、その前にいったん保護したいんだが、南雲か坂本、お前ら連絡取れるか?」
「赤尾が携帯壊してなければ通じるはず…」
「そしたら、麻樹に接触される前に保護するぞ。ということで、だ。お前らorderに入れ。」
「僕らを信用すると?」
「まぁ、ほぼほぼ人間不信みたいなシンが心をそれなりに許してる奴らだ。それに、コイツからの推薦もあったんでな。それにorderなら今後とも動きやすくなると思うぞ。」
それだけ言うと四ツ村さんは俺に挨拶をして出て行った。
南雲と坂本はきっとorderになることを受け入れるだろう。
何より、早く赤尾と有月を探し出さなければ、追われる身となったアイツが何をするか分からない。
◇◇◇
1週間後…
毎日のようにキンダカさんの看病をしていると動く気配を感じた。もしかして!と思い振り向くとキンダカさんの目がゆっくりと開いた。俺は急いでナースコールをするとともに名前を呼び続けた。しばらくすると医者と看護師が来てキンダカさんの容態の確認をする。俺は少し離れて様子を見ていた。意識に問題がないことがわかると「後は順調に回復するでしょう。もう問題はありません。」と言って出て行った。
完全に気配がなくなったことを確かめ、再びキンダカさんのそばによる。
「キンダカさん、よかったです。目が覚めて…」
「シン、心配かけたな。あれからどのくらい経った?」
「ちょうど1週間です。とりあえずこの1週間の動きだけ伝えますね。」
俺は麻樹が会長暗殺未遂で殺連に追われる身になったこと、アルカマルのメンバーが保護されたこと、そして、南雲と坂本がorderになったことを伝えた。赤尾とは無事連絡が取れたらしく、2人とも無事保護もされている。赤尾は再開すると姪っ子が待ってるからとそのまま帰っていった。有月はアルカマルの仲間と再開し、今は麻樹のこともあり殺連でも会長派閥との関わりが深い安全な場所に保護されている。俺もキンダカさんが目覚めたら会いに行く予定だ。
「そうか。この1週間で目まぐるしく色々なことが起こってたんだな。シン、約束守ってくれてありがとな。俺は大丈夫だから、今度はお前が少し休め。」
キンダカさんに言われ、同じ部屋に用意してもらっていた大きめのソファーに横になる。安心感に包まれ俺はそのまま深い眠りに入った…。
あれから数日が経った。南雲と坂本はorderとして忙しくしているようだが、週に一回程度の頻度で顔を合わせる。アイツら、実は暇だったりするのかな?俺といえば、キンダカさんについてorderの仕事を手伝うこともあれば、単独で任された任務を遂行したり、時間さえあればJCCに行き、佐藤田先生に体の動かし方を引き続き教わっている。あの3人組が佐藤田先生を苦手にしていると思うとさらに磨きをかけてやろうっていうちょっとした悪戯心もあるが、俺があの3人と顔見知りということもあり、JCC時代の問題児行動について教えてくれることもあり、それを聴くのも楽しみにしている。今度このネタで揶揄ってやりたい。また、四ツ村さんの息子である周もいるため、周にも会うようにしている。まだまだ小さいのに四ツ村さんに教わったからなのか異様に武器の扱いが上手い。用務員であるじいさんもかなりの使い手のため、どちらからも教わってるのだろう。ちょっと羨ましいな〜なんて…。
変わったことといえば、アルカマルのメンバーと定期的に顔を合わせるようになったことだろうか…。実のところハッキリは覚えていないが、あの施設にはなんとなくだが見覚えがある気がしている。施設のメンバーであるハルマにも「見たことがある気がする」みたいなことを言われた。実際にラボでの生活が始まる前まで俺自身どこでどう暮らしていたのかよく覚えていない。でも、何かしらの関わららがあるような気がしてならない。俺の親父なら知っているのだろうが、どこにいるのかも見当もつかない。朝倉のおっさんも俺を預けた後の行方は知らないと言っていたし、俺は親父を探す目的もありラボを飛び出した。親父に聞けばわかるのだろうが、やはりなんだか罪悪感のような、後ろめたい気持ちになってしまい、アルカマルのメンバーと顔を合わせるのはあまり気が進まないのだが…。なんでか知らないけど、楽や天弓にやたら懐かれてる気はするし、他のメンバーも距離が近いからなおさら気まずいのだ…。
まあ、俺があのメンバーと会う時は必ずキンダカさんは分かるが何故か南雲、坂本、赤尾といった当初のメンバーが1人はついてくるから少しは気が楽になる。
麻樹はいまだに逃亡を図っているが、それを除けば少しの平穏が訪れていた…殺し屋に平穏って言っても変だけど。
そうそう新しい出会いもあったんだった。
なんと、あの四ツ村さんにも弟子?のような立場の人ができた!神々廻というらしい。というのもついこの間JCCに寄った帰りにたまたまキンダカさんを訪れていた四ツ村さんに遭遇した。その時一緒にいた男の人が何を隠そう神々廻だ。ザ・不良って感じの見た目の割に常識人でツッコミ役なんだって。俺の周りの人間が常識人なのか非常識人なのかよく分からないが、確かに周りの人間の中ではだいぶしっかりしている気がする。初めまして以降会うたびに「神々廻、久しぶり!!」って声をかけると「いや、シンが俺より殺し屋界長いのは知ってるし、そう考えると先輩なんやろうけど、俺の方が年上やで?せめて"さん"つけような?」と言いつつも心の中では(まあ、言うても変わらんことはわかっとるんやけど、今後のことも考えるとせめて年上相手には"さん"付けで呼べるようにしといた方が良いやろうし…)となんだかんだ俺のことを考えてくれてるとても優しい人。この人はキンダカさんや四ツ村さんと同じく"さん"付けで呼んでもいいかな〜と思うくらいには気に入っている。ただ、最近気になることは俺が神々廻と話していると南雲からよく分からないが殺気を込めたような冷たい視線が突き刺さることが多い。俺、なんかしたっけ?よく分からないものは無視無視!とりあえず、その視線だけはやめろ、落ち着かない!
そんな俺にも楽しみがいくつかあるのだが、その中でもダントツで癒されるのはこれ!このもふもふ達はたまらない!なんと俺のエスパーは動物たちの言葉もある程度なら読めるのだ!それに昔から猫や犬がよくそばに寄ってくることが多く、それもあって俺は動物も好きだった。今日は時々俺を助けてくれる猫たちに会いに来ている。野良猫から飼い猫まで様々らしいが、その中でもこのボス猫は俺が任務で困っていた時度々助けてくれた。感謝の気持ちを込めて猫が好きそうなおやつを持ってきてから習慣化している。ちなみにこのボス猫はそこまで大きくはないが、喧嘩は強く、そして心優しい猫なんだそうだ。茶トラって温厚だとは調べた時に見たが、野生の猫たちのボスとして認められてるんだからきっとすごく強くて優しい猫なんだと思う。ちなみに名前はレオだって。
「あ、レオ。最近変なこととか変わったことはないか?こっちで結構バタバタしてたからもし何か迷惑かけるようなことがあったら…」
(シンが気にするようなことは特にないが、お前らの世界で面倒ごとが起きてたみたいだな。シンは怪我はないか?)
「ありがとう!俺も怪我は特にないよ。なんか、友達?知り合い?がいっきにたくさんできてちょっとつかれてるってかんじかな?」
(まあ、いい。何かあればいつでも頼れ。俺たちは毎日のパトロールを欠かさない。何か変わったことがあればシンにも教えてあげよう。)
なんでだろう?レオを始めこの猫たち俺に対してすごく優しい!ちょっとドジって怪我したところも心配そうにペロペロ舐めてくれるし、変わったことや危険な場所について毎回会いに来なくても教えに来てくれる。そして、必ず力になってくれる。強くてかっこよくて優しいって本当にすごいな…。すごくあったかくて、ちょっぴり恥ずかしい…。
そんなことを考えていると引っかかる気配を感じた。あれ?もしかして…南雲???エスパーを使ってより詳しく見てみると
(シンくん、どこに行くのかと思ってついてきたけど、何あれ!!めちゃくちゃ可愛いんだけど!これねこ集会ってやつだよね??そこに混ざってるシンくんめちゃくちゃ可愛いんだけど!?)
え?なんか、めちゃくちゃ心うるさくね?てか、は?かわいい?あ、猫たちのことか!触ってみたいのかな?
「南雲、いつまでもそこにいると猫たちもびっくりする。いい加減出てこい。」
「あはっ!やっぱりシンくんにはバレてたか〜。ここで何してるの?」
「俺の秘密の楽しみ。こいつら俺のこと助けてくれるから、俺もお礼しにきてるんだ。」
「え〜!?猫が君を助ける????どういうこと?まさか、道案内とか?」
「お前、レオたちバカにすんなよ!レオたちがくれる情報はすごいんだからな!めちゃくちゃ詳しいし、丁寧だし、危険な場所や人がいるところも教えてくれるんだぞ!しかも、俺が任務中ちょっと困ってる時もどこからともなく出てきて逃げ道を教えてくれるんだ!すごいだろ!!」
「…え?この猫くんたちそんなことまでできるの!?うわ〜諜報活動に向いてるね!」
「んん??その感想もなんだ?ま、いいや。ところでお前、猫に触ってみたいのか?」
「うん?なんでそう思ったの?」
「だってさっき、俺たちの方見ながらかわいいって思ってただろ?猫好きなのかな〜と思って」
「……あ〜うん。触ってみたいかな〜。僕、なんでか知らないけど動物に逃げられちゃうんだよね〜。だからほとんど触ったことなくてさ〜」
「そうなんだ!お前ら雰囲気あるから察知して避けられてるんじゃないか?動物は危険なものから逃げるっていうし。」
「あ、なるほどね〜。僕たちの気配に敏感ってことか。」
「レオなら触らしてくれると思うぞ?レオ、こいつさっき言ってた最近知り合った南雲。それなりに動けるけど、俺よりは弱いかも?だから、ちょっと触らせてやってくれないか?」
そうレオに聞いてみると南雲を見て、俺を見てすぐに(いいだろう。ただ、少しだけだ。)と答えてくれた。
「南雲!レオが少しなら触ってもいいってさ!よかったな!」
「わーい!ありがとう、レオくん!」
(言いたいことがあるならきちんと伝えないと伝わらないぞ。シンには特に、だ。)
南雲がレオを触っている間レオから伝わってきた内容を南雲に伝えてみた。行っている意味がよく分からなかったが、南雲には伝わったみたいで、レオに「う、がんばります…」って小さい声でつぶやいていた。いつも1人だけでいる場所に南雲が一緒にいるってなんか変な感じがするな…と考えながらレオを触る南雲の様子を見ていた。しばらくして堪能したのか「シンくん、ありがとうね。初めて猫にさわれたよ!」と嬉しそうに話していた。「…今度違う動物にも触ってみるか?」と言ってみると「えっ!?本当?シンくんと一緒に動物に触れるの!?ぜひよろしくね、シンくん!」と会話が成り立ってるのかわからないがまぁ、いっか。
「南雲、一つだけ言っとくぞ!今日のことは他の人には内緒だかんな!キンダカさんは知ってるけど、俺動物の意思が分かることキンダカさん以外には言ってないから…。」
「うん!もちろん!シンくんと僕の秘密だね〜!誰にも言わないよ!」
「分かったならいい。俺は帰る。お前は?」
「僕も帰ろっかな〜。シンくんキンダカのとこ行くなら送ってくよ!」
「いや、1人で帰れるし。お前、仕事は?」
「仕事は今日はもうおしまい!だから、ね?送らせて。たまには一緒に帰ろうよ。」
「…そこまで言うなら。」
「うん!」
一緒に帰ろうなんて初めて言われた。ちょっと照れ臭くなってそっけなく返したが、南雲は嬉しそうに笑っている。やたらと南雲との遭遇率が高い気もするし、構われることも多い気がする。なんでだろう?俺にはまだよく分からない…けど、ちょっと嬉しいなとも思ってしまう。この気持ちは何?まあ、今はいっか。とりあえず今度はなんの動物に触らせてやろうかな〜と考えながら南雲の話に相槌を打つことにした。
ここのところちょっとした問題が続いている。
何を隠そう俺の身の回りで盗聴器やらカメラやらが仕掛けられていることが分かったのだ。最初は盗聴器やカメラについてよく分かっていなかったこともあり自身では気づかなかったのだが、なんせ周りが周りだ。
まず初めに気づいたのはやはりキンダカさんだった。いつも通りキンダカさんに会いに行った際に
「シン、ちょっと待て。」
と言って俺を止めた。初めてのことにちょっとびっくりしながらもキンダカさんが言うんだからと素直に立ち止まると(俺がいいって言うまで何も話すな。)と真剣な表情で指示された。よく分からず首を傾げながらも大人しく従うとすぐさま俺のボディチェックが始まり、よく着ているパーカーの襟部分から何かを取り出しすぐに壊した。
しばらく俺を観察した後に
「よし、もういいぞ」と言われ
「キンダカさん、今壊したものは何ですか?」と聞くと、
何やら言いにくそうに顔を歪めたかと思うと俺を見て
「あぁ〜シン、お前最近変わったこととかないか?」
と尋ねてきた。答えになってないことは分かっていたが、なんだか深刻そうなため言われるがままに最近のことを思い出してみる…。変わったこと、変わったこと…ん〜?特に思い当たることはない。最近といったらいつもと変わらず任務、キンダカさんとのorderの仕事、何もない日は体作りや息抜きに出かけるくらいだし…。あえて言うなら南雲が前より会いにくる日が増えたくらい?俺の考え込む様子を見て特に変わったことがないと分かったのか
「これといって思い当たらないならいい。今お前から取ったのは盗聴器だ。どこかでつけられたんだろう。」
「盗聴器?盗聴器ってあの盗聴器??」
「そう、その盗聴器だ。今日誰かとすれ違ったりぶつかったりしたか?」
「え〜と、ぶつかったりはなかったけど、男の人とはました。でも、思考は問題なかったはずです。」
「そうか…」
それっきりまたキンダカさんは何かをまた考え込んでいる。読もうと思えば読めるが、キンダカさんがあえて読まないようにしているため話があるまで待つことにした。しばらくして考えがまとまったようで
「シン、これからしばらくの間行動する際は俺もしくはあの問題児3人組と必ずしろ。それが難しい時は四ツ村に任せる。」
「えっ!?そこまで??」
「当たり前だろ。お前の能力がバレた可能性がある。もちろん俺らは他言していないはずだが、どこからか漏れててもおかしくねぇ。シン、分かったな?今からあいつら呼ぶから今日はここで俺と待機だ。」
あの後キンダカさんの呼び出しで南雲、坂本、赤尾の3人と忙しい四ツ村さんに代わり神々廻が来た。全員が集まったところで事情説明がなされたが、俺はそこまで実感が湧いていなかったため、どこか他人事のように話を聞いていたのだが…。
話が終わった途端に南雲が
「僕、シンくんのお家調べてくるね。本人につけられたのなら家がバレてる可能性もあるでしょ?」
と言って出ていった。坂本はいつものように無言ではあったが、心配そうな目で見つめてくるし、赤尾は赤尾で
「シン、お前モテるな!てか、盗聴器って…www」
と爆笑し始めた。神々廻だけは
「シンくん、大変やな〜。何かあったらすぐ言うんやで?」
とまともに心配してくれた。
「俺、今日から神々廻のこと神々廻さんって呼ぶ。ありがとう。でも、俺もそこそこできるから大丈夫だって!」
と言うと
「シンくんがそこそこ強いのは知っとるよ。でも、だからと言って心配するのはまた別やろ?南雲も心配だからシンくんの家調べに行ってくれたんやし、もう少し自分を大事にしい。」
と諭されてしまった。
「……心配してくれてありがとう。」
と伝えると
「当たり前や!言えてえらいな〜」
と頭を撫でられた。神々廻さんの撫で方四ツ村さんに似てる…。嬉しくなったのは内緒にしよう。
1時間もしないうちに南雲が帰ってきた。
「ただいま〜。シンくんのお家調べてきたけどさぁ、あれやばいね。つい最近か今日つけられたのかは分からないけど至る所に盗聴器仕掛けられてたよ。カメラは2コくらいだったけど全部処分はしてきた。」
言われた内容に驚きが隠せない。え?俺の家盗聴器とカメラ仕掛けられてた??しかも結構な数????気づかなかった…。
「…シン、存在自体知らなかったんだから気づかなかったのも無理はない。」
「坂さん、心配の仕方ちょっとズレてます…」
「エスパーくん、仕掛けられてたことより気づかなかったことにショック受けてんの??マジ?ウケるんだけどw」
「あのさあ、シンくん!!気づかなかった云々より自分の心配しようよ!!あのままだったら何が起こってもおかしくないんだよ??」
「今回ばかりは南雲の言う通りだぞ、シン。まずはお前の心配が先だ。今後嫌でも気付けるようになるだろうからそこは心配する必要はない。と言うことで、だ。今後の対策を練ろうと思う。」
とういことで俺はあの日以来1人行動が禁止され、家に戻るのも危険とのことでホテル暮らしを余儀なくされた。任務は別として普段の生活の中で誰かと一緒に過ごすことになかなか慣れずちょっと疲れる…。
◇◇◇
今日の俺の当番は赤尾。赤尾自身はorderには属していないが、悪友が属しているってこともあってかorderの任務に付き添うことが多い。何もない日は姪っ子のところにいるらしいが大丈夫なんだろうか?
「何?エスパーくん。私になんか聞きたそうだな?」
「赤尾、俺についてて大丈夫なのか?大事な姪っ子がいるんだろう?」
「晶のことか。問題ない。晶は1人でも十分生活できるし、安全圏にいる。今心配すべきなのは自分自身のことだろ?エスパーくん。」
「…ありがと。でも、もしもの時は俺より大事な姪っ子の方を優先しろよ!」
「ハイハイ、分かりました分かりましたよ〜。」
(コイツ、自分が心配されることに慣れてない分、自分の優先順位がとことん低いんだな。厄介だ…。)
「…赤尾、やっぱり俺厄介?なんだろ?最近は何も起きてないし、俺についてなくていいよ。キンダカさんにも俺から言っとくし。」
「あぁ〜厄介ってのはそう言う意味じゃなくてだな?お前、もう少し自分を大事にしろ。他の奴らにも同じこと言われただろ?他のやつよりまずは自分を大切にしてやれ!それが分かってないから厄介って言ったんだよ。」
「自分を大切に??なんで?俺別に出来ることできないことは分かってるつもりだし、他人に迷惑はかけてないはずだ…。」
「(これは根深いな…。南雲も大変だな。今度ちょっとは意識してもらえるよう手伝ってやろ。)ところでエスパーくん。今日は何も任務ないんだろう?どっか行くか?」
「…え?あぁ、うん。」
「エスパーくん、変なこと考えてないだろうな?」
「……え?変なことって何言ってんだ?変な赤尾〜。そーだな、買い物にでも行こうかな。新しいシューズ見たいし!」
「おっ!いいね。どうせなら大きいショッピングモールにでも行くか?」
「でも、ここら辺にはなくね?」
「いいじゃんいいじゃん。たまには遠出しよーぜ!バイク乗せてやるよ!」
「バイク…乗ってみたい!」
「よし、行こうぜ!」
と言うことで赤尾と一緒に初のバイクでショッピングモールへ。バイクいいな。風がめちゃくちゃ気持ちいい。俺ももう少し大きくなったら絶対バイク運転してやる!
ショッピングモールに着いたのはいいが、物騒な思考の持ち主多くね?
(あぁ、誰でもいいから殺りてえなぁ)
(お、あの子いいな〜ちょっと攫ってもバレねぇよな?)
(ここに爆弾仕掛けたら大騒ぎだろうな〜今度やってみようかな)
(エスパーのガキ見〜つけた。)
あっ…。俺のことを知ってる奴がいる?誰だ?俺の能力知ってるやつなんて多いはずがない…。
「エスパーくん、大丈夫か?」
「あっ、いや、大丈夫。なんか物騒なこと考えてるやつ多いみたい。」
「はあ?こんな真っ昼間のショッピングモールでか!?」
「本当にやりそうなのは1人くらいだから大丈夫だとは思うけど」
「ふ〜ん。じゃ、お目当てのシューズ見に行くか!」
「行く。」
何も起きないといいけど…。
赤尾side
クソッ 油断した!!
エスパーくんの様子がおかしいのは分かっていたのに、トイレだからと目を離すべきではなかった!!
お目当てのシューズがなかなか見つからず靴売り場をめぐり歩いていた最中エスパーくんが「トイレに行ってくる」と言うもんだからからかいついでに「一緒に行ってやろうか?」と言うと「トイレぐらい1人で行ける!!」と言い張りトイレに行ったのはいいがかれこれ10分も出てこないのは流石におかしい。トイレに声をかけてみたが反応もなく、気配を探ってみたが誰の気配もなかった。急ぎ共有されているGPSを確認するとエスパーくんのGPSはショッピングモールを出ていた。
ここを出られたんじゃ1人では手に負えない。
……応援を呼ぶか。数回の呼び出し音の後
「はーい。赤尾?どうしたの?今日はシンくんの当番でしょ〜?シンくん怒らせでもしたの〜?」
「南雲、悪い。エスパーくんに一本取られた。」
「…は?どういうこと?」
「少し離れた大型ショッピングモールに来たんだが、入ってすぐに物騒な思考のやつが多いって言ってたんだ。その後も反応が鈍いから気にしてはいたんだが、トイレに行ったふりしていなくなった。おそらくエスパーくん自身を狙ってるやつに捕まったのか、囮になろうとして離れたのか…」
「話はわかった。GPS頼りに僕もシンくん追いかけるから、キンダカたちにも連絡して赤尾も追いかけてよ!!」
そう言うと南雲は電話を切った。
キンダカに早く連絡して私も追いかけないと!!
シンside
一定の距離で俺の様子を見ていることが分かり、ここで騒ぎを起こして一般人が巻き込まれることにならないようにと思って、赤尾をうまく巻いてこれたのは良かったけど思った以上に人数が多い!!
休日でもこの仕事柄銃は普段から持ち歩いてるけど、俺は多数戦には向いてないのは分かってる。とりあえずもう少しで倉庫街に着く。そこでどうにか倒すしかない!!
「おっと、もう逃げるのはやめたのか?」
「…お前ら誰だ?俺のことどこで知った?」
「あぁ、なるほど。噂通りエスパーが使えるんだな。」
「質問に答えろ。俺のこと誰から聞いた!?」
「俺らのボスってところか?ま、これから会いに行くんだから自分の目で見て確かめろ!」
その言葉を合図に相手の仲間が襲ってきた。
エスパーって知られてる手前隠す必要もないことからなんとか銃とともに戦っていくが、やっぱり人数が多すぎる…。
弾も切れてしまったし、一回身を隠すしかない。
身を隠そうとした瞬間、いきなり殴られ、受け身も取れずそのまま壁に激突した。今、何が起きた?気配も思考も感じなかった…。痛みを耐えながら意識を向ける。
「お前、相手が考えてる時だけ思考が読めるんだろ?だったら何も考えずに気配を殺せば問題ないよな〜」
なるほど…。俺のエスパーの使い方がわかってるみたいだ。
どうにか逃げないとと頭を回転させるがさっき壁に衝突した時、変なぶつけ方をしたみたいで左肩と足が思うように動かない。動かそうとすると激痛が走る。
「あ、悪い悪い。力加減したつもりだったんだが、思った以上に吹っ飛んだもんだから〜どっか痛めた?ま、都合がいいや。」
やばいやばいやばい。どうする?相手側の情報が何一つない。ここで捕まったらどうなるかなんて考えたくもない。
南雲side
本当にもう!!!
シンくんは自分のことになるとなんであんなに蔑ろにできるんだろ?あんなに自分のこと大事にしてって伝えたのに!!
GPSの反応は倉庫に着いたところで動かなくなった。
倉庫に近づくにつれ、敵だろうものが倒れている。
ここで向き合って戦ったんだ。
自身の気配は消し、中の気配を伺いながら倉庫の中の様子を伺って、言葉を失った。
瞬間的に駆け出し、今にもシンくんに触れようとする相手を蹴り飛ばす。
「シンくん!シンくん!!大丈夫??」
「……南雲?なんでここに、、、」
「赤尾から連絡もらった。シンくん、バカなことしたね。」
「ご、ごめん……でも!」
「でもは聞かない。覚悟しときなよ。その前に、シンくんのこと虐めたのは君?」
「誰かと思ったら、最近噂のorderか?」
「わあ!僕の蹴り受けといてまだそんなに喋れるんだ〜。君、すごいね〜 でも、やりすぎだよ。」
「お前はどうでもいいんだよ。後ろのエスパーのガキをよこせ!」
「君にはあげられない。でも、僕とっても優しいから君たち側の情報をくれたら殺し方選ばせてあげるよ。」
「ハッ!敵に情報渡すわけねぇだろ!」
「そっか〜 残念。じゃあ、もういいよ。バイバイ」
ナイフで相手の首を掻っ切り、相手が確実に死んだことを確認する。周りの気配も確認し、他に敵はいないことが分かると再度シンくんと向き合う。
シンくんは自身がやらかしたことは理解していても、きっと迷惑をかけたとしか思っていないだろう。さて、どうしたら良いものか…。まずは、怪我の具合を見なければ…。
◇◇◇
「エスパーくん、無事か!?!?」
「あ、赤尾〜、遅いよ〜」
「悪かったって…エスパーくん、もしかして重症?」
「骨折まではいってないけど、重度の打撲ってところかな〜?多分受身取れずに壁に衝突したんだと思う。相当痛がってたから。今は安心したのかな?気を失ったみたい。」
「はぁ〜何はともあれ、無事で良かったよ。助かった。」
「もちろん赤尾にも責任はあるんだけど、それよりもシンくんの意識改革が最優先事項かな〜。今回のも心配かけたより迷惑かけたって思ってるよ絶対に。」
「あぁ、確かに。それはなんとなく分かるわ。とりあえずキンダカには連絡するから病院連れてくか?」
「……そうだね。いつまでもここには置いておかないし、キンダカの部下の〜後藤さんだっけ?あの人に車回してもらおう。」
「…そうだな。どこから情報が漏れたのか分からないうちは信用できるやつにしか頼れないしな。」
その後10分もしないうちにキンダカを乗せた後藤さんの車がついた。シンくんをなるべく安静な状態を保てるように抱き抱え車へ運ぶ。シンくんの容体を見てキンダカも厳しい表情をしている。
きっと、勝手をして怪我をするのは初めてのことではないのだろう…。こんなに心配をしてくれる人がたくさんいるのに、どうして気づかないのだろうか…。シンくんからは本当に目が離せないよ。
あの事件から一月が経った。俺の怪我ももうほぼ完治と言っていい。あれからキンダカさんをはじめ南雲も坂本も何やら俺に対してすごく過保護になった気がする。でも、殺し屋ならこんなことくらいよくあるだろ?と思うのだが…。
怪我の具合が良くなってからは普段通り任務を受け持ったり、暇な日はレオたちの猫の集会に混ざり情報収集したり、JCCに顔を出し、佐藤田先生から体の動かし方を学んだりとそれなりに充実した日々を送っていると思う。
そんな生活を送っている中、キンダカさんからorderの任務について話があった。ついに俺が求めていた情報のようだ。どうやら坂本が受け持つことになったようだがこればかりは俺も譲れない。俺自身でも着々と情報を集め、近場にいることは分かっていた。もう少しで辿り着けそうだというところでこの任務だ。俺が求めていた情報とは親父こと安藤丞についてだ。何を隠そう俺がラボを出た理由だからだ。
「キンダカさん!親父…安藤丞に関する任務がおりたって本当ですか!?」
「あぁ。シンが探していた人物で間違いないか?」
「おそらく間違いないと思います。俺が集めた情報では大体の居場所も掴めてるんですが、どうやって接触しようか迷ってたんです。」
「ほお、さすがだな。んで、今回のこの任務は坂本に命じられたものなんだが、内容が抹殺から保護に変わった。おそらく麻樹が関係していたんだろう。」
「……保護。そっか、殺さなくていいんだ…。」
「……シン、お前が麻樹を追い出すのに一役買ったからこその成果だろう。よかったな。誇れ。」
「…はい。それで、あの、キンダカさんにお願いしたいことが…」
「どうせこの任務に参加したいとかだろう?いいぜ。坂本には俺からも話を通してやる。」
「…っ、ありがとうございます!」
「まぁ、もしかしたらおまけがつくかもしれないけどな…」
「??」
「いや、なんでもない。参加するならこの資料読んで坂本と合流しろ。」
「はい!ありがとうございます!!」
そっか。親父本当に殺されないで済むんだな。親父は殺連が追う理由が変わったこと知ってるかな?おっさんから聞いた話でしか知らないからどんなやつかは分からないけど、俺のことどう思ってるんだろう…。
俺が集めた情報通りだいぶ近くに潜伏してるみたいだけど、とりあえず早めに坂本のとこに行くか。
「坂本!お前これから任務だろ。俺も参加するから。」
「シン?あぁ、さっきキンダカから連絡があったな。」
「だろ?てことで早く行くぞ!」
「えぇ〜もう行くの?2人とも待ってよ〜」
「??なんで南雲がいるんだ?」
「?シンがいるからじゃないのか?」
「うん!シンくんがいるからだよ〜」
「????」
「シンくん、すっごく可愛い顔してるよ〜」
「シン、南雲が来ること知らなかったのか?」
「知らなかった…なんで来たんだ?」
「もう!言ったでしょ〜シンくんがいるからだよ〜」
「あぁ、もうよく分かんねぇけどいいや。早く行くぞ!」
「「うん/あぁ」」
なんか、1人増えたけど、俺の優先は親父に会って保護すること。そして、俺のことを聞くことなんだから気にしてなんかいられない。
逆に、1人増えたことでより動きやすくなったと思えばいいか…。
猫から集めた情報をもとに現在最も確率の高い場所を目指して歩みを進めていく。歩きながら周辺の人の思考を読み取っていく中で、(ったく 安藤さん人使いが荒いぜ)1人関係のありそうなやつを見つけた。
(安藤、殺連、追手…確実に親父のことだ)
「なんだ、あいつ安藤の関係者か?」
「ところでさ〜なんでシンくんはその安藤って人追ってるの〜??」
「ああ。この先のクルーズ船にいるみたいだ。んで、なんで追ってるかって?安藤が俺の親父のはずだからだよ。」
「へっ?シンくんのお父さんなの!?」
「でも、お前の名字朝倉だ。安藤じゃない」
「朝倉は俺を育ててくれたラボのおっさんの名字もらったの。そこから抜け出す時に俺の個人情報を見つけて、そこで安藤丞って名前を知った。おそらく俺の親父ってことも…。」
「ふ〜ん。まさか、シンくんその人に会うためにこっちの世界に入ったの?」
「自分を捨てた親にか?」
「あぁ、そうだよ。俺のこの能力を理解して受け入れてくれるんじゃないかってその時は思ってたんだよ。まあ、キンダカさんに拾われるまではまだこっちに片足突っ込んだばっかりだったけど…」
「そっか〜 じゃあ、シンくんがお父さんとお話しできるように仕事早く終わらせよっか!」
「よく分からんが、仕事はする」
無駄に自分のこと話しちまった…。まあ、任務に支障はないからいっか。でも、あの感じだと親父まだ殺されるって思ってる気がするけど、大丈夫だろうか…
◇◇◇
クルーズ船の内部はやはり人が多く若干煩わしく感じるが、まあ、人が多いところではいつものことだしすぐ慣れるだろう。思考を頼りに歩いていくとすぐに親父を見つけることができた。てか、あれ?今すぐ止めないとマジで抹殺対象になりかねない状況じゃね?フローターなんで捕まってんだよ!!
「捕まってるあれって、フローター?」
「今にでも殺されそうだけど、、、」
「やっぱりそうだよな!?やべぇ、マジで抹殺対象に戻っちまうじゃんか!!」
「シンくん行ってきなよー」
「対話時間くらい稼いでやる」
「あぁもう!!親父、止まれ!!!!!!」
親父に再会して第一声が"止まれ"ってなんなんだよ!!親父の動きを止めた一瞬で南雲はフローターを回収。坂本は近くにいた奴らを遠ざけてくれた。
「はぁ〜間に合った…」
「お前、、、」
「親父、やっと会えた。」
「俺に子供はいねぇ」
「安藤丞。安藤シンの父親でラボの朝倉のおっさんの昔馴染み。俺を預けた後は殺連からの逃亡生活。ここまでくるのに4年以上費やしたじゃねえか!!」
「……なんで今更会いにきた?俺を恨んでんのか?」
「最初は能力を手に入れた俺を受け入れてくれる奴が欲しくて親父探しを始めたんだけど、今はただ単純に親父に会って話がしてみたかったんだ。」
「それで?俺には会っただろ?満足か?俺はお前に会いたくなかったよ。お前のことを恨んでるからな。テメェのせいで殺連を追われるハメになったんだ!おかげで全てを失った。」
「いいや。まだ話したいこと、聞きたいことがある。俺のせいで追われることになったって、どういうこと?ま、それは後ででいいか…。それと、親父はもう殺連に追われることはない。逆に保護対象になってる。知ってた?」
「はあ?抹殺対象としてこの数年終われてたのになんでいきなり保護対象に変わってんだよ?」
「殺連内部の話はやっぱり知らないか…。親父を追ってたのは殺連上層部にいた麻樹って奴だよ。今回のゴタゴタで麻樹は殺連から追われる身となった。なんで麻樹が親父を追ってたかはまだ情報不足で分かんないんだけど、親父なら知ってるよな?」
「あさき…あぁ、麻樹か。アルカマル施設に関係があった奴だな。今の殺連が本当に俺を殺さないって言い切れるのか?」
「言い切れるよ〜。会長とその側近の立場の人たちとシンくんは繋がってるし〜信頼されてるからね!というか、シンくん!!お父さん、シンくんに似てるね〜」
「確かに。シンが大人になったらこんな感じになるのか?」
「南雲、坂本。話に急に混ざってくんなよ。他のやつは?」
「フローターなら逃したから運が良ければ無事だと思うよ〜」
「他のやつならとりあえず殺してはいないが、あっちで伸びてる。」
「ならいい。てことで、親父。とりあえず俺たちと殺連本部まで行くぞ。直接会長に会って話し合った方が親父も納得できんだろ?」
「……分かった。とりあえずはお前の話を信じてやる。」
「よかった。あっ!後、朝倉のおっさんにも会えよ!友達だったんだろ?俺のこと押し付けた後連絡も取れてなかったみたいだし…」
「はぁ〜。アイツに会うのはちょっと…」
「ま、とりあえず船降りよっか!ね、シンくん。」
「あぁ、そうだな。親父もそれでいいか?」
「あぁ。」
「それと、いろいろ終わったら俺も親父と話したい…。」
「……考えておく。」
「うん。」
親父の仲間とも合流し、救命ボートを勝手に使用してクルーズ船から港へ戻った。その間に親父の仲間と一悶着起きそうになったが、親父が一言伝えたらすぐに対峙をやめてくれた。親父、あの変なやつといつから一緒に行動してたんだろう?安藤さんの匂いが〜とかなんとか、変なことばかり考えてる。違う意味でヤバいやつかな?
「ところで、シン。こいつらは誰だ?殺連の殺し屋にしてはなんというか…」
「親父、orderって知ってる??」
「order…あぁ、殺連の秩序な。なんでお前がそんな奴らと行動してんだ?」
「ラボ飛び出した俺を拾ってくれたのがorder創設者の1人なんだよ。その人と一緒に行動してるうちに学生だったこいつらと出会って、この2人は今はorderの一員。」
「そう!僕それなりにやれる方だったのに12歳のシンくんに負けたんだ〜。シンくんすっごく強いんだよ〜」
「あぁ、俺も一対一でシンに負けた。」
「なんで南雲は嬉しそうに話してんだよ。普通負けたら悔しくね?」
「えぇ〜?だって、それがきっかけでシンくんと出会えたし、今も一緒にいられるから〜」
「俺もシンと出会えたのは嬉しい。」
「坂本まで何言ってんだか…」
「……とりあえずお前がそれなりに強いってことと、そこの2人、南雲?とかいう方が特にか。おかしいっていうのは分かった。」
「あ、親父もやっぱり思うよな!?南雲出会った時からなんか変なんだよな〜。なんていうか、距離が近い??」
「あぁ、俺も身に覚えがある。なあ、イカリ。」
「ひどいなぁ、安藤さん!私と安藤さんの仲でしょ〜」
「親父、こいつ距離が近いとかいう前にやっぱり変なやつじゃん!!」
「?出会った時からこんなやつだったぞ?」
「シンくんもだけど、お父さんも鈍感なんだね〜」
「南雲、お前人のこと言えないだろ。」
「え?なんのこと〜??」
そんなことを話しているうちに港へ着いた。
さて、このまま本部に連れて行けばいいだろうが、とりあえず周りに気をつけないと、な。あれから麻樹が何をしているかは分からない。どこにいるかも分からない。
南雲と坂本、それに親父の仲間?もいるから大丈夫だろうが、念には念を込めて、周りの様子は常に警戒しておくに越したことはないし。
それに、会長たちとの話が終わったら俺も親父と話す時間もらえるか頼んでみよう。朝倉のおっさんにも連絡して、親父のことも伝えないと…