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あの日の光景を、未だに覚えている。
銃声と共に広がった錆び付いた臭いと鮮血。…そして、硝煙が出ている銃口を下げる愛していた人。
心臓が忙しくなく暴れている。口元を抑えていなければ、叫び声と共に胃の中のものを内臓ごと吐き出してしまいそうで。
だから、だから、ユキナリは。
***
助手であるユウトに叩き起こされたのである。
「痛い! すごく痛い!」
彼はユキナリ。探偵である。
「ぐうたら寝てるポンコツなりが悪いだろ! 汽車に乗り遅れるっての!」
彼はユウト。本人は認めていないがユキナリの助手である。
彼らは、霜月探偵事務所の奪還のために、とある殺人鬼を逮捕しなくてはならなかった。
***
「引き払い、ですか」
「非常に言いにくいのだけれど…あまりに依頼が来ていないみたいだから…」
再来月までに家賃が手に入らないのならば、事務所を取り壊されると、弁護士のミホは絶望のあまり真っ白になっているユキナリにそう言った。
「落ち込むのはまだ早いわ。再来月まで時間があるもの。その間に依頼が来て、報酬を手に入れて、家賃を払えば良いんだから」
「でも依頼が! 一年前から依頼が来ないんです!」
そう、全くと言っていいほど来ないのである。
飼い猫捜索も、浮気調査も。なーんにも来ないのである。ユキナリはこの一ヶ月間もやし生活だった。節約に節約を重ねて、もはや、擦り切れそうである。
「銀行に借りるのは…」
「信用できないって言われて…」
「そうなの…困ったわね」
さすがのミホもこれにはお手上げだった。しかしシクシク泣いているユキナリを放っておくわけにもいかない。この仕事を紹介したのはミホである。
ユキナリに探偵としての類稀なる才能を感じ、進めたのだ。実際に彼が初めて解決した殺人事件は大きな話題を呼び、注目され、仕事が舞い込んだのである。…今はびっくりするほど平和だが。
その時、事務所の黒電話が鳴った。
「あっ、す、すみません…」
「良いのよ。出て?」
ユキナリが出した安物の紅茶を飲んでいるミホにぺこりとしてから、ユキナリは受話器を取った。
「もしもし、こちら霜月探偵事務所…えっ、ソウシロウさん?」
ミホがどうかしたのかと、カップをソーサーに置いた。
「はい、はい分かりました…」
かちゃんと、受話器を置いたユキナリは驚いたような顔をして、ミホの方を見た。
「どうしたの?」
「い、依頼が…ソウシロウさんから…」
「すると…きっと殺人事件ね。おそらく一筋縄ではいかないでしょうね」
「そっ、そこまで分かるんですか!?」
「ふふっ! 女の勘よ」
パチリ、とミホは得意げにウインクした。ユキナリはすごいな女の人の勘…と思っていた。
その依頼から、どんな惨劇に引き込まれるかなんて知らないで。
***
白が基調とされた警騎隊本部。
そこの食堂で二人は今回の依頼について、席に座り、パンケーキを傍に話をしていた。
「ごめんね〜急に呼び出しちゃって…」
警騎隊隊長、ソウシロウ。実は見た目に反して、とても偉い立場の人間なのだが、ユキナリは知らなかった。
「依頼の件ですよね」
「そうそう!」
ソウシロウが言っていないためである。ユキナリに自分に対して他人行儀になられるのは、個人的に嫌だからであった。
「君に頼みたいのは、狼遊戯タウンに出没する殺人鬼について調査してもらいたいんだ」
「お、狼遊戯町…」
ユキナリの表情が曇ったのをソウシロウは見逃さなかった。
「ん? あ、こことは違って長閑な自然と水と畑が豊富な場所だよね」
ど田舎であるとオブラートに包んで言っている。
「…」
ユキナリが自分のジョークに何も反応しない。いつもはツッコミを入れてくれるのにと思いつつ、ソウシロウは真剣な表情になる。
「…訳ありって感じ?」
「…そう、ですね」
顔色が悪い。もしかしたら何かしらのトラウマがその町にあるのかもしれない、とソウシロウは推測した。
「あくまでもこれは依頼。…君は別に断ってくれてもいいんだよ」
だから、逃げ道を用意したのだが…ユキナリは首を振った。
「…そうするわけにもいかないんです。久しぶりに来た依頼を不意にしてしまったら、俺の事務所なくなっちゃうんで…!」
「そ、そんなことになってたの!?」
だから奢ると言った時に目を輝かせていたのか、と合点がいった。
「お願いです!依頼を受けさせてください!」
ぺこりとするユキナリに若干苦笑いしたソウシロウだった。
「受けてくれるのならこっちからは何もないけど…あ、でも、びっくりしたなあ」
「へ?」
「ユキナリくん、殺人鬼とか怖がりそうなのに」
「ああ、殺人鬼…えっ、殺人鬼!?」
「あっ、スルーしてただけか」
変なところで天然だなあと思うソウシロウだった。
「いやでも食費、家賃、水道代…その他諸々のためにも、その依頼、受けます!」
キリッとした表情と共に、ぐぎゅるるる…という腹の音が響いた。
「…とりあえずパンケーキ食べようね?」
腹が減っては戦はできぬって言うしね。
笑いを堪えてソウシロウがそう言えば、ユキナリは赤面しながらパンケーキを食べ始めた。
***
ぽっぽー、と汽車が鳴る。
黄金色の畑と水田がどこまでも続き、秋の風が窓の外で枯れ葉を吹き飛ばした。
ユキナリは、何故かは分からないが胸騒ぎが止まらない。乗り換えを重ねて、助手のユウトと共に、徐々に故郷へと近づく。それに何故か、心臓がざわついて仕方なかった。
「…ちょっと、大丈夫なの?」
「へっ…?」
「いつも間抜け面してんのに、今日はなんか、違うから…」
「そう…見える?」
「依頼受けたって言ってきたときからなんか変だよ。いつも変だけど」
一言余計であるが、彼の見立ては正しい。実際にユキナリは緊張している。
「ううん、大丈夫だよ」
今はまだ。
彼に会いさえしなければ。
そんなユキナリを嘲笑うかのように。もしくは不安を煽るように、ドタタッと土砂降りの雨が窓に叩きつけられて、そんな音を鳴らした。
ユキナリ、事務所でミホから再来月までに滞納していた家賃を払わなければ事務所が引き払われる。ちょうど黒電話が鳴り、そこからソウシロウの依頼を聞く。
次の日、警騎隊本部で依頼を聞き、狼遊戯タウンと知り、複雑な表情を浮かべるが自分の居場所を守るために依頼を受ける。その後、ユウトに連絡する。
そして、列車に二回乗り換えして、汽車に乗り、狼遊戯タウンに着く。
しかしど田舎の狼遊戯タウンにホテル、宿泊施設なんて無い!!!
キレるユウトと膝から崩れ落ちるユキナリに話しかけてきたのは、狼遊戯タウンの警騎隊員のショウマだった。自分のところで良ければ、と協力的に申し出る。
ショウマが知っている情報は、大きく分けて三つ。
・殺人鬼は、最初の頃からずっと老若男女全員を狙っていたが、その中に警騎隊関係者がチラホラいること。
・神出鬼没で現行犯逮捕しようとしても必ず逃げ切られる。
・殺人鬼が出る時には、深い霧が出る。
これらが0日目に得られた情報だった。
探索一日目。
ユキナリとユウトはパン屋で幼馴染みのトモヤ、花屋の森姉弟…そして、診療所でコウに会う。
しかし、ユキナリはコウの姿を遠目で確認するとユウトに助手として代わりに聞いてほしいと、青ざめた表情で必死に頼み込む。ユウトは首を傾げながらも、仕方なくコウと話した。
彼らと話して得られた情報は、
・殺人鬼は背の高い、赤と黒のオッドアイの男。不気味に笑っていて、刃物を持っている。
・最近はずっと女性を殺している。
・必ずルナーシーという花を添える。
・ユキナリはコウに対して怯えている…?
探索二日目。
ユキナリとユウトは些細なことから口論をしてしまい、別行動をすることになる。ユキナリはショウマと行動し、ユウトはコウとペアを組むことになった。
ショウマに自分の愚痴を話して行くうちにユキナリは落ち着き、ユウトはコウの裏の職業…情報屋について教えられ目を輝かせる。
ユキナリが得た情報は、
・トモヤの作るパンはこの町で大人気。本人も女子に人気。
・コウは無愛想だがおばあさんには優しいので孫扱いされている。
・ショウマは聞くまでもない。
一方、ユウトが得た情報は、
・コウは昼間は診療所の経理担当兼ね医者だが、夜は情報屋。
・殺人鬼についての情報を多く得ているが、ユキナリに必要以上に現れる気はないので、ユウトの前にだけ現れる予定。
・被害者たちの検死をしたのはコウ。
探索三日目。
謝るタイミングが掴めず、ユキナリはユウトの探偵事務所にいる時よりも生き生きとしている様子に、少しだけ沈んだ気持ちになる。
ショウマがどうした?と問うと、ユキナリはおずおずと答える。
得た情報は、
・ユキナリは昔、町から出たばかりの頃、通り魔に襲われそうになっていたユウトを助けた。
・そのすぐ後からユウトが探偵事務所を建てたばかりの頃に助手になりに来た。
・だけどそんなにユキナリのことを慕ってくれてはいない。
沈むユキナリに、ショウマは励ますように頭をぽんぽんと優しく叩く。
「…大丈夫だって。ユウトくんはアレだ。ツンデレってやつだろ」
あまり参考にならない言葉と共に。
一方、ユウトはコウにどうしてそこまでユキナリに会いたがらないのか、どうしてユキナリはコウに対して怯えているのかと問いかける。
「好奇心は猫を殺すと聞いたことはないか?」
とは言うものの、コウはポツリポツリと噛み締めるようにユウトに答えてくれた。
・ユキナリとコウは夫婦だった上に、一緒に暮らしていた。
・コウの裏の仕事を知ったユキナリは逃げてしまった。
・コウは怒っているどころか謝りたい。ユキナリが嫌がるので無理にとは言わないけど、話がしたい。
「…コウさんはユキナリこと、今でも愛してるの?」
「ああ、もちろん」
「そっか…僕から説得してみよっか?」
「良いのか?」
「もちろん! だってコウさんはすごい人だし!」
その日の夜。
ユキナリとユウトはまた喧嘩する。ヒートアップしてしまい、ユウトはユキナリに対して言ってはいけない言葉を告げてしまう。
「人殺しのくせに!」
それは、本当にユキナリに言ってはいけない言葉だった。
「…ごめんね。俺、部屋戻ってるから」
ユキナリが部屋に帰り、不貞寝する。
得られた情報。
・ユキナリは人を殺したことがある。
探索四日目。
朝。ユキナリがいなくなったユウトを探しに行き、…発見してしまう。
惨殺され、まるで蜘蛛の巣に張り付けられたように吊し上げられたユウトの遺体を。
ユウトを殺され、自分を責めるユキナリ。
それを見かねたショウマが激励する。
「あのさ、ユキナリくん。俺、二人の関係よく知らねえからはっきり言うのはアレなんだけどさ、今こうしている間にも殺人鬼はユウトくんみたいに誰かを殺してるんだ」
「ユキナリくんは探偵。今ここにいるのは、その殺人鬼をとっ捕まえるためだろ?」
「ユウトくんを弔ってやるためにも、今頑張らなきゃいけねえんだよ」
「出来るよな、ユキナリ」
その言葉に奮い立たせられ、ユキナリは殺人鬼を探すために奔走する。
さあ、殺人鬼はだーれだ?
探索0日目から四日目の朝まではチュートリアル。
ユキナリは、四日目の昼間から一人で行動する。朝、昼、夜の3ターン。残り七日後に満月と霧が溢れるのでそれまでに真相を掴まなくてはならない。
体力ゲージと精神ゲージがあり、ゼロになるとゲームオーバー。
パン屋 ともだち
トモヤがいるパン屋。
リーズナブルなお値段で体力、精神ゲージを回復させてくれる効果を持つパンを売ってくれる。
お願いするとトモヤが同行してくれる。
花屋フォレストファミリーズ
森姉弟がいる花屋。
花の種を買うと育てられ、花が咲いたのを持って行くと花束を作ってくれる。作ってもらった花束はキャラクターの好感度を大幅に上げてくれる。
お願いするとリンタロウが同行してくれる。
米森診療所
サトル、リンカ、イオリ、コウがいる診療所。
怪我をしたらここで回復させてもらえる。
お願いするとコウが同行してくれる。
赤村交番
ショウマがいる。初日はユウトと共に居候させてもらっていた。
お願いするとショウマが同行してくれる。
図書館
司書のオサムがいる。
事件に関係するデータや、物語を読むことができる。
オサムの好感度を上げておくと、精神ゲージが大幅にアップする。
幽霊屋敷
小宮兄妹が住んでいる普通の家。見た目がアレなことから、お化け屋敷だと思われている。
チエを殺人鬼からユキナリが助けたことから、ここに居候することになる。
目が覚めて、ユウトがいなかった。
ざわり、と心臓が忙しなく動き始める。縋るように黒電話で、診療所に電話をかけた。
「ユウトくん?…ここには来ていないけど…」
その返答に、嫌な予感がユキナリの背筋を駆け抜ける。冷や汗が止まらない。電話を切って、ユキナリは交番を飛び出した。
「ユウトくんっ…!」
自分の想像が、現実になっていないことを祈るように、その名を呼ぶ声には、懇願が滲み出ていた。
***
…ユキナリのそんな祈りを嘲笑うかのように、世界にたった一人だけの、大切な助手は。
「あ、あ、あああ…!」
まるで、蜘蛛の巣にかかった蝶々のように、吊し上げられていた。ユウトを中心に無数の糸から、真紅の雫がポタポタと涙のように落ちていく。
そこから、どうなったのか。ユキナリは覚えていない。ただ、ユキナリの叫び声を上げた少し後にショウマが駆けつけてくれて、泣きじゃくるユキナリを落ち着かせるのは大変だったと苦笑いしながら教えてくれた。
それを聞いて、
「…全部、俺のせいだ」
ユキナリの目から、涙が溢れる。
「俺が、あんなこと言ったから」
言葉が溢れる。
「俺が、すぐに謝らなかったから」
後悔があふれる。
「俺が、ユウトくんを、巻き込んでしまったから…!」
そう言って、泣き崩れるユキナリに、ショウマは何かを考えるように静かに見下ろしていたが、目線を合わせるように屈んだ。
「あのさ、ユキナリくん」
いつものような冗談はない。
「俺、二人の関係よく知らねえからはっきり言うのはアレなんだけどさ、今こうしている間にも殺人鬼はユウトくんみたいに誰かを殺してるんだ」
霧が出ようが出まいが、殺人が起きるようになり、外部からの助けはトンネルを爆破されたことによって、一週間ほどかかるようになった。
「ユキナリくんは探偵。今ここにいるのは、その殺人鬼をとっ捕まえるためだろ?」
否が応でも真実を突き止めるのが、ユキナリの役目だと、ショウマははっきりとつげる。
「ユウトくんを弔ってやるためにも、今頑張らなきゃいけねえんだよ」
犠牲から手がかりを得て、殺人鬼を突き止める。それは、他でもないユキナリにしか出来ないこと。
「…———出来るよな、ユキナリ」
その言葉には、確かな確信が込められている。
「…はいっ!」
だから若菜色の瞳に灯るのは、決意。
そう、今この瞬間から、殺人鬼と探偵の戦いが始まったのだ。
あらすじ その③
四日目の夜。情報収集に思ったより時間がかかり、交番に戻るのが遅くなってしまったユキナリ。
また嫌な予感がして、霧が深くなり…突然叫び声が聞こえてくる。
声のした方へと走ると、殺人鬼に殺されそうになっているチエを発見し、ユキナリはその場に落ちていた石ころを投げこちらに注意を寄せた。
しかし、こちらに気がついた殺人鬼は、ユキナリを殺そうとするでもなく、チエを殺そうとするでもなく、霧が晴れると同時に消える。
何はともあれお礼を言われ、とりあえずは交番に同行してもらうと、…交番は何者かに襲撃され、人が住める状態ではなくなっていた。それを見て、ユキナリは明らかに自分が狙われたのだと確信する。
普通に自宅があるショウマはともかく、ユキナリには家が無い。ショウマをこれ以上巻き込むわけにもいかなかった。
ユキナリが困り果てていると、お礼も兼ねてチエから兄と暮らしている幽霊屋敷に匿われることになったのであった。
・ルナーシーの花冠
被害者の頭部に必ず残されているもの。しかしユウトの遺体には残されていなかった。
体内に取り入れると発狂してしまう強力な毒を持つ。
見た目は青白く暗闇でもほんのり光る可憐な花。
ただ触るだけならば無害。
・過去の新聞記事の切り抜き
新聞記者のマキが殺人鬼事件についての記事をまとめたもの。
被害者は老若男女必ず、夜の霧の中で多種多様な殺し方をされ、花冠が頭部に残されるという内容が共通して残されている。
・実験施設の爆破事故
三年前に町外れの施設で起こった事故。非人道的な実験が行われていて、ユウヤもそこにいたらしい。
・古びた研究記録
所々掠れていて読めないが、『魂と呼ばれるものと能力を他の器に入れる』という研究についての概要が書かれていた。成功したが失敗したかは不明。
・『集真藍の本』
禍々しい紫陽花が表紙に描かれた本。所謂、本当の黒魔術が書かれた本で、効果は本物。
実験施設でそれもまた研究されていて、ユウヤの魂の移動もこれが関係している。
ちなみに『それ』は、意思を持ち、魂と融合していく。つまり、ユウヤの魂が入ったAがBに殺されたとすると、今度はBの中にユウヤが入る…というシステム。しかも厄介なことに、能力の引き継ぎが行われるため、なかなかに凶悪。
次の満月が来る前に、自らの手で死ぬ以外に呪いを止める方法はない。
一週後、つまり最終日の七日目に殺人鬼と相対する。
キーアイテムを集められず、殺人鬼が誰だか分からなければ、強制的に殺人鬼に襲撃されて行方不明エンド。真相は霧の中。
キーアイテムを集め切れて、殺人鬼が誰か分かっても、選択肢によればバッドエンドになる。
例えば、
・トモヤと最終日に同行していた場合、ユウヤが出てきそうになっていて、「逃げてっ…!」と言われた時に逃げなかった場合、完全にユウヤに成り代わってしまったトモヤに即座に捕まって、『お母さん』にされる…というバッドエンド。
・ミサキを殺人鬼によって死なせてしまっていた場合、リンタロウが復讐鬼になり、ユキナリを利用してでもトモヤを誘い出して殺した後、「ごめんねっ…姉さん、ユキナリくん…」と泣きながら言われ、リンタロウは逮捕されたのだが、呪いによって新たな殺人鬼と化してしまう…というバッドエンド。
・トモヤを殺人鬼として、助手のユウトを殺した仇として殺害してしまい、呪いによって殺人鬼と化してしまったユキナリを「…君を、殺したくはなかったんだけどな」と切なげな目で撃ち殺し、その亡骸を抱いて静かに泣いたショウマは笑いながら自らの手で死亡する…というバッドエンド。
条件は、
・ショウマとなるべく行動し、好感度を最大まで上げる。
・トモヤの好感度を最大まで上げる。
・森姉弟の好感度を最大まで上げる。
・キーアイテムを全て集め、真相を暴く。
「ゆ、ユキナリくん…帰っちゃうんですか?」
チエが荷造りをしているユキナリにおずおずと話しかける。
「…はい、いつまでもお世話になるわけにはいきませんから」
事件が解決されたのならば、お役御免である。失ったものは大きいけれど、それでも抱えていかなければならない。
それに、爆破されたトンネルも直されたのだ。今汽車に乗って帰らなければ、ソウシロウを困らせてしまうことになり、探偵事務所の引き払いを阻止できなくなる。
「お、お兄ちゃんはいくらでもいて良いって言ってくれてますし、わっ、私も家族が増えたみたいで、嬉しいんですが…!」
「俺も、嬉しかったです。でも、探偵事務所に帰らなきゃ」
一人に戻ってしまったけれど、あの場所が自分の居場所だから。
ここでの日々…たった一週間だが、本当に楽しかった。本当はここにいても良いのならいたかったけれど、ユキナリはそれを選ぶわけにはいかない。
「うう…ぐすん…」
「なっ、泣かないでくださいチエさん! 別に今世の別れじゃないんですから! 手紙も書きますし、休みが入ったら遊びに来ます!」
「ほ、本当ですか…?」
「嘘じゃありません!」
仮に嘘ならチグサに笑顔の圧力をかけられる。穏やかな人ほど怒るときは本当に怖いものである。
「チエ、ユキナリくんの邪魔をしちゃダメだよ」
チエを慰めていたら、チグサが来た。どうやら騒がしさを聞きつけたらしい。
「お、お兄ちゃん…!」
「あっ、チグサさん…」
「それからユキナリくん、ちゃんと遊びに来てね」
「あ、はい!」
これも聞こえていたらしい。
言質は取ったよ、と爽やかな笑顔で言われ、ユキナリはどこか嬉しそうに苦笑するとチエは涙がぶわっと出て、チグサとユキナリは泣き止ませるのに必死だった。
***
殺人鬼は、トモヤだった。
否、正確に言えばトモヤは、殺人鬼であるユウヤの魂を埋め込まれたため、殺人鬼になってしまった。
彼の最期をユキナリは鮮明に覚えている。
赤い月明かりが差し込む、廃れた教会で、殺人鬼と探偵は隠れ鬼をしていた。身体能力も超常的な殺人鬼と化したトモヤと、ただの探偵であるユキナリではあまりにも分が悪かった。つまりは時間の問題だったのだ。
鬼に見つかって、殺されるのは。
呪いの効果か、白髪に赤と黒のオッドアイになったトモヤが、見つけて捕まえたユキナリを『お母さん』として愛そうとした時、
「お願い…トモヤくん…! 目を覚まして…!」
必死なユキナリの声が届いたのか、トモヤの包丁を握る手が止まり、震え始めた。
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」
そして、金切り声のような咆哮を立てたかと思うと、ユキナリから逃げるように飛び退いた。
「と、トモヤくん…?」
白髪に本来の焦げ茶が浮かび、黒い瞳だった片目は青く染まり、血涙が溢れていながらも、トモヤは虚勢を張るように微笑んだ。まるで、昔みたいに。
「…———————君だけは、絶対に守るから」
そう、言って彼は、
自分の首を持っていた包丁で、掻っ切った。
「と、トモヤくん…!!!」
ユキナリが駆け寄ったところで、出血は止まらない。
「そんな、ダメ、ダメだ、ダメだよ…! トモヤくんはトモヤくんだよ。君は人殺しなんかじゃない…! 君は俺の、大切な友達だよ…!」
薄れゆく視界の中で、泣きじゃくるユキナリのその言葉を聞いたトモヤは蒼玉の両目から感動の涙を零した。
「良かっ…た…僕ら…まだ…友達…だったんだ、ね…」
それが、彼の最期の言葉だった。
そして、ショウマたちが駆けつけたときには、全てが終わっていたのである。
***
時は遡り、もう一人…否、一組の犯人である森姉弟。
彼らは両親をユウヤに殺された。当時の警察官たちによる職務怠慢で、野放しにされていたことによって、彼らの両親は命を落とすこととなった。
そして、ユウヤは罰されることなく、実験施設へと送られ、こうして第二、第三の殺人鬼が生まれる結果となった。
彼らとしては復讐であり断罪のつもりだったのだろう。実際にミサキはトモヤ…というよりは、トモヤの中にいたユウヤに殺されかけたのも事実だ。リンタロウがどんな手を使ってでも、殺さなくてはならないと決意したのも頷ける。
それでも、間違っていたのだ。
「君らのやってることはその職務怠慢した警察官や、あの異常者と変わんねえよ」
珍しくショウマが怒りを向けた。
森姉弟が多くの人を殺害したこと、それによって自分が不利益を被ったこと、ユキナリがトモヤをおびき寄せるための囮として使われることを知ったことが、彼の怒りを起こさせたのである。
「人にされて嫌なことをすんなって習わなかったのか?」
「何もしなかったくせに偉そうなこと言うなよ…!」
リンタロウの強い殺気にも怖気つくことなく、ショウマは続ける。
「そうだな。俺は確かにあの実験施設の警備員だった。あそこで非人道的なこと、いろいろやってたのは…それなりに知ってた」
けどな、とショウマは続ける。
「ユキナリは違えだろ。その子は、殺人鬼に復讐したいわけじゃない。友達を止めに来たんだよ」
そりゃあ、俺だって最初はユキナリに殺人鬼を殺してほしかった。
そうショウマは罰が悪そうに呟く。
「…まあ、なんつーか。情でも湧いちまったんだろうな。あ、殺人鬼じゃなくてユキナリの方な?」
ユキナリがそうしたいって言うなら、俺は止めない。助けてやろうって、決めたんだよ。
「ショウマさん…」
もしも大切な人が犯人だったら。一緒に探索していた時にショウマに問われたことがある。ユキナリは、答えられなかった。その可能性を考えたくなかったからだ。でも、ユキナリは答えを出した。『やるべきことをやる。探偵としても、友達としても』と。
「とにかく、俺が言いてえのはさ、お前らの勝手な八つ当たりにユキナリを巻き込むなってことだよ」
銃を突きつけて、鋭く睨むショウマは動揺を浮かべるリンタロウとミサキに告げた。
「…リンタロウ」
「…姉さん」
銃を強く握りながらも、俯くリンタロウにミサキが諭す。
「やめよう。リンタロウも本当はユキナリくんを巻き込みたくなんて無かったんでしょ?」
ユキナリくんは良い人だから。素敵な友達になれたから。
「私もそうだった。ユウヤが憎い。彼を作った人たちも憎い。ユウヤになってしまったトモヤくんも憎い。でも…ユキナリくんを傷つけてまでしたくなんかなかった」
本当にごめんなさい、とミサキが謝ると、リンタロウの憎悪と憤怒が宿っていた瞳から涙が決壊したように溢れる。
リンタロウから泣きじゃくる子供のように『ごめんなさい』が溢れ、ショウマによって拘束を解放されたユキナリは二人に約束した。
「必ず、この連鎖を止めてみせるから…!」
どうか償うために生きてほしい、と。
***
見送りには、多くの人が来てくれた。
衣食住を提供してくれた小宮兄妹。情報収集を手伝ってくれた双子のリツとイトカ。新聞記事や写真を見せてくれたマキ。図書館で情報をくれたオサム。米森診療所の面々。…そして、ショウマ。
「うう、本当に行っちゃうんですね…」
「おいおいチエ、笑って見送ってやれよ。ユキナリのお姉ちゃんなんだろ?」
「そういうお姉ちゃんだって涙出てたじゃん。目が赤くなってるよ」
「それを早く言えよ!」
「あはは、賑やかですねえ」
「これくらい賑やかな方がいいんじゃない? 湿っぽいのは無しにしましょ? あっ、写真撮ろうよ! みんなで!」
「あれ? そういえば、コウくんは?」
「彼は全員で行く必要性はないって…診療所に残ってるよ」
「ったく、別れの挨拶くらいしろよ…」
「まあまあ」
あまりにも賑やかなものだから、湿っぽい空気は何処かに行ったらしい。記念写真を撮っている内に汽車があと五分で来ることになり、名残惜しくも手を振って汽車へと乗った。
「…あ、ユキナリくん、ちょいと待って」
扉が閉まる前に、ショウマに呼ばれてトランクを置いてからユキナリは振り返った。
「? 何ですかショ…」
ぐい、と引き寄せられて、ユキナリはショウマに頬にキスされた。周囲の面々が驚いた表情をしたり、シャッターチャンス!と写真を撮ったり、叫んだり大騒ぎになった。
「…へっ」
ポカンとした顔のユキナリに、ショウマは悪戯が成功した子供のように笑った。
「唇へは、またここに来たときにな?」
ぽん!とユキナリが赤面し、後退った後、『発車しまーす』と空気を読まない駅員の声がして、扉が閉まった。
「ばいばーい」
「また来いよー!」
「お手紙待ってますから!」
面々の声が遠ざかる中、笑顔を浮かべるショウマの口が動く。
『ま っ て る か ら な ?』
そしてその意味を理解したユキナリは、頭がキャパオーバーしながら蹲る。
「あんなの反則だ…!」
林檎のように顔を赤くして、ユキナリはしばらくの間、頬の感触が忘れられないでいた。
***
「…あーあ、行っちまった」
「やっぱり面白えわ、ユキナリくん」
「なるべく早く戻ってきてほしいんもんだ」
「唇だけで済ます気はねえけど、な?」
条件は、
・単独行動。
・コウ以外の人物(攻略対象)の好感度を最大にしない。
・キーアイテムを全て集め、真相を暴く。
・隠しキーアイテムの『白銀の鍵』を所持する。
ちなみにこのルートだと、
・ミサキがトモヤに殺され、リンタロウが復讐鬼化する。
・ショウマは蜂の巣にされて死亡する。
・囮作戦によってトモヤはリンタロウに殺される。
・リンタロウは殺人鬼化したが何者かに殺される。
…という地獄ルート。
あらすじ ④
事件は多くの犠牲者を出して、幕を閉じた。
ソウシロウからユキナリは慰められるように電話で、戻っておいでと言われる。
しかし、ユキナリは真犯人…黒幕がいると考え、自分にもしものことがあれば死んだと思ってくれて良いと告げて、一人でその黒幕のところへと向かう。
白銀の鍵を手にして。
***
ユキナリは森の奥へと進む。
かつて、愛していた人と暮らしていた館へと歩く。
三年前の記憶と変わらない姿をした館は、今もなお他者を寄せ付けない風貌を保っていた。
「…」
鍵穴に白銀の鍵を差し込み、ドアノブに手をかける。いとも簡単に開かれた館の内部は、綺麗だった。無人であるはずなのに。
懐から一通の手紙を出す。
紙飛行機だったそれには、『俺の部屋に来い』とだけ書かれていた。誰からの手紙なのか。何のための手紙なのか。ユキナリにはもう分かっている。
過去の記憶を辿るように、ユキナリは黒幕…コウの部屋へと着いた。扉を開ければ、ベッドに腰掛けて紫陽花が描かれた本を読んでいる彼がいた。
「久しぶりだな」
面と向かって話すのは。
「…あなたと話すことなんてない。だから、手短に済ませます」
ユキナリは拒絶を含めて、コウを見据える。
「ここで起きた全ての事件の元凶はあなたですよね」
「ああ、そうだが?」
平然と答えるコウにユキナリは身の毛がよだつ。
「何故驚くんだ。分かっててここに来たんだろう」
呆れた顔をするコウはパタンと本を閉じた。
「あなたは殺人鬼じゃない。あくまでも殺しは仕事だった」
金を得るための手段の一つでしかない。ユキナリがトラウマとなったあの殺人現場も、今思えば殺し屋としての仕事だったのだろうと察しがつく。
「でもここまで多くの人を殺すメリットも、依頼した人間もいない。狼遊戯タウンでいくら人が死んでしまっても、得をする人なんていないんです」
こんな小さな田舎町に注目する人間などいない。殺人鬼が現れたところで誰も得をしないし、愉快犯ならばわざわざコウを雇うとは思えない。
「それでも動機があなたにはない。でも、ここで起きた全ての元凶を用意して、利用できるのはあなただけなんです」
その『集真藍の本』が何よりの証拠だ。あのユウヤが実験されていたという実験施設に置かれていた、禍々しい魔導書。人の魂を操る非現実的なそれを使いこなせるのは、狂気に呑まれるどころか平然としている人間にしか不可能だ。
「…分からないのか?」
コウの浅葱色の瞳がユキナリを静かに見据えた。
「俺がこんな大掛かりな事件を撒いたのは、お前をここに戻って来させるためだよ、ユキナリ」
「…は、はあ?」
その言葉にユキナリは訳が分からないというようにコウを凝視した。コウは腰掛けていたベッドから立ち、ユキナリへと歩み寄る。
「探偵をやってることは『これ』を使えばすぐに知れた。お前の居場所も、何もかも知っていたとも」
まるで蛇に睨まれた蛙のように動けないでいるユキナリを、愛でるように触れる。久しぶり触れる髪も肌も唇も、愛おしくて仕方ないというように。
「すぐに連れ戻しても良かったが…それにはお前の周囲が邪魔だった」
その声に含まれるのは、怒気。
「だから、片っ端から消すことにした」
依頼なら断れないだろう。お前の居場所が奪われるのを阻止するためのチャンスなのだから。
「だから、トモヤくんを、狂わせたんですか」
「あれは傑作だったな」
正気に戻されたのに、その直後に復讐鬼に殺されて、悲劇的だった。まるで悪魔のように、コウは笑う。ユキナリがどれほど傷ついて、絶望したかを理解しているからだ。
「…俺が、逃げたからですか」
「そうだ。大人しくこの家で俺の妻としていれば、こんなに犠牲が出ることはなかったのにな」
そのあんまりな言いように、ユキナリはコウを突き放す。
「人の命を何だと思ってるんですか!!」
「強いて言うなら通貨だな」
ユキナリの怒りもどこ吹く風だった。
今コウが手にしている『集真藍の本』は、人の魂を喰らい、魔術の元にする。規模を大きくすればその分魂の量も多くなる。だから小さな田舎町の狼遊戯タウンで、殺人鬼事件を起こしたのだ。
「…ユウトくんを、殺したのは何でですか」
ショウマは分かる。事件のことを追っていた上に、ユキナリからほのかな恋心と信頼を向けられていたからだ。リンタロウも分かる。彼もまた殺人鬼を追い、事件を収束させるための犠牲だった。
「ユウトくんはあなたのことを信じていたし、慕っていたでしょう。何で、殺したんですか」
震える声で比較的冷静に、ユキナリは問う。
コウは少し考える素振りを見せてから、
「邪魔だったから」
と、興味なさそうに答えた。
「じゃ、ま…?」
「あいつがいたら、お前は帰ってこないだろう」
ユウトを理由にして、探偵事務所に戻るつもりだっただろう?
確かにそうだ。だけどそれは、コウから逃げたかったからだけではない。自分の居場所を守りたかったからだ。ユウトは何だかんだ言って自分の大切な助手であり、家族のような存在なのだから。
「う、うぅ…!」
全部、全部。自分のせいだ。
コウに出会わなければ。逃げなければ。ユウトを巻き込まなければ。真実を突き止めなければ。たくさんのもしもと後悔が、全身を駆け抜ける。
「…また、逃げるのか」
開けておいたはずの扉には、黒い何かで塞がれている。まるで詰め込まれたかのように押しても叩いてもびくともしない。
「…っ、な、何で?」
カタカタと震えて立ち尽くすユキナリを、コウは背後から抱きしめる。心臓がぞわりとして、鳥肌が立ち、寒気に襲われる。
「お前はもう部屋から出られない。そういう魔術だからな」
嘲笑うように囁くコウの方にユキナリは振り返れない。背後にいるのは『何』だ。人ではない。確かにコウは殺し屋だった。人を躊躇もせず殺せてしまう人だった。
けれども。
こんな、人…否、モノだっただろうか。
もうどうすることもできないと、泣きながら震えるユキナリを引き寄せた。突き放したいのに、身体が思う通りに動かない。視界の隅で『集真藍の本』が妖しい光を放っている。
「俺の妻。俺のユキナリ。ようやく、ずっと一緒にいられる」
歪に笑う彼が恐ろしくて仕方ないが、逃れる術なんて存在しなかった。
ユキナリ
元殺し屋の嫁。コウとは夫婦だった。ちなみに家族は流行病によって死亡した。
狼遊戯タウンに帰りたくなかったのは、コウに合わせる顔がなかったから…ではなく、殺されてしまうと思ったからである。プロローグの夢は、コウの仕事を目撃してしまったシーン。
ユウトが言っている通り魔殺害について。ユウトもユキナリも人を殺した…と勘違いしているだけで、本当は殺していない。
探偵事務所にこだわっていた理由は、職場兼ね自宅というのもあるが、自分とユウトのかけがえのない居場所だったから。
ユウト
殺人鬼ユウヤを含めたアンダーグラウンドの人種に憧れを持つ危険思考の少年。通り魔殺人されかけたところを、ユキナリによって助けられたことから探偵の助手となる。
両親からネグレクトを受けているため、家に居場所がなかった。探偵事務所が家であり、ユキナリが家族のようなものであるのだが、本人はなかなか認めない。
ユキナリに恩を感じていないわけではないが、自分やユウヤとは違うことから少し残念に思っている。今の社会やつまらない平凡な暮らしに嫌悪、嫌気がさしているユウトと、今の社会に納得し、平穏に生きていきたいユキナリではだいぶ考えが違う。
ユキナリと大喧嘩した後に、コウのいる診療所に向かう途中で何者かに殺され、吊るされた状態で次の日の朝に発見された。
トモヤ
二重人格の殺人鬼。ユキナリが逃げた少し後にコウに付与されて、『ユウヤ』という殺人鬼の人格が入ってしまった。
最初の頃は何とか抑え込み、何名かちらほら逃していたが、トモヤの『ユキナリに帰ってきてほしい、そばにいてほしい』という思いを煽ったコウの甘言によって、徐々に人格が混ざっていく。
最終的には、ユキナリを『お母さん』と呼ぶようになる。母への求愛と、ユキナリへの恋慕と献身・庇護欲欲が混ざってる。
ルートによって、ユウヤになってしまったり、殺されたり、自殺することになる。
リンタロウ
両親が殺人鬼ユウヤに殺されたため、ユウヤを野放しにすることになった原因の人物と、ユウヤの人格が入った殺人鬼を探してる。ちなみにユウヤを野放しにした担当の警察官を殺してたのは彼らである。
ミサキと共に調べていく内に、ユキナリが今二人が追っている殺人鬼になったトモヤの片想い相手であることを知ってしまい、ユキナリを誘拐及び拘束し、トモヤを誘い出す囮に使うことを考えるのだが良心と恋心から実行できずにいた。
ルートによってミサキを失ってしまうため、復讐心に取り憑かれてしまう。
ショウマ
警察官だが昔はとある実験施設の警備員だった。
当時、殺人鬼になったユウヤに非人道的な実験を行われていたのを知っていた。しかし、退職後の施設内での事故により、ユウヤとその研究員たちは死亡したとされていた。
警察官に転職し、出没する殺人鬼について調べていくうちにユウヤと一致する点と、明らかに別人の犯行である点を見つけていた。
ルートによって、殺されてしまう。
コウ
元殺し屋。ユキナリとは夫婦だった。本当に愛していたし、ユキナリだけは殺さないし死なせないと決意していた。
ユウヤが実験されていた施設を事故に見せかけて潰し、ユウヤの魂をトモヤに付与した張本人。所謂全ての黒幕。
町の悲劇は全て、自分を捨てたユキナリへの復讐。自分とユキナリ以外の人間の命をとてつもなく見下している…ように見えるが、トモヤが近所のおばあさんを殺しそうになった時はちょくちょく邪魔していた。
『集真藍の本』を手にしてから、狂気に呑まれたらしい。
ついに実の母親を殺してしまい、ユウヤは狂う。そこから女性を狙った大量殺人鬼化した。森夫妻は最後の被害者。
森夫妻殺害後、その警察に捕まらなかった隠密スキル、殺しの手法、身体能力が注目され、『能力だけ奪い、魂と身体を捨てる研究』をしていた実験施設に送られる。表向きは処刑されたことになっている。
一方ユキナリは、夫婦関係に不安を抱いていた。コウが自分に対して何かを隠しているような気がしてならなかった。何度か面と向かって話し合おうとするが、コウは答えてくれない。
仕方なくユキナリは、知ろうとするのを諦めて、主婦として家を守っていたが、たまたま遠出した帰りに目撃してしまう。
コウが殺し屋として、仕事をしている様を。
家に帰ったユキナリは、知ってしまった以上は自分も殺されてしまうと考え、手紙と指輪を残し、町の外へと逃げ出した。
町の外に出た後、ユキナリは通り魔殺人されかけた少年…ユウトを発見する。迷った末に、ユキナリは通り魔を殺してしまった(…かと思いきや、生きていた上に記憶を失ったので結果的に何も起こらなかったのだが二人とも逃げたのでこのことは誰も知らなかった)。
ユキナリは探偵として死に物狂いで働いていくうちに、ユウトが助手になり、警察のソウシロウとも関わりを持っていき夢見てきた平穏な生活を手に入れる。
一方その頃、ユキナリが自分を捨てて去ったことを知ったコウは、すぐに連れ戻すのではなく、ユキナリがより絶望して自分から離れないようにするという計画を立てる。
新たに手に入れた情報…『殺人鬼ユウヤ』、『集真藍の本』、『トモヤ』、『探偵助手のユウト』…そして、『探偵になったユキナリ』。
コウもまた殺し屋から情報屋に転職し、ユキナリの故郷である、廃れたど田舎の狼遊戯タウンで、殺人鬼の惨劇を始める。