テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
こんにちは♪
次回で最後ですー!!またリクエスト募集お待ちしてます😊😊😊
叶『』葛葉【】
夜。
配信も終わり、画面の向こうの世界が静かに閉じる。
マイクを切った瞬間、部屋に落ちる沈黙がやけに重い。
俺はソファに背中を預けたまま、スマホの画面をぼんやり眺めていた。
通知はない。……いや、あるはずがない。
『夜になったら、また会おう』
あれは約束というより、確認みたいなものだ。
俺が行くことを、あいつは最初から知ってる。
【……はぁ】
小さく息を吐いて立ち上がる。
シャワーを浴びて、髪もちゃんと乾かして。別に、気合入れてるわけじゃない。ねぇよ。
インターホンが鳴る前に、扉の前に立ってた。
「ピンポーン」
【……遅ぇ】
ドアを開けると、いつもの顔。
『こんばんは、葛葉』
柔らかい声。
余裕のある笑み。
むかつくくらい、平常運転。
【早すぎ。まだ夜ってほどでもねぇだろ】
『僕にとってはもう夜だよ。だって、葛葉に会う時間だから』
【……っ】
相変わらず、こういうことをさらっと言う。
『寒いから入れてくれない?』
【……勝手にしろ】
背を向けて歩き出すと、後ろからくす、と小さな笑い声が聞こえた。
リビングに入ると、自然に距離が近づく。
配信中みたいな、わざとらしい掛け合いはない。
沈黙。
けど、嫌じゃない。
『今日のコラボ、楽しかったね』
【……別に。いつも通り】
『うん。いつも通り、最高だった』
横に座る気配。
近い。近すぎる。
【ちょ、ちょっと離れろよ】
『やだ』
即答かよ。
【なんで】
『葛葉が照れてるから』
【照れてねぇし】
言い返した瞬間、手首を掴まれた。
ひやっとする指先。
『ほんとに?』
低くなった声に、喉が詰まる。
【……離せ】
『嫌だって言ったよ』
優しいのに、逃がす気はない声。
俺の手首を引いて、ソファに押し戻す。
身体が沈む。
その上に、影が落ちる。
『配信ではさ、ちゃんと“相棒”してるでしょ?』
【……してるな】
『じゃあさ』
叶の顔が、近づく。
『ここでは、僕だけのでいてよ』
心臓が、うるさい。
【……意味わかんねぇ】
『わかってるくせに』
頬に触れる指先。
ゆっくり、顎を持ち上げられる。
『葛葉はさ。ツンツンしてるけど、ちゃんと僕を選んでくれてる』
【……選んでねぇ】
『じゃあ今、僕のこと追い返せる?』
言葉が出ない。
出せない。
叶は小さく笑って、額を軽く合わせた。
『ね、選んでる』
ずるい。
こんなの、ずるい。
【……っ、叶】
名前を呼ぶと、嬉しそうに目を細める。
『なぁに?』
【……あんま、余裕ぶんな】
『余裕なんてないよ』
嘘だ。
でも、次の瞬間。
唇が、触れた。
一瞬だけ。
触れて、離れて。
『……今のは、僕のわがまま』
【っ、勝手に……】
『うん。勝手にするよ。葛葉が嫌って言わない限りね』
顔が熱い。
逃げようとしたら、後ろから抱き寄せられた。
『配信では見せない関係』
耳元で、囁く。
『でも、僕たちは知ってる』
背中越しに感じる体温が、やけにリアルだ。
『今日も完璧な相棒だったね』
【……ああ】
『じゃあさ』
抱きしめる腕が、少しだけ強くなる。
『この続きも、ちゃんと一緒にやろう』
俺は少しだけ迷って。
ほんの少しだけ、背中を預けた。
【……勝手にしろ】
それは拒絶じゃないって、
あいつはちゃんとわかってる。
背後で、満足そうに笑う気配。
夜は、まだ長い。
配信では見せない選択。
見せない関係。
それでも――
俺は今日も、あいつの隣を選んでいる。
リアルで続く。