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放課後、どこかの生徒が教室のスクリーンを点けっぱなしにしていた。
誰もいないはずの教室に、突然プロジェクターの光が走る。スクリーンに投影されたのは、匿名の投稿サイトのスクリーンショットだった。
《日下部が遥を庇うの、ただの正義感?違うよ。二人ってさ──ああいう関係なんでしょ》
スクリーンには、遠巻きに撮られた遥と日下部の姿。距離の近さ、何気ない手の動き、視線。
それが、“意図的に切り取られた歪んだ関係”として映し出されていた。
そして、その下に重ねられる言葉。
──「教師にバレたら終わりじゃん」
──「加害者と“つるんでる”って何?」
──「あいつら、結局なにか隠してるんだろ」
翌日、空気は変わっていた。
廊下で声が止まり、教室で視線が逸れる。
すれ違いざまに、笑い声が落ちる。
遥は黙っていた。何も語らない。だが、その沈黙が「認めた」という印象を残していく。
日下部は、それでも無理に説明はしなかった。何を言っても、今のクラスには届かないと知っていたからだ。
代わりに、ただ隣にいた。それだけが、遥の崩壊を止めるかすかな手綱だった。
しかし、それすら──
「日下部が、遥の“管理”してるらしいよ」
そう言って笑う声が、理科準備室のドア越しに漏れた。
誰が言ったか分からない。だが、それが事実として“信じられていく”速度は、想像以上に速かった。
「なんで庇うのか、わかった。そういうことかって思った」
遥の靴箱には、紙が入っていた。
《次は誰壊すの?》
それを見た日下部は、初めて拳を握った。だが、殴る相手も叫ぶ場所もない。
静かに紙を折りたたみ、遥に見せずにポケットにしまった。
そのとき遥は気づいていた。何もかも、また自分が壊したと。
──もう、守られる資格もない。
──日下部を、これ以上巻き込むべきじゃない。
遥はついに、「距離を取る」ことを決意する。
しかし、それこそが蓮司の狙いだった。
「ふたりでいること」=「気味が悪い」「危険だ」「異常だ」
そう印象づけてからの、「ふたりを引き離す」という形で、遥を完全に孤立させる。
そして──次の段階が始まる。
遥がひとりになった瞬間を、蓮司は見逃さない。