テラーノベル
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🧡「相変わらず気持ち悪っ」
ミヤダテの乗って来た宇宙船に乗せられ、俺たちは数時間前に出たばかりの、今やミドリンに全体を覆われた本社ビルに到着した。
ビルの前は黒山の人だかり。各テレビ局のアナウンサーやマスコミがあちこちで思い思いに撮影をしたり、取材したりしている。
ミドリンはミヤダテが姿を現し、ステッキを振ると、屋上まで広がっていた体をずるずると下へと降ろして形を変え、表玄関を開放した。ミヤダテは警官たちの制止も聞かず、どんどんと建物へと入って行く。俺と康二は迷わずそれに続いた。俺たちが建物に入ると、入り口はたちまちまたミドリンで覆われた。
❤️「悪いが、IDカードを貸してくれないか」
セキュリティカードを渡し、素早く3人で入る。建物内部は水を打ったように静まり返っていた。おそらく社員はほとんど帰宅した後だったのだろう。
エレベーターに乗り込み、最上階の社長室へと向かう。エレベーターの中で、ミヤダテは言った。
❤️「ここへ直接乗り込む勇気が持てなくて君たちを巻き込んだ。すまない」
思い出話を誰かに聞いて欲しかったんだと思う、とミヤダテは呟いた。さっきまで自信たっぷりに見えていたその姿はなんだか小さく見えた。分厚い肩を叩く。
🖤「きっとうまくいきますよ」
🧡「俺もそう思います!」
ドアが開き、外へ出ると、廊下にはいかつい社長の運転手が立っていた。
💛「目黒、向井…」
後ろには社長室から出て来たであろう、深澤社長と渡辺さんの姿があった。
💜「お前たちどっから…」
❤️「翔太っ!!!」
一番奥にいた渡辺さんは小首を傾げている。そしてミヤダテに気づいて一度大きく目を見開いたかと思うと、おずおずと尋ねた。
💙「リョウタ…?まさかね」
ミヤダテは、前進する自分を引き止めようとした岩本くんをいとも簡単に交わすと、渡辺さんの元へと駆け寄った。そしていきなり彼を抱きしめた。
❤️「会いたかった……」
💙「まじ?リョウタなの??」
困惑する渡辺さんを抱き上げ、そのまま二人、元来たエレベーターへと消えて行った。追いかけようとした岩本くんと社長は俺と康二とで必死に押し留めた。
💙「阿部ちゃんたちの子どもが生まれるのは、いつ?」
💚「ちょうど11月くらいかな。翔太たちも子ども作るの?」
💙「俺はまだ仕事したいんだけど、リョウタがどうしても二人欲しいって言うからね。たぶん、再来年くらいには」
❤️「俺はすぐにでも欲しいんだけど」
💙「産むのは俺だ。黙ってろ」
ダイニングで海鮮鍋をつつきながら、久しぶりに会う渡辺さんと亮平の会話が続く。そしてそこには宇宙人ミヤダテの姿もあった。
あれから、ミヤダテと渡辺さんは見事くっついて、二人仲良く暮らしている。
今日は、あの時のお礼とお詫びも兼ねてとリョウタが手土産を持ってやって来ていた。畏まったスーツ姿ではなく、元々好きだとかいう革のファッションに身を包んでいる。一方、休日の渡辺さんは、飾り気のないシンプルなジーンズとパーカーという出立ちだ。もともと、亮平と渡辺さんは仲が良かったらしく、二人は再会してからずっと思い出話に花を咲かせていた。
💙「阿部ちゃん早く戻って来てよ。俺、モテてモテて大変なんだから」
💚「ふふっ。指輪してるのに?」
💙「だってこいつ、戸籍ねぇんだもん。事実上は俺、まだ独身だし」
そう言って渡辺さんはミヤダテを睨む。
しかしその目つきはちっとも怖くなくて、むしろ寂しくて甘えているように感じられた。
❤️「だから、俺、深澤不動産(株)に入社することにした」
💙🖤💚「えっ」
❤️「目黒と康二に見張ってもらうだけじゃ、心配だし」
🖤「よくあの社長が採用したな…」
❤️「俺、優秀なので」
こともなげにそう言うと、ミヤダテは不敵に笑った。きっと地球人より大分文明が進んでいる火星人の技術を使って、深澤社長に自分を売り込んだに違いない。あの人は、会社のためになるなら自分の小さな拘りを一切捨てることができるリアリストだ。きっと何かが社長にフィットしたんだろう。
ぴんぽーん。
インターフォンが鳴り、遅れた康二とラウールと佐久間くんがやって来た。ラウールは最近仲良くなった若手のエースだ。二人は渡辺さん会いたさに無理やり参加をねじ込んで来たらしい。渡辺さんは、しつこいけど可愛いから憎めないんだよな、とラウールを評している。ミヤダテは三人が入ってくるなり、冷たい目でラウールと佐久間くんを見たが、俺は見なかったことにした。そして、間髪入れずにミヤダテの鞄に隠されていたピクドンが、ピンクの飛沫を飛ばしながらラウールと佐久間くんに向かって飛び掛かっていった。
おわり。
コメント
6件
えーーおもしろすぎて5話じゃ足りない😗
今回は【宇宙人】がテーマでした👽 michiruさんありがとうございましたぁ💙