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白斗の綺麗な指が私の目から溢れる涙を拭ってくれた。

優しい。さっきの新藤さんと一緒だ。

やっぱりあなたは白斗なんだ…。新藤さんが白斗だったなんて。白斗と博人のパズルのピースがはまるみたいに、ふたりの影が重なった。



「もっと愛して」



白斗にしがみつく指に、彼の綺麗な白い背中に跡が残るほど力を込めた。


「体、こわばってる。大丈夫。乱暴にはしない。ちゃんと愛してやるから力抜け」


キスが降ってきた。何度も舌を絡められて蕩けていく。


「そう。いい子や。もっと力を緩めて……」


愛おしそうな瞳で私を見つめてくれた白斗が、そのまま私にのしかかってきた。

彼の重みを感じた躰。

今、白斗を受け入れ貫かれ、ひとつに繋がった。



全然、痛くない。心地よくて気持ちいい。



それよりも白斗が私に興奮してくれて、彼の熱い塊が私の体中(なか)にあるのだと思ったら泣けてきた。初めて女性で良かったと思う瞬間だった。



この感情は、幸せとか、嬉しいとか、そんなチープな言葉ではとても表せられない。



あなたへのこの想いは、とても言葉にはできない。



「Desire 恋に堕ちた

二人逢ったこの瞬間(とき)

あなたは 運命のひと――」


Desireを歌った。言葉はいらない。私が白斗に想いを伝えるなら、今、この舞台で歌うしかない。


「指を絡めて、舐めて――」


白斗の指に自分の指を絡ませて口づけた。自分の舌を彼の指に這わせて舐めた。



「Desire 堕ちていく

あなたに奪われる――」



私が歌う主旋律に合わせて、白斗も奏でてくれる。

ツインヴォーカルの最高のハーモニー。



涙腺が崩壊した。



全身が性感帯になってしまったみたいで、白斗が少し腰を動かしただけで悲鳴のような歌声が口を突く。

こんなセックスは初めてだった。


淫らで心地よくてずっと繋がっていたい。

ただ痛いだけの、無理をして受け入れる行為じゃない。



もっと魂の芯から心が焦れて惹かれ合うような、そんな感覚。



白斗が私を貫いている――実感すると私の奥底がまた熱くなる。



彼と繋がりながら白斗が歌ってくれる歌を聴いて、私も一緒に歌って、幸せの絶頂を感じた。このライブが終わったら果ててもいい。



詩音がいない世界は絶望しかなかったから、いつ死んでもいいと思っていたけれど。


でも、今だけは。

白斗と繋がり重なっている今だけは、生きたいと思う。


どんなに汚れていても、美しくなくても、翼を折られた鳥のようにもがくしかできなくても――




叶うならこのまま時間が止まって欲しい。



絶望の海が広がる現実世界には帰りたくない。

この幸せを感じるまま、死にたい。

RBのコンサートに来たみたいな錯覚。夢のようなライブが永遠に続いてくれたら……。



「このナイフを あなたの体内(なか)へ

欲望を受け止めた躰――」



ふたりで一緒に歌った。



「透き通る 紅(あか)になる――」



白斗に深く腰を打ち付けられると圧迫感が支配する。

絡みつく粘膜が卑猥な水音を立てて私を溺れさせる。


白斗が私の瞳から溢れる涙を唇ですくって、舐めてくれた。


「白斗……」


「泣くな、律」


愛おしそうに私を見つめたかと思うと、「これから俺と地獄へ堕ちよう」と囁き、途端に全てを射殺すような目つきへと変わった。


「俺を裏切ったりできないように、今、この瞬間(ライブ)を忘れないように、お前の乱れる姿を証拠に撮影して残しておいてやるから」



あぁ――……ゾクゾクする。




殺して。




もう、射殺して。




貴方に奪われたままトリップしている裏切り者の私を殺して。

一緒に、地獄へ堕ちたい。白斗が一緒ならどこにでもついて行く。



こんなに刹那な愛があるなんて、私は知らなかった。

これ程までに強く激しく胸が打ち震えたのは生まれて初めてのこと。


彼と重ねた手を強く握った。地獄へ堕ちても離れないように。

温かい。鼓動さえ愛しい。



これは夢か幻か。



白斗に貫かれながら、彼を飲み込んだまま私は何度も達した。

こんな快感も生まれてのこと。

本能のまま深く愛されることも、初めて経験した。




激しく突き上げられて掻き回されながら





薄れゆく意識の中で見たものは




私の躰が、透き通る紅(あか)に染まる瞬間





そして





あなたに堕ちる






あなたへの、Desire(欲望)――








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