テラーノベル
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ポツリ、ポツリとロウ君から彼氏の話を聞いた
出て行く前と出て行った後の事
それからのロウ君がどう過ごして来たか
どんな良い人でも真の内側を知る事は出来ない
その彼氏がどんなに出来が良くて良い人だったとしても、それはロウ君に見せた一面にしか過ぎない
でもなぜだろう
僕もロウ君の彼氏がそんなに悪い人には感じない
ロウ君が彼氏の話に乗せた感情に同情しているだけかもしれないけれど
それと同時に寂しさを抱えるロウ君を抱きしめてあげたい
僕がその寂しさを埋めてあげたいと思った
正直、今じゃないとわかってる
でも目の前のロウ君を見ると何故か気持ちが急いてしまう
こんなのズルくてフェアじゃない
そう思っても今すぐこの腕で掴まえたくて仕方なかった
「ロウ君はまだ彼の事を待ってるんだね」
「でももう戻って来ない‥‥ってわかってます。戻るくらいならこんな事きっとする人じゃないですから」
「でも待ちたいんだよね?」
「‥‥それは‥‥わからない」
「ロウ君が待ってる間‥‥考えてる間、僕が側にいても良い?」
「え‥‥?」
「寂しそうな顔してる時は僕が隣にいてあげたいから。都合の良い男でいいから一緒にいてよ」
そう言って僕はロウ君の前に手を差し出した
出された手のひらを見てから僕の目を見た
静かにロウ君の右手が俺の手に吸い寄せられる
その手が重なる前に動きを止めた
きっとまだ迷っているんだ
だからその手を僕が掴んだ
「甲斐田さんっ‥‥」
「掴まえた」
その華奢な体を抱きしめた
そして耳元に唇を近づける
「どうしよう‥‥」
「え‥‥?」
「離したくなくなっちゃうかも」
「甲斐田さ‥‥」
顔を上向かせ、間近で瞳を覗き込む
まだ迷っている瞳
感情を整理する事が難しいのは仕事柄よく分かっているつもりだ
だからありのままのロウ君を全部受け止めよう
抱きしめた腕を離そうとすると、ロウ君の視線がもう一度絡む
それは寂しそうに縋る瞳
そんな目で見られたら僕は‥‥
「‥‥キスしても良い?」
「え‥‥俺‥‥‥‥」
「ごめん、待てないわ」
「あ、んんっ!‥‥っ‥‥」
ピンクの唇が僕の唇と重なる
啄むようなキスの後、深く舌を絡めるとロウ君が僕の舌に舌を這わせ、それに優しく吸い付いて来た
そこからはただロウ君の口内を貪った
ようやく離れた唇に、ロウ君が小さく口を開いて呼吸をする
ピンクだった唇は赤くしとどに濡れていた
ロウ君の服に手をかける
するとその手をロウ君が掴んだ
きっとまだ躊躇っているのだろう
そう思いロウ君を見た
その瞳には溢れる寸前の涙が溜まっている
「ロウ君‥‥?ごめん、急ぎ過ぎだよね」
「違‥‥そうじゃなく‥‥」
言葉と共に床に涙が溢れた
「やだ‥‥やめないで‥‥」
心からの声に僕も泣きそうになった
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