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透明な放課後
 
 
 月曜日。曇り空。
broooockはいつもより遅く教室に入った。
 「あ、おはよう、nakamu!」
 声をかけてきたのはbroooockだった。
明るくて、誰にでもフレンドリーな笑顔。
 だけど俺には
その笑顔が少しだけ嘘っぽく
見えた。
 (…本当に、broooockは”嘘をついてる”の?)
 「おはよう。……きんときは?」
 「え?ああ、まだ来てないよ?」
 broooockは軽く笑って席に座る。
俺は胸の奥がザワつくのを感じながら、
自分の席についた。
 
 1時間目の授業中
俺は何度も教室の後ろを振り返ってしまった。
 だけど
きんときの席はずっと空いたままだった。
 「欠席か…?」
 俺がぼそりと呟いた声は、誰にも届かない。
いや─
届いてはいけなかったのかもしれない。
休み時間。
broooockが俺の席までやってきた。
 「ねぇ、nakamu。
今日、放課後って空いてる?
ちょっと話したいことがあるんだよね」
 「えっ…なに?」
 「んー、まあちょっとしたこと。
最近nakamu元気ないしさ?
気になってるっていうか…」
 「……うん。」
 一瞬、俺は返事を迷った。
”broooockには近ずくな”──そう
書かれていた
 「わかった。放課後、少しなら。」
 「やった!じゃあいつもの場所ね」
 そう言ってbroooockは笑った。
その笑顔はやっぱり──どこか”演技”に見えた
放課後。
俺は 校舎裏のベンチで
broooockと並んで座っていた。
曇っていた空は少しだけ腫れてて
夕日がさしていた。
 「最近さ
グループちょっとギクシャクしてない?」
 broooockが、ぽつりと切り出す。
 「きんとき、最近nakamuと話してないでしょ?なんか変な空気と言うか…」
 「…きんとき、今日来てなかった。」
 「え?」
 broooockが驚いたように俺を見る。
 「来てなかったっけ…?あれ…」
 俺の鼓動が一瞬止まった気がした。
 「…broooock、きんときのこと覚えてる?」
 「え…なんでそんなこと聞くの?」
 「今…”来てなかったっけ”って言ったよね」
 「いや…その…あれ?変だな…昨日話したような気もするけど、でも…」
 broooockは言葉を詰まらせた。
 その目の奥に浮かんだもの──
迷い?戸惑い? それとも
”作られた記憶”の違和感?
俺は立ち上がる。
 「ねぇ、broooock。
…本当は何か知ってる?」
「え…? 」
「きんときのこと、覚えてないんじゃないの?昨日も一緒に居たはずなのに、今日のこともはっきりしてない。
…それって、”おかしくない?”」
 broooockは、ゆっくり顔を伏せた。
 そして、笑った。
 「ねぇ、nakamu…
きんときって、いたっけ?」
 「──え?」
 「だってさ、最初から6人もいなかったんじゃない?俺たちって …5人だったよね?」
その瞬間。
俺の脳内に”ノイズ”のような音が走った。
 
 ズズ…ズ…ピシッ
 記憶の中のきんときの顔が
どんどんぼやけていく。
 (やばい──)
 俺は思わずその場から駆け出した。
 broooockは、何かを”忘れさせる”側だ。
未来の「ぼく」が言っていたことは、
嘘じゃなかった。
 
 
 つづく─
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