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4 - 第4話 『シャークんは知っている』

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2025年08月03日

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透明な放課後



俺は、階段を駆け上がっていた。


とにかく、誰かに話したかった。

何かを、確かめたかった。


きんときの記憶があやふやになってゆく。

broooockの笑顔は嘘だ。


未来の自分が言っていた。「6人のうち、1人は嘘をついている。」


けど──1人だけ「本当のことを知っている」

気がする人間がいた。

シャークん。





シャークんはいつも静かで、目立たなくて、

教室でも誰かと群れることはなかった。

だけど、

俺はなんとなく、ずっと前から知っていた。


シャークんは、全部を見ている。

旧校舎の図書館──


普段、生徒はここにはこない。

埃の匂いがする空間。

そこに、シャークんがいた。


机にノートを広げ、静かに鉛筆を走らせている


「……シャークん」


俺が声をかけると、シャークんは顔を上げた。


そして、少し驚いたような目で、俺を見た。


「珍しいね。nakamuがここに来るなんて」


「ちょっと、聞きたいことがあるの 」

シャークんは何も言わずにノートを閉じた。


「……きんときのこと、覚えてる? 」

その言葉に、シャークんの目が少しだけ揺れた

「覚えてるよ。……でも、今それを口に出せる人、ほとんどいないんじゃない?」


「やっぱり、何かが起きてるんだね。broooockは、”最初からきんときなんていなかった。”って言ったよ。あたかも……そんな人間、存在しなかったみたいに。」


「それ、broooockが言ったの?」


「うん。笑いながら。

”消えるのは当然だ”って」


シャークんはしばらく黙ったまま、

窓の外をみつめていた。



「nakamu。……気づいていると思うけど、

俺たちは”何かを思い出してはいけない”世界

にいるんだよ。」


「……どういう意味?」


シャークんは、

立ち上がって本棚の奥にある箱を引き出した。


中には古いクラスの写真が何枚も入っている




「見てみて」


シャークんが渡していた写真。

それは、半年前のクラス集合写真だった。


俺はその写真を食い入るように見つめた。


「……いない」


「うん。きんときが写ってない」


「でも、この時確かにきんときはいた。

俺の隣でピースしてた」


「記憶が、書き換えられている。誰かが、きんときの存在を”記憶からだけじゃなく、記憶からも”消そうとしてるんだ。」


俺はゾッとした。

写真から消された存在──それはまるで、

誰かの”操作”だ。


「誰が、こんなこと……?」


「分からない。でも、俺は全部記録してる。

忘れないように。」


シャークんは、ノートを再び開いた。


そこには日付と共に、6人の行動や言動が細かく記されていた。

まるで、記憶の証拠を集めるように。


「……どうすればいいの?」


俺の問いに、

シャークんは静かに答えた。


「”次に消されるのは、君かもしれない”。

でも、それを止められるのも──

多分君だけだよ。」





その時。

図書館のスピーカーから、

ノイズ混じりの音が流れた。


ジジジ…ジッ…ピ……


「次は、スマイルの番だ。」




俺とシャークんは顔を見合わせた。


図書館の空気が、冷たく凍るように感じられた。




つづく


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