テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
透明な放課後
俺は、階段を駆け上がっていた。
とにかく、誰かに話したかった。
何かを、確かめたかった。
きんときの記憶があやふやになってゆく。
broooockの笑顔は嘘だ。
未来の自分が言っていた。「6人のうち、1人は嘘をついている。」
けど──1人だけ「本当のことを知っている」
気がする人間がいた。
シャークん。
シャークんはいつも静かで、目立たなくて、
教室でも誰かと群れることはなかった。
だけど、
俺はなんとなく、ずっと前から知っていた。
シャークんは、全部を見ている。
旧校舎の図書館──
普段、生徒はここにはこない。
埃の匂いがする空間。
そこに、シャークんがいた。
机にノートを広げ、静かに鉛筆を走らせている
「……シャークん」
俺が声をかけると、シャークんは顔を上げた。
そして、少し驚いたような目で、俺を見た。
「珍しいね。nakamuがここに来るなんて」
「ちょっと、聞きたいことがあるの 」
シャークんは何も言わずにノートを閉じた。
「……きんときのこと、覚えてる? 」
その言葉に、シャークんの目が少しだけ揺れた
「覚えてるよ。……でも、今それを口に出せる人、ほとんどいないんじゃない?」
「やっぱり、何かが起きてるんだね。broooockは、”最初からきんときなんていなかった。”って言ったよ。あたかも……そんな人間、存在しなかったみたいに。」
「それ、broooockが言ったの?」
「うん。笑いながら。
”消えるのは当然だ”って」
シャークんはしばらく黙ったまま、
窓の外をみつめていた。
「nakamu。……気づいていると思うけど、
俺たちは”何かを思い出してはいけない”世界
にいるんだよ。」
「……どういう意味?」
シャークんは、
立ち上がって本棚の奥にある箱を引き出した。
中には古いクラスの写真が何枚も入っている
「見てみて」
シャークんが渡していた写真。
それは、半年前のクラス集合写真だった。
俺はその写真を食い入るように見つめた。
「……いない」
「うん。きんときが写ってない」
「でも、この時確かにきんときはいた。
俺の隣でピースしてた」
「記憶が、書き換えられている。誰かが、きんときの存在を”記憶からだけじゃなく、記憶からも”消そうとしてるんだ。」
俺はゾッとした。
写真から消された存在──それはまるで、
誰かの”操作”だ。
「誰が、こんなこと……?」
「分からない。でも、俺は全部記録してる。
忘れないように。」
シャークんは、ノートを再び開いた。
そこには日付と共に、6人の行動や言動が細かく記されていた。
まるで、記憶の証拠を集めるように。
「……どうすればいいの?」
俺の問いに、
シャークんは静かに答えた。
「”次に消されるのは、君かもしれない”。
でも、それを止められるのも──
多分君だけだよ。」
その時。
図書館のスピーカーから、
ノイズ混じりの音が流れた。
ジジジ…ジッ…ピ……
「次は、スマイルの番だ。」
俺とシャークんは顔を見合わせた。
図書館の空気が、冷たく凍るように感じられた。
つづく
ーーーーーーーーーーーーーーーー