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次の日も、筆記試験・能力測定試験を無事通過し、ついに合格発表の日に来た。
「ふーー…」
心を落ち着け、学園へ足を踏み入れる陽。
昨日の不気味な青年もそうだが、最近どうも不穏で仕方がない。
陽の受験番号は5189。
(なんともキリが悪いよなぁ…)
せめて5186とか5188くらいだったら偶数だしキリもいい。
ほうっ…吐息をつく陽は人だかりの方へ進む。
人だかりが囲む中心には掲示板があり、大きな紙が張り出されている。
(パッと見たところ…合格者は50人ちょっとか…)
人混みに飲まれながらも、陽は5100の欄から番号を辿っていく。
(15…23、25、37、43、44…)
そこまで読み進め、息が止まった。
「…ない、か…」
陽は目を見開き、喉が空気で張り付いた感覚に現実を思い知らされた。
「…」
ざり、と妙に耳に響く自分の足音にどんどん虚しさが込み上がってくる。
(まぁ?受けたのが10000人以上で合格が50人ちょっとだよ?しょうがない、しょうがないよね…)
自分をなんとか正当化させようと頭の中で言い訳を考えるが、どんどん顔が俯いていく。
気づけば目線は下に落ちて、地面にポタポタと水滴が落ちてゆくのが見えた。
「約束、守れなかった…」
泣き顔を誰にも見られたくなくて、早足で歩き出そうとした、その時だった。
ざわざわと騒ぐ会場の中に突如大きな声が響いた。
『えーっと、今日はお越しいただきありがとうございます』
穏やかな表情で人々の前に立ったのは面接管だったハルヒだった。
ざわざわとざわめく会場の中、マイク越しに品性のある声を響かせる。
『ココで重要な知らせです、えー、打ち込みミスで合格番号のうち忘れがありましたー、今から追加するので、少し待ってくださいー』
しん_と会場が静まり返る。
陽はなんの期待もなく瞳をあげた…
〈4694〉
〈5189〉
〈5727〉
〈6002〉
〈8614〉
ハルヒの流れるような手つきに書かれたその数字に目を見開いた。
『以上です!本当にすみません、こちらのミスで!後日謝罪メールは送らせていただきます。合格者はお手数かけますが、校舎北側のエントランスにてお待ちしています!』
会場はざわざわとまた人混みが動き出した。
「…」
陽は瞳をおおきく瞬く。
雫がぱっと散り、黄色の瞳は光を写した。
そのまま静かに胸に手を置く。
その姿は、何かに祈りを捧げるように見える。
『落ちこぼれ』
『従兄弟に当主の座を奪われた出来損ないの神仲の息子』
そんな肩書がついて回っていた。
(…それでも、ここまで来た。当主としての身分を捨ててまでもしたんだ。失敗は許されない)
_僕はここで、兄を殺した魔物を殺す。