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#転生
コシ
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耀聖(ようせい)
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『偽りの無能、真の覚醒〜転生皇女はすべてを奪い返す〜』
「おのれ……おのれ、ローゼマリー……! 100年前のみならず、
現代に蘇ってなお、私の計画を悉(ことごと)く阻むというのか……っ!」
大陸の最北端、永久凍土にそびえ立つ古城の玉座の間。
2つの『封印の楔』を完全に破壊された魔王ディルクは、血のように紅い瞳を怒りに燃え上がらせ、凄まじい地響きのような咆哮をあげていた。
力の供給源を断たれたことにより、彼の完全復活のタイムリミットは大幅に引き延ばされ、その膨大な魔力の一部が削ぎ落とされたのだ。
「これ以上の猶予は与えん。奴らが最後の楔に辿り着く前に、我が忠実なる僕(しもべ)どもによって、ガルディニア帝国ごと、あの生意気な皇女を肉片へと変えてくれるわ!」
魔王がその漆黒の杖を地面に突き立てると、大気が不気味に震動した。
彼が呼び出したのは、これまでの小規模な襲撃とは次元が違う、帝国の歴史上でも類を見ないほどの大規模な『魔族の超軍勢』。
その数、実に数万。
そして、その大軍を率いるのは、魔王軍の最高幹部であり、比類なき残虐性と圧倒的な戦闘力を持つ魔将軍ガイストであった。
◇
数日後。ガルディニア帝国の北東に位置する広大な平原、
通称『紅蓮の荒野』。
そこは、かつてないほどの緊迫感に包まれていた。
地平線の彼方を埋め尽くすのは、
禍々しい漆黒の鎧を纏った魔族の戦士たち、
そして巨大な角を持つ凶悪な魔獣の群れ。
数万の軍勢が発する地響きのような足音が、何キロメートルも先まで響き渡り、空は立ち込める邪悪な暗雲によって、昼間であるにもかかわらず夜のように暗く染まっていた。
「ククク……人族の家畜どもめ。
我が魔王様の完全なる復活の礎(いしずえ)となるがいい。この荒野を、お前たちの血で真っ赤に染め上げてやろう」
大軍勢の先頭に立つのは、巨大な漆黒の大鎌を肩に担いだ魔将軍ガイスト。
彼の全身から放たれる禍々しい魔力圧は、周囲の空間をメリメリと歪ませるほどの密度を誇っていた。
対するガルディニア帝国側。本来であれば、国家存亡の危機として数十万の正規軍を総動員して迎撃すべき大決戦。
しかし、その荒野の中央に、堂々と立ち塞がっているのは――わずか、3人の影だけだった。
「お兄様、見てご覧なさい。ずいぶんとたくさんの羽虫たちが、命を捨てに集まってきたようですわ」
不敵な、そして極めて冷徹な笑みを唇に浮かべているのは、
私、ローゼマリーだ。
風に美しくなびく紫色の髪。その瞳には、前世のトラウマを完全に克服し、100年前の聖女の力をも完全融合させた、絶対強者の輝きが宿っている。
「本当に、騒々しいね。僕の可愛いローゼマリーとの穏やかなお茶の時間を邪魔して、数万もの軍勢で押し寄せてくるなんて……万死に値するよ」
私の隣に立つアルベルトお兄様は、美しく整った銀髪を指先で弄びながら、氷のように冷たい視線を敵の大軍へと向けている。その全身からは、帝国最高位の魔導師としての、底知れない圧倒的な魔力が立ち上っていた。
「ローゼマリー様、アルベルト様。周囲に潜伏している斥候の魔族も含め、すでに『お掃除』の配置は完了しております。いつでも、綺麗に間引きさせていただきますわ」
私たちの背後に控える専属侍女のリンが、おっとりとした声で一礼する。その手には、影の魔力を纏った無数の漆黒のナイフが握られており、瞳の奥には伝説の暗殺者としての冷徹な煌めきがあった。
わずか3人。しかし、そこにあるのは絶望ではなく、数万の軍勢を完全にゴミ扱いする、絶対的な余裕だった。
「な、何だと……!? わずか3人で、我が魔王軍の精鋭数万を迎え撃つというのか!? 舐めるのも大概にせよ、人間どもめ!」
魔将軍ガイストが怒りに顔を歪ませ、大鎌を振り上げた。
「全軍、突撃ィィィッ! 一人残らず、なぶり殺しにしろ!」
ガイストの怒号と共に、数万の魔族が一斉に雄叫びをあげて地を駆け出した。地平線全体が激しく揺れ、濁流のような悪意が私たちへと押し寄せてくる。
「ではお兄様、まずは挨拶代わりに、少しだけ荒野を静かにしていただけますかしら?」
「喜んで、僕の愛しい薔薇。――我が道を阻む有象無象め。冷酷なる永遠の静寂の中で、己の身の程を知るがいい」
アルベルトお兄様が静かに右手を前に突き出し、掌をパッと開いた。
その瞬間、彼の足元から、平原全体を覆い尽くすほどの、巨大な、そして緻密な『極大氷結魔法陣』が瞬時に幾重にも展開された。
「――『絶対凍土の終焉(インフィニティ・ゼロ)』」
お兄様の冷徹な声が響いた刹那。
突撃してきていた数万の魔王軍の、まさに半数以上――前列の約2万の兵力が、悲鳴をあげる暇さえなく、走っているポーズのまま完璧な氷像へと変わった。
猛烈な冷気が一瞬で平原を駆け抜け、草木も、地面も、そして走っていた魔族たちの肉体も、すべてが絶対零度の氷の中に閉じ込められる。
「な……な、何だとぉぉぉっ!?」
魔将軍ガイストは、一瞬で目の前の視界が美しい氷の彫刻の森へと変わった光景に、驚愕のあまり声を裏返した。ただの一撃、わずか数秒で、自慢の軍勢の半分が文字通り「物言わぬ氷」にされたのだ。
「まだ終わっていませんわ。残りのゴミたちも、一箇所にまとめてお掃除いたしましょう」
リンがスッと影の中に溶け込むようにして姿を消した。
次の瞬間、生き残って困惑していた後方の魔族たちの影が、一斉に生き物のように蠢き、鋭い棘となって彼らの身体を拘束し始めた。
――『影縫いの大葬列(シャドウ・バインド)』。
「がはっ!? な、何だこの影は……! 動けない……っ!」
「バカな、影の魔術ごときで、我が魔族の筋力が抑え込まれるだと……っ!?」
元最強の暗殺者であるリンの影魔術は、今や魔王軍の精鋭すらも完全に無力化する領域に達していた。身動きの取れなくなった残りの数万の軍勢が、平原の中央へと文字通り一網打尽に凝縮される。
「見事な連携ですわ、お兄様、リン」
私は一歩前へと歩み出た。
私の背後に、純粋な魔力によって形成された、神々しいまでの『光と氷の薔薇の翼』が圧倒的な輝きを放ちながら顕現する。
荒野を支配していた魔王の暗雲が、私の覚醒魔力の光によって、瞬く間に引き裂かれて消え去っていく。
「き、貴様は……まさか、100年前の聖女……!?」
魔将軍ガイストが、本能的な恐怖に全身をガタガタと震わせながら、私を見上げて絶叫した。
その瞳に映るのは、美しくも、絶対的な死をもたらす『最強の皇女』の姿。
「魔王の操り人形が、今の私をその名で呼ぶなと言ったはずよ。……我が帝国を脅かそうとしたその罪、その存在ごと、分子レベルで消滅させてあげますわ」
私は右手を天へと掲げた。
私の頭上に展開されたのは、世界の理を完全に超越した、超特大の特異魔法陣。
「――『聖王極氷覇(エターナル・ラプソディ)』」
私が掲げた手を静かに振り下ろした瞬間。
天から降り注いだのは、激しい光の雨。それは地表に触れた瞬間、爆発的な光と氷の奔流となり、リンの影によって拘束されていた数万の魔王軍、そして魔将軍ガイストを、文字通り『一瞬で完全に呑み込んだ』。
「ぎゃああああああああああああっっっ!!! 魔王様ぁぁぁぁっっっ!!!」
ガイストの断末魔の叫びは、凄まじい爆音と光の中に一瞬で掻き消された。
放たれた絶対消滅の光は、敵の肉体だけでなく、彼らが持っていた武器も、鎧も、そして浴びせようとしていた邪悪な呪念をも、すべてを完全に無に帰していく。
ドガァァァァァンッ!!!!
荒野全体が眩い光に包まれ、やがて――。
光が収まったそこには、数万の軍勢の死体はおろか、血の一滴すら残されていなかった。
あるのは、私の魔法によって、美しくも滑らかな結晶のような氷の平原へと作り変えられた、ただただ静寂な『銀世界』だけだった。
数万の軍勢を相手に、私たちは傷一つ負うことなく、どころかドレスの裾を少しも汚すことなく、ただの一撃ずつで完膚なきまでに完全粉砕したのだ。
「ふう……。少しお掃除が行き過ぎて、景色が変わってしまいましたわね、お兄様」
私が背中の魔力の翼をそっと消し、いつもの高貴な微笑みに戻って振り返ると、アルベルトお兄様は実に見事な、そして誇らしげな笑みを浮かべて私を抱きしめた。
「最高に美しかったよ、ローゼマリー。これほどの力を前にしては、魔王などただの哀れな道化に過ぎない。さあ、残る『封印の楔』はあと一つ……。それを破壊すれば、いよいよ魔王の息の根を止める時だ」
「はい、お兄様。これ以上の茶番は終わりにいたしましょう」
私の後ろで、リンが何事もなかったかのようにパッと衣服を整え、「お茶の準備をいたしますね」とおっとり微笑む。
確かな漆黒の絆を胸に、私たちは魔王ディルクの完全なる破滅、
そしてこの戦いの最終局面(クライマックス)へと向けて、
堂々と次なる一歩を踏み出すのだった。
コメント
1件
わあ、一気に畳みかける展開でしたね……! わずか3人で数万の軍勢を一蹴するお兄様とリンの連携、そこにローゼマリーが最後の一撃で封印する流れが本当に爽快でした。特に、大量の敵を「お掃除」扱いする余裕と、終わったあとにお茶の準備を始めるリンのギャップがにくいです。ローゼマリーが前世のトラウマを乗り越え、ここまでの力を見せてくれるのが読んでいてとても嬉しかったです🌷