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『偽りの無能、真の覚醒〜転生皇女はすべてを奪い返す〜』
数万の魔族の超軍勢と魔将軍ガイストを傷一つ負わずに一撃で粉砕した私たちは、ついに魔王ディルクの完全復活を阻止するための最終局面に至っていた。
大陸の最北端、吹き荒れる猛吹雪の奥にそびえ立つ『永久凍土の古城』。
その地下深くに隠された最果ての祭壇に、目的のものはあった。
「これが……最後の、3つ目の『封印の楔(くさび)』ですわね」
私の目の前で、禍々しくも圧倒的な漆黒の輝きを放ちながら宙に浮かんでいる、超巨大な魔導結晶。
これこそが、最上階の玉座で眠る魔王ディルクへと、今この瞬間も膨大な魔力を供給し続けている最後の力の源だった。
「気をつけて、ローゼマリー。前の2つとは比べものにならないほどの呪念が渦巻いている。……僕が先に防御結界で周囲を完全に遮断しよう」
アルベルトお兄様が銀髪をなびかせ、私を守るように前に出て美しい魔法陣を展開する。
「ローゼマリー様、お任せください。周囲に潜伏している罠の術式は、すべて私の影ナイフで切断いたしましたわ」
影からスッと現れた侍女のリンも、おっとりとした笑顔でありながら、いつでも動けるよう完璧なサポート体制を取ってくれている。
「ありがとう、お兄様、リン。……でも、もう終わりにしてあげるわ」
私が不敵な笑みを浮かべ、右手を最後の楔へと向け、覚醒した特異魔力を集中させようとした、その瞬間だった。
キィィィィィン――。
突如として、耳を裂くような高周波の音が響き、周囲の景色がぐにゃりと歪んだ。
お兄様やリンの姿がスローモーションになり、私の意識だけが、強制的に真っ暗な『精神世界』へと引きずり込まれたのだ。
◇
「……またこのパターンかしら。本当に、魔王ともあろう存在が往期が悪いわね」
私が腕を組んで冷ややかに呟くと、暗闇の奥から、血のように紅い瞳を持った漆黒の影――魔王ディルクの精神体が、ゆらりと姿を現した。
しかし、これまでの傲慢で狂気的な態度とは違い、その表情には明らかな「焦燥」と「恐怖」の色が滲み出ていた。
『待て、待つのだ……シャルロット……! いや、ガルディニア帝国の第一皇女、ローゼマリーよ!』
魔王は両手を上げ、私に対して敵意がないことを示すように、必死の形相で語りかけてきた。
『取引をしよう。お前ほどの圧倒的な魔力、そして100年前の聖女の魂を持つ者なら、私と手を組むに相応しい。どうだ? 私と共にこの大陸を支配しないか? バロア王国などという、お前を裏切り、無能と罵った愚かな国は、私の力で今すぐ跡形もなく滅ぼしてやろう!』
「……へえ?」
私が冷たく目を細めると、魔王は「手応えあり」と勘違いしたのか、さらに必死に言葉を紡ぐ。
『それだけではない! ガルディニア帝国もお前の意のままにしよう。お前を溺愛するあの兄も、あの侍女も、世界の王としてお前の足元に傅(かしず)かせてやる! お前が望むなら、私はお前の従順なしもべとなり、その強大な魔力を永久に捧げてもいい! だから……だから、その最後の楔を破壊するのだけは止めてくれ……っ!』
それは、かつて大陸の半分を焦土に変えたと言われる伝説の魔王の、見るも無惨な『命乞い』だった。
数万の大軍勢を一瞬で消滅させた私の規格外の力を前にして、彼は自分が完全に復活したところで、勝ち目が一切ないことを本能で悟ったのだ。
世界を二分する支配権。かつて自分を傷つけた者たちへの完全な復讐。そして魔王すらも従える絶対的な権力。
並の人間なら、その甘い誘惑に魂を売っていただろう。
しかし、私は心の底からくだらないというように、ふっと、残酷なまでに美しい冷笑を浮かべた。
「長々と喋るから何かと思えば……本当に、耳が腐るほど退屈な提案ね」
『な、何……っ!?』
「勘違いしないでちょうだい、弱小のネズミ。私が今、この手で握り締めている幸福はね、あなたに与えられるような安っぽいものじゃないのよ」
私は一歩、魔王の精神体へと近づいた。
その瞬間、私の内側から溢れ出した神々しい黄金と紫の覚醒魔力が、魔王の精神世界そのものをメリメリと侵食し、圧倒的な力で上書きしていく。
「お兄様もリンも、私の大切な新しい家族。彼らは私を縛るものでも、傅かせるものでもないわ。対等に愛し、信じ合える、世界で一番愛おしい存在よ。それを『支配』だなんて……、あなたのそんな薄汚い価値観と一緒にしないで」
『く、くそ……っ! 精神世界であるはずなのに、なぜこれほどの魔力圧が……っ!?』
恐怖に顔を歪ませ、後退りする魔王。
「それに、バロア王国への復讐なんて、とっくに私の手で終わらせているわ。今さらあなたのような過去の遺物に手伝ってもらう必要なんてないの。……命乞いをする相手と、持ちかける取引の価値くらい、少しは学習しなさい?」
私は右手を魔王の胸元へと突き出した。精神体であるはずの彼の身体が、私の魔力の波動だけでパキパキと凍りつき始める。
「さようなら、哀れな魔王。現代に蘇ったあなたの最大の不幸は……、最強となったこの私を、再び敵に回したことよ」
『ぎゃああああああああっっっ!!!』
私が指を鳴らした瞬間、魔王ディルクの精神体は、絶叫と共に粉々に砕け散り、闇の空間ごと完全に消滅した。
◇
ハッと意識が現実に戻る。
時間にして、わずか一瞬。お兄様もリンも、私が精神攻撃を受けていたことにすら気づかないほどの刹那の出来事だった。
「――消えなさい」
私は間髪入れずに、右手に溜めていた最大出力の特異魔法――『聖絶の氷華(ラグナロク・ローズ)』を、目の前の巨大な結晶へと解き放った。
ズガァァァァァンッ!!!!
最果ての祭壇が激しく震動し、眩い純白の光が部屋を埋め尽くす。
魔王の最後の命綱であった3つ目の『封印の楔』は、何の抵抗もできぬまま、光の塵となって跡形もなく完全消滅した。
「ふう……、これで本当に全ての楔が片付きましたわね」
私が振り返って微笑むと、アルベルトお兄様は安心したように微笑み、私の頭を優しく撫でてくれた。
「よくやったね、ローゼマリー。今、最上階にいる魔王の魔力が、完全に底を突いたのを感じたよ。……さあ、いよいよ次が最後の戦いだ。奴の息の根を止め、世界に本当の平和を取り戻そう」
「はい、お兄様。私たちの幸せな未来のために、一瞬で終わらせてあげましょう」
リンが差し出してくれた温かい紅茶で一口喉を潤し、
私たちは魔王ディルクが震えて待つ、
古城の最上階へと向けて歩き出すのだった。
コメント
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「魔王の甘言と、冷酷なる拒絶」、読了しました! ローゼマリアが魔王の命乞いと取引を一刀両断する場面、本当に清々しかったです。支配や復讐なんて安っぽいものじゃない、とお兄様とリンを「対等に愛し合える家族」と断言する台詞に胸が熱くなりました。魔王が完全に委縮していく姿も痛快で、最終決戦への期待が高まります✨ 最後までお二人とリンの絆を見届けたいです。次の話も楽しみにしていますね! (141字)
ねむ
74
#転生
コシ
103
耀聖(ようせい)
1,401
287