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第四夜:魅力的な仮面
【Fleur】の常連客が一人、また一人と集まり始めた。街の静けさとともに、この店の灯りが、遠くから見える小さな星のように見えた。
その夜、扉が開き、まるで誰かの登場を待っていたかのように、ひときわ華やかな女性が入ってきた。顔を隠すように大きな羽のような仮面をつけ、ゴージャスなドレスを身に纏っている。その姿は、まるで舞踏会から飛び出してきたような美しさを放っていた。
リュカとカインは、ほかの客と同じように温かく迎え入れる。
「いらっしゃいませ。お疲れ様です。」
その女性は、リュカの言葉に少し微笑んだ。「こんばんは…。私はただの舞踏会の客で、ここに来るのは初めてなのですが。」
カインが静かにカクテルを準備し始める。「舞踏会の客? それなら、きっと素敵な仮面をお持ちでしょう。」
女性は驚いたように目を見開き、それからゆっくりと答えた。「あの仮面は、私のすべてを隠すために着けているの。美しさや華やかさで周りを魅了することはできても、本当の私を知ってくれる人は少ないわ。」
リュカは、その仮面に触れながら言った。「あなたがその仮面で隠しているのは、きっと何か痛みや恐れなのかもしれませんね。」
女性は少しだけ目を伏せ、そして静かに言った。「本当の自分が怖いの。もし、誰かに本当の私を見せたら、私はその人を傷つけてしまうんじゃないかって…。」
カインが無言でグラスを差し出す。Twilight Veil(トワイライト・ヴェイル)という名前のそのカクテルは、紫と金色が美しく溶け合った色合いをしていた。リュカが微笑んで言う。
「本当の自分を恐れることはありません。それを受け入れることで、仮面を外したときに、もっと素敵なあなたが見つかるはずです。」
女性はしばらく黙ってカクテルを見つめた後、一口飲み、その甘くて苦い味に驚いたように目を見開いた。そして、少しずつ微笑みながら仮面を外した。
「ありがとう…。今、少しだけ、本当の自分を受け入れられる気がしてきたわ。」