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ルドミラの部屋を出て行こうとすると、ストレルカが慌しくやって来た。顔を青くてどうしたのだろう。



「ラスティ様、ラスティ様はいらっしゃいますか!?」

「ああ、俺ならここだ」

「大変なんです、ラスティ様……」



なにか言葉にしようとして詰まるストレルカ。呼吸が乱れている。一度、落ち着いてもらった。



「深呼吸をして」

「――すぅ。はぁ……お、落ち着きました」

「うん。で、どうしたの?」


「はい。海は大荒れ。客人・・のようです」



大荒れ、つまり“悪いヤツ”の意味だ。

となると敵の可能性が高い。


ストレルカは、オケアノスという大精霊と契約しているから周辺海域の情報を常にキャッチしているようだった。

だから、彼女がいれば天候だったり、通り過ぎる船だったり分かってしまう。


本当に凄い能力だ。


おかげで防衛の役にも立っていた。



「分かった。俺が様子を見に行こう」

「では、私も参りましょう」

「ルドミラは城を守るんだ。スコルやハヴァマールを守護して欲しい」


「ラスティくんのご命令では仕方ありませんね。無茶はしないで下さいよ」


「おう。それじゃ、エドゥとテオドールでも借りるよ」

「分かりました。城は、エドゥの作り出した『ゴーレム兵』とストレルカさんの召喚した『アクアナイト』に警備を当たらせます」


最近、エドゥは土塊つちくれから『ゴーレム兵』を作り出した。巨大なゴーレムだ。どうやら、イズアール大陸にいる『アイアンゴーレム』を模したものらしい。


巨大で耐久力もかなりある。

その剛腕でモンスターを排除してくれていた。



一方、ストレルカも召喚術で『アクアナイト』という“水”で出来たモンスターを三十も召喚していた。水だから攻撃しても死なないし、倒すは非常に困難。

水できた剣は、切れ味抜群。一撃で一刀両断されてしまう。


改めて詳細も見ておくか。



[ゴーレム兵]

[属性:地]

[種族:無]

[詳細]

大賢者の作り出したゴーレム。移動速度は遅いが、耐久値が非常に高い。壁としても有効だ。



[アクアナイト]

[属性:水]

[種族:精霊]

[詳細]

水の精霊騎士。

アクアブレイドは、物理・魔法攻撃を併せ持ち、高い攻撃力を誇る。稀に水属性魔法『ウォーターキャノン』を発射する。



――とまあ、拠点となっている城の警備は万全だった。万が一があっても、みんながいる。きっと大丈夫さ。


ルドミラ、ストレルカと別れ、俺は大広間でくつろぐエドゥとテオドールを捕まえた。


「危険が迫っているのですか」

「そうなんだ、エドゥ。君の力を借りたい」

「いいでしょう! 自分でよければ全力ですっ」


ノリノリで良かった。

テオドールは優雅に紅茶をすすっていた。


「ん~、脅威のニオイだね。こんな居心地のいい島を侵略かな」

「さあ? そいつに会ってみない事にはな。テオドールの力も借りたい」

「いいよ、面白そうだし」


ルドミラもだが、この二人には不老不死の力“エインヘリャル”が備わっている。だから、そう簡単には死なないはずだ。

以前、エドゥが腹を貫通する重傷を負った事があった。その時は傷があっと言う間に塞がっていた。効果は本当のようだ。


そういえば、テオドールはどこの部位にあるんだろうな。



* * *



城の外へ向かい、森を抜けていく。


かつて拠点にしていた家を抜け、浜辺へ。



「あれか。確かに不審船が停泊している」



森の影から様子を伺う。

船からは怪しい男達が現れ……え、なんだ? 女性を縄で縛って……は? こちらへ向かってくるぞ。



「…………奴隷船」



ぽつりとつぶやくエドゥ。

この状況に不快感を露わにしていた。

怒りさえにじみ出ているようだった。


気持ちは分かる。


奴隷だなんて……。



「へぇ、あれは連合国ニールセンの船だ。魔王アントニンの侵攻を受け、滅びてもある程度は生き残った民がいるだろうな」


冷静にテオドールがそう分析。俺も理解した。国がズタボロにやられて犯罪者が増えたのだろう。


それにしても奴隷とか。

これは助けるしかないようだな。



「俺が出る」

「ラスティ様、自分も出ます。女の身として、アレを見過ごすなど出来ませんから」

「分かった。ただ、本気は出し過ぎるな」



コクコクとうなずくエドゥ。

大丈夫かな。


とにかく、救出開始だな。

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