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ゆゆゆゆ
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ゆゆゆゆ
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夕暮れだった。
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小さな生存者の集落。
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物資交換の最中。
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エリオットはいつも通りだった。
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誰にでも笑顔。
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誰にでも優しい。
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だから。
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問題が起きた。
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「また会いたいな」
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集落の若い男が言った。
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エリオットの手を少し長く握ったまま。
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「今度は二人で話そうよ」
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「はは、機会があったらね」
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エリオットは上手くかわした。
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だが。
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少し離れた場所で弾薬を確認していたピザガイは、そのやり取りを全部見ていた。
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全部。
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しっかり。
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帰り道。
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車内は静かだった。
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異様なほど。
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「……」
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「……」
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エリオットは横を見る。
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運転席の男は無言。
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いつも以上に。
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無言。
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「ピザガイ」
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「なんだ」
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「怒ってる?」
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「別に」
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怒っていた。
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ものすごく分かりやすかった。
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エリオットは少し考えて。
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それから。
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わざと笑った。
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「ねえ」
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「なんだ」
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「気付いてた?」
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「何をだ」
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「あの人」
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少し間を置いて。
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「僕を狙ってたよ」
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車がわずかに蛇行した。
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「前見て!」
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「見てる」
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見ていなかった。
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エリオットは吹き出す。
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「やっぱり気付いてたんだ」
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ピザガイは答えない。
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答えないが。
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耳が少し赤い。
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それを見て。
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エリオットはなぜか嬉しくなった。
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夜。
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セーフハウス。
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ランタンの灯りだけが揺れている。
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外では風が鳴っていた。
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エリオットは毛布にくるまりながら笑う。
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「まだ怒ってる?」
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返事はない。
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その代わり。
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ピザガイが隣へ腰を下ろした。
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近い。
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「……」
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「……」
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視線が合う。
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黒い瞳。
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青い瞳。
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どちらも逸らさない。
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「エリオット」
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「ん?」
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低い声。
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「お前は」
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言葉が途切れる。
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不器用な男だった。
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昔から。
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本当に言いたいことほど。
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上手く言えない。
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だから。
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エリオットは黙って待った。
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数秒後。
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「気を付けろ」
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それが精一杯だった。
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エリオットは笑う。
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「心配してくれてるの?」
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「当然だ」
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即答だった。
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その答えに。
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今度はエリオットの方が少し照れる。
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部屋の空気が静かになる。
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近くにいるだけなのに。
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妙に胸が落ち着かない。
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やがて。
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ピザガイの手が伸びる。
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エリオットの頬へ。
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大きな手。
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温かい手。
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何度も自分を守ってくれた手。
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「……」
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エリオットは目を閉じる。
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額が触れる。
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肩が触れる。
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誰も言葉にしない。
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ただ。
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失いたくないという気持ちだけが伝わってくる。
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翌朝。
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エリオットは鏡代わりの窓ガラスを見て固まった。
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「うわ」
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首元。
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襟のすぐ上。
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目立つ赤い跡。
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「ピザガイ」
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「なんだ」
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「これ」
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「……」
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「隠れないんだけど」
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沈黙。
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数秒後。
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「制服の襟を上げろ」
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「解決してないよ!」
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エリオットの抗議が朝のセーフハウスに響く。
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その横でピザガイは珍しく視線を逸らしていた。
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耳だけ少し赤くなりながら。
コメント
2件
ピザガイ......尊すぎて死ぬわ天才ですね。