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なぁ!お前!俺の副船長になってくれ!
はぁ?!
思えば、一目惚れだったと思う。 引き締まった体に風に靡く綺麗な黒髪。
自分にソッチの気があると認めたくなくて、蓋をしていた。
気づけば四皇という立場まで上ってしまった
「ベック」
「おう、お頭」
強引な誘いだったというのにここまで付いてくるこいつもこいつだと思う。
「調子はどうだ?」
「あんたがそんなこと聞いてくるなんて珍しいな」
「明日は槍が降ってくるかもしれねぇ」
「なんだとこいつぅ!」
「ははっ、すまんすまん」
これでよかった これだけでよかった
思いを伝えられなくとも、お前がどれだけ女遊びしていようとも
結果的にお前の隣は俺だったから
「本命ができたんだ…」
「は?」
酒の席だった。大事な話があると誘われ行ってみたらこれだ
「それ、は、どういう」
「俺の人生を捧げてもいいって女ができた」
「表情がコロコロ変わって、ドジで、天然で、でも芯が通っていて」
「いい女だ」
惚れた男の惚れた女の話を聞かされるってのは
どんな拷問だ、
「…お前がそこまでいうなんて、さぞかしいい女だろうなぁ」
今すぐこの場を去りたい気持ちを我慢し必死に考えた言葉でごまかす
「あぁ、俺なんかにゃもったいねぇような」
あぁ、もう、
限界だ
(ガタッ)
「?どうした、お頭」
「すまん、酒を飲みすぎたみたいだ、お前も酔ってるだろ?明日聞く」
「あ、おい」
早口でそれを伝えドアの音を立て去る
自室に戻ってベットに埋もれる
おれが気持ちを伝えていたら、俺が誘わなかったら、俺が、
「あぁ、だめだな、もしもの話なんて、意味が無い」
明日からは、普通に、船長として
コンコン
考え事をしていて気づかなかったが副船長の気配がした
「お頭、酒を飲みすぎたといっていたがあんた宴であれより飲んでるだろ?」
「変だぞ」
「…ッ!」
誰のせいで…ッ!
違う、俺のせいだ、気持ちを伝えなかったから、
伝える勇気すらでなかったから
「……いやぁ、先を越されちまったなぁと思って」
「……入るぞ」
「は、まて、今はやめっ!」
「…お頭」
「なんで泣いてんだ」
気づかなかった、顔がぐしゃぐしゃで大粒の涙が流れていることに
「めでたいから、」
「違うだろ」
「違わない…ッ」
「違う!」
「じゃあッ!!!なんだって言うんだよ!!!」
「俺に何を言わせようとしてるんだ……」
しばらくの間静粛が流れ、副船長がやっと口にした言葉は
「…すまなかった」
(ガチャ)
ゆっくりとドアが閉まり気配が遠ざかっていく
すまなかったって、なんだよ
気づいてたんなら拒絶しろよ、
なんで何も言わないんだ
いっそ思いっきり嫌ってくれた方が楽だった
「はは、」
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数日、数週間と副船長を避ける
さすがに仲間も異変に気づいたようで何かと気遣ってくる
申し訳ないと思いながらも話し合いをする気は起きなかった
結婚式にはさすがに出席した
ただの船長という仮面を被って
これで、終わり
END