赤×水《※超長文・季節感バラバラ》
#死ぬまでにしたい100の事_.
『 君と最後の季節を 』
病室の天井はいつも何処か冷たくて、無機質で、僕の現実をまざまざと見せつけてくる。
『――余命、半年から1年です』
医師が淡々と告げたその言葉は、僕の中に静かに沈んだ。
暴れもしない、泣きもしない。
ただ、赤ちゃんの手の温度だけが、怖いくらい鮮明だった。
水「多くて1年、か……」
水「やりたい事いっぱいあったのになぁっ……」
赤「……ならさ、やりたい事、やろうよ。全部」
赤ちゃんがそう言った時、僕はやっと息が出来た気がした。
そうだ。
終わりが見えているなら、せめて僕の命は赤ちゃんと一緒に彩っていきたい。
そうして僕らは、”死ぬまでにしたい100の事”を始めたんだ。
No.01_海に行く。
冬の終わりの海は、人気も少なくて、
静かに波が寄せて返す音だけが響いていた。
手を繋いで、少し寒い砂浜を歩く。
赤ちゃんは僕の指先をぎゅッ…と握りしめてくれて、
手袋なんて必要ないくらい温かい。
水「波、冷たそうだね ~ ッ…」
赤「冷たいよ、触ってみる?」
靴を脱いで、赤ちゃんがはしゃぐ様に波打ち際に駆けて行ったから、
僕もその背中を追いかける。
寒さよりも、その笑顔の眩しさに息を呑んだ。
No.02_クレープを半分こする。
駅前の屋台で、いちご生クリームのクレープを買った。
赤「甘いの久しぶりかもッ…笑」
なんて言いながら赤ちゃんが一口頬張ると、
赤「ん、あ ~ ん……」
水「ぁ ~ ~ むッッ…‼︎✨」
水「ん ~ ッ、うんまぁ ~ ~ っ✨」
赤「んふッ…かわい ~ っ…」
水「ぁれ、これ僕の方が食べてないッ……?」
赤「いや、俺の方が食べてんじゃない…?」
そんな子供みたいな会話がやけに嬉しくて、
何でもないこの瞬間が、大切な”ひとつ”になった。
No.03_一緒に映画を観る。
2人でこたつに潜って、ポップコーンのボウルを抱えて映画を観た。
選んだのは、最近人気のラブコメ映画。
赤「こ ~ いうの、普段観るっけ…?」
水「普段は見ないけど……、赤ちゃんとなら観たいなぁって…♪」
赤「そっか…笑」
赤ちゃんは少し恥ずかしそうに笑ったけど、
途中で僕が泣き出した時は黙って肩を貸してくれた。
感情が不安定になるのは薬のせいじゃない。
赤ちゃんの優しさに、何度でも泣いてしまうだけ。
No.04_お揃いのマグカップを買う。
雑貨屋で見つけた、狐と狼のマグカップ。
赤「これ、お揃いにしよ ~ ‼︎」
水「赤色じゃなくてい ~ の……?」
水「水と一緒なら何でも使うよ」
そう言って微笑んだ赤ちゃんが、僕の頭を優しく撫でる。
嬉しかった。
お揃いが、こんなにも心を温めてくれるなんて。
No.05_夜の散歩をする。
日が落ちた後、2人で静かな住宅街を歩いた。
水「こ ~ いうの、なんかわくわくするよねッ‼︎」
赤「うん、なんか秘密の時間みたい…笑」
風の音、街灯の明かり、遠くの犬の鳴き声。
全てが僕達だけの世界みたいで、何も話さなくても心が満たされていった。
No.06_神社で御神籤を引く。
ちょっと遅い初詣。
赤「俺大吉だった ~ ‼︎」
赤ちゃんが子供みたいに喜ぶ横で、僕は末吉を引いた。
水「僕末吉 ~ っ……」
そう言って肩を落としたふりをする。
水( 全然嫌じゃないけど…笑 )
赤「じゃあ俺の運、半分こしよっ?」
水「ど ~ やって…?」
赤「キスで分ける」
水「なにそれッ笑」
冗談まじりに言って、でもちゃんとキスはしてきた。
そんな赤ちゃんに赤面するのは僕の方。
No.07_駅で見送る側になる。
別にしたいかって言われれば、そ ~ でもない。
けど、いつも見送られる側だし一回くらいはやっておこうかな ~ なんて。
この日は赤ちゃんが出張で朝早く出発する日で、僕が駅の改札で手を振る。
赤「行きたくな ~ い………」
水「そろそろ離れないと電車来ちゃうよ ~ ッ…?」
水「寂しいね ~ ……」
赤「ん、すぐ帰って来るからッ…、!」
水「うんッ、頑張ってねっ…‼︎」
手を振って、ドアが閉まる寸前まで目が離せなかった。
会えない数日が、いつも以上に寂しい。
No.08_カラオケで熱唱する。
赤「次水の番 ~ ッ‼︎」
水「90点目指すっ!!」
赤ちゃんからマイクを華麗に受け取って選んだのは、
大好きなバンドの昔好きだった曲。
音外しまくって、2人で爆笑して。
それでも『大好きだよ』って何度も言ってくれた赤ちゃんの声が、
マイク越しじゃなくて心に響いてた。
No.09_愛する彼氏にお弁当を作る。
朝、早起きして作ったお弁当。
慣れない手つきで卵焼きを焼いた。
ちょっと焦げたのは内緒。
赤「これ、もしかして……水が?」
水「もしかしなくても僕です」
赤「ちょ ~ んまい…‼︎」
赤ちゃんは、それを何よりも美味しそうに食べてくれた。
『毎日食べたい』って言うから、来週も作る事にする。
No.10_ひとつの傘で帰る。
急な雨。傘は赤ちゃんが持ってる一つだけ。
赤「……もっとこっち寄りな ~ …?」
僕を引き寄せながら言った赤ちゃんの隣に入って、
肩が触れた。
雨の匂いと、赤ちゃんの体温。
その距離が何だか恋人みたいで。
いや、実際恋人なんだけど、改めて感じた。
水「雨の日も案外悪くないかも…✨」
赤「そう思ってくれた良かった」
雨音の中で交わした、何気ない言葉があたたかかった。
No.11_赤ちゃんに手料理を作ってもらう。
赤「今日は俺が作る番ねッ…♪」
そう言って、エプロン姿の赤ちゃんがキッチンに立っていた。
包丁の音、煮える音。
どれも全部愛情みたいで。
食卓に並んだのは、僕の大好物のシチューと、焼きたてのパン。
赤「熱いから気を付けてね ~ ッ……」
口元を拭ってくれる仕草に、好きが溢れそうになるのを隠すので必死だった。
No.12_花火を一緒に見る。
季節外れの、町内の小さな花火大会。
水「間に合ったね ~ ~ ッッ‼︎」
赤「うんッ、間に合ったッ……」
夜空に咲く火花の音が、何処か心臓の鼓動に似ている。
僕達は手を繋いで煙の残る空をずっと見ていた。
最後の一発が上がった瞬間、赤ちゃんがそっ…と耳元で囁く。
赤「……一緒にいられて良かった」
涙が出たけど……、きっと夜空のせいでばれてない。
No.13_一緒に昼寝をする。
午後の光が、リビングのカーテン越しに差し込んでいて。
赤「ちょっとだけ……寝よっか?」
水「うん…!」
隣で赤ちゃんが静かに呼吸している音が、
子守唄みたいに聞こえる。
目を閉じている間も、
赤ちゃんの指先が僕の髪に触れているのを感じていた。
“今”を味わうだけで、こんなにも穏やかになれるんだって、知った日。
No.14_苦手な野菜を克服。
水「ぴーまんッ……むり……」
赤「大丈夫だよ、俺が炒めたら美味しいから笑」
ほんとかなって思いながら一口。
……あ、美味しい。
赤「食べれた…?」
水「うんッ‼︎すごい‼︎✨」
赤ちゃんは『ほらね!』って得意げだったけど、
僕にはその笑顔の方が何倍も甘くて、また恋に落ちた。
No.15_雪の日にデートする。
降り始めた雪が、街を静かに染めていく。
僕達はマフラーを半分こして歩いた。
赤「…手、冷たくない?」
水「ん ~ ん、あったかいよ ~ ?」
赤「………ばか」
水「ぇッ…?」
赤「冷たいのばればれ。ほら、手貸して」
水「……ばれてたかッ、笑」
赤「当たり前でしょ、俺彼氏なんだから…笑」
全部見透かされているみたいで、な ~ んか不思議な気持ち。
人混みも喧騒も遠くにあって、音が全部吸い込まれていくみたいで。
雪が積もったら、雪だるま作りたいな。
赤「……じゃあ、2人で小さいの作ろ」
水「……ッ!うんっ!」
やっぱ大好きだなぁ…なんて。
今のこの想いも、雪の下にそっと埋めて残したいと思った。
No.16_写真を撮る。
ポラロイドカメラを使って、1日だけで何十枚も撮った。
笑って、拗ねて、戯れ合って。
赤「……かわい」
水「……?どれが ~ …?」
赤「全部……水が映ってる写真全部可愛い」
水「ふふッ……ありがとッ…笑」
現像されたその一枚一枚が、僕の心のアルバムに刻まれていく。
__消えない記憶を、作るために。
No.17_お揃いのリングを買う。
シンプルなシルバーの指輪。
刻印は入れていない。
でも、それが僕達らしいと思った。
水「赤ちゃんッ…!」
赤「ん ~ ?」
水「付けてくれるッ…?」
赤「勿論」
赤ちゃんに頼んだら、少しぎこちない手つきで、
でも優しく僕の左薬指に滑らせてくれた。
水「……僕の人生に、赤ちゃんが居てくれて良かった」
赤「……ッッ‼︎」
言葉が漏れて、赤ちゃんが僕の手をきゅッ…と握った。
No.18_動物カフェに行く。
猫が戯れついてきて赤ちゃんが笑ってる。
僕の膝にも、ふわふわの子が飛び乗ってきた。
水「かわいいっ……‼︎✨」
赤「俺も、今の水の方がかわいいって思った」
そんな台詞、よくもまぁ平然と言えるなって思ったけど、
……嬉しかったから何も言い返せなかった。
No.19_他人のフリをしてデートする。
赤「…初めまして、赤と申します」
水「水です、今日はよろしくお願いします」
って、喫茶店でわざと他人のフリをしてデートした。
でも途中で笑いが止まらなくなって、
水「他人じゃないもんねッ…笑」
赤「……うん、水は俺の大切な人だもんッ笑」
くだらないのに、心の奥がくすぐったくて。
何でもない遊びでも、思い出になってしまうのが怖かった。
それでも、胸の奥がふわふわしたのには変わらない。
何度恋に落ちたって足りないなぁ…って改めて思った日。
No.20_星空を見に行く。
郊外まで走って、夜の空を見上げた。
満天の星。
水「……星って、昔の光なんだよね ~ …?」
赤「うんッ、何千年も前の」
水「じゃあ僕達も、未来の誰かに届くような光になれるかなぁッ…笑」
赤ちゃんは返事をしなかったけど、そっと僕の肩を抱いてくれた。
沈黙が優しい夜風に溶けていく。
僕も赤ちゃんも、誰かにとって大切な光だったらいいな。
No.21_朝日を一緒に見る。
前の晩、眠れなくて。
赤「ど ~ せなら朝日見に行こっか」
って赤ちゃんが言い出してくれた。
2人で毛布を持って丘の上に登る。
寒くて、でも赤ちゃんの手が温かくて。
空が少しずつ朱に染まっていくのを、ただ並んで見ていた。
水「……生きてて良かったなぁ…」
何て僕が呟いたら、赤ちゃんが微笑んで頭を撫でてくれた。
No.22_本屋で好きなだけ本を選ぶ。
赤「好きなだけ選んで良いよ ~ 」
赤ちゃんにそう言われて、ちょっと笑っちゃった。
僕は楽しくて、あんま ~ り静かじゃない物語が好き。
一つ一つ背表紙をなぞって、赤ちゃんと相談して、
何冊もカゴに入れて。
赤「読み終わったら、感想聞かせてねッ…♪」
赤ちゃんはそれを聞くのが好きなんだって。
そうやって、時間を分け合ってる気がした。
No.23_彼氏の実家に行く。
少し緊張してたけど、
赤ちゃんのお母さんが出迎えてくれた時の笑顔に、
心が緩んだ。
『うちの子、本当に水くんの話ばっかりなんだよね ~ 』
少し恥ずかしくて、でも嬉しかった。
赤ちゃんの部屋には、
昔の卒業証書とか、
部活の写真があって。
水「あッ、‼︎この頃の赤ちゃん、今よりちょっと子供だ ~ ‼︎」
赤「うるさいッ…!笑」
笑い合って、僕はその家の空気に少しだけ触れさせてもらった。
No.24_お互いに手紙を書く。
ある夜、
赤「手紙書かないッ……?」
って赤ちゃんが言った。
声じゃなくて、言葉に残したいんだって。
僕は未来の赤ちゃん宛に書いた。
“出会ってくれてありがとう”
“僕の命に意味をくれてありがとう”
そして封を閉じて、交換した。
水「いっっぱい愛情入れといたっ…‼︎✨」
赤「読まずに持ってるねッ…笑」
僕も赤ちゃんの手紙は開けてない。
多分、ずっとそのままだ。
No.25_懐かしい制服を着てみる。
部屋の奥にしまってた高校の制服を取り出した。
少しぶかぶかになっていて、時間の流れを感じた。
水「どぉ ~ ~ ?」
赤「 ~ ~ ~ ~ っっ、‼︎」
水「……?」
赤「似合ってるッ、かわいい……、」
水「えへへッ、ありがとっ…!!」
赤「俺の制服姿も見る……?」
水「見たいっ…‼︎」
って赤ちゃんが着てくれたら、逆にちょっとドキドキしちゃった。
水「学生時代に出会ってたら、ど ~ なってたかなぁ…笑」
赤「多分、俺が一目惚れしてたと思う」
そんな事言える赤ちゃんが、本当にずるくてかっこいい。
No.26_苦手なホラー映画を一緒に観る。
僕はホラーが苦手。
でも、赤ちゃんは好きらしい。
だから挑戦してみようって思った。
赤「大丈夫だよ、俺がついてるから」
始まって3分で僕の手は赤ちゃんの袖を握ってて、
叫び声に反応する度に、
赤ちゃんが肩をぽんぽんッ…ってしてくれた。
エンドロールが流れた時、
赤「……頑張ったね」
水「んッ、……」
って頭撫でてくれて。
怖かったのに、何処か胸がぽかぽかしてた。
No.27_水族館で手を繋ぐ。
青い光に包まれて、ゆっくり泳ぐ魚たち。
赤「ここ、落ち着くね」
水「………うんっ、」
赤ちゃんが僕の手をそっと取った。
大人が多かったから少し恥ずかしかったけど、
手だけは離したくない。
海月の水槽の前で、光に揺れる影を見る。
『この時間、永遠に続けば良いのに』
なんて思ってしまった。
No.28_2人だけの記念日を作る。
特別な日でも何でもないけど、
赤「今日記念日にしよっか」
って赤ちゃんが言った。
水「何の ~ ?」
赤「ん ~ ……、俺が水にキスした日、?」
水「そんな日、何度もあるじゃんッ…笑」
赤「今日のは一段特別って事、…‼︎」
そう言って僕の頬にそっと触れて。
不意打ちのような優しさに、僕は目を閉じる。
“今日”が永遠のように感じられる瞬間だった。
No.29_何処かに名前を刻む。
人気のない海辺の堤防に、2人でこっそり名前を刻んだ。
指で、削れても見えなくても良いように、深く。
水「……ここに確かに、僕らが居たって証になればなぁ…」
波の音にかき消されながらも、
その記憶だけは、何処までも色濃く残った。
その日最後に感じたのは、優しく恋人繋ぎしてくれる赤ちゃんの手の温かさ。
No.30_赤ちゃんの膝枕で昼寝する。
赤「最近……、ちゃんと寝れてるッ、?」
心配そうに言う赤ちゃんに頷いてみせたけど、
目の下のクマは、嘘を許してくれなかった。
赤「ほら、こっちおいで」
赤ちゃんの太ももに頭を預けると、
彼の手が優しく髪を撫でてくれる。
その挙句、心地良い温もりに包まれて、
ゆっくりと瞼が落ちてきた。
夢と現実の狭間で赤ちゃんの声が聞こえる。
赤「……水が生きてる、それだけで十分だよ ~ っ、」
No.31_好きな香りの柔軟剤を一緒に選ぶ。
薬の匂いが染み付いた部屋に、優しい香りが欲しくなって。
スーパーの柔軟剤コーナーで2人でキャップを開けては、
赤「これ、ど ~ ?」
水「あッ、それ好きかもっ…‼︎」
なんて笑い合った。
最終的に選んだのは、ミルクティーの様な香りのもの。
それから暫く、僕の枕からはその香りがして、
朝起きて赤ちゃんの腕の中にいる時、
2人の呼吸がふわッ…と混ざった。
No.32_一緒に料理をする。
赤「イタリア料理にチャレンジするッ…‼︎✨」
そう言った赤ちゃんの後ろから、僕はそっと覗き込む。
水「それ…、ちょっと塩多過ぎじゃ無い…?笑」
赤「ぅッ……やっぱり水も手伝って、」
実はイタリア料理を少 ~ しだけ修行した事がある僕。
結局2人でキッチンに立って。
僕が刻んで、赤ちゃんが炒めて。
味見しながら笑って、少し焦がした事さえも愛おしかった。
その日作ったパスタの味、今でもちゃんと覚えてるよ。
No.33_お揃いの靴を買う。
ウィンドウ越しに見かけた、シンプルなスニーカー。
赤「ぁ、これ…水に似合いそう…」
水「赤ちゃんも履いたら、きっと似合うよッ…‼︎」
そんなやり取りをしながら、結局色違いで買った。
赤「履き潰すまで、一緒に履こ ~ ね…笑」
そう言って赤ちゃんが笑った時、
僕は少しだけ、未来に希望を感じてしまった。
No.34_赤ちゃんの寝顔を写真に撮る。
珍しく赤ちゃんが先に眠ってた夜。
水「…お仕事頑張ったんだねッ、…」
そう呟いて赤ちゃんのさらさらな髪をゆっくり撫でる。
整った睫毛と、柔らかそうな頬。
見てるだけじゃ足りなくて、こっそり写真に残す事に。
“かしゃッ…”という音に少し肩をすくめながら、
水「大好きだよッ…、‼︎」
そう言って赤ちゃんに抱き付いた。
水「…………んふッ、♪」
画面に残るその寝顔は、きっと、ずっと僕の宝物になる。
No.35_オーロラが綺麗に見える場所へ行く。
夜の高速を走って、山奥のオーロラが見える丘へ。
空いっぱいに広がるグラデーションに、思わず息を呑んだ。
水「……ねッ、今ここで願ったら叶う気がするっ…‼︎」
赤「何を願うの…?」
赤ちゃんが聞いてくるから、僕は少し黙って
水「……明日も、隣に居られますよ ~ に」
そう願った。
No.36_ペアリングを作る。
赤「既製品じゃなくて、自分達で作らない?」
そう提案したのは赤ちゃん。
彫金体験の工房で、お互いの指のサイズを測って、
無言で集中して、リングに刻印を打った。
小さく、”L&H”。
赤ちゃんが僕の指にはめてくれて、
赤「一生分の約束、ここに込めたから」
その言葉が、今でも僕の左手に残ってる。
No.37_赤ちゃんの誕生日をサプライズで祝う。
こっそり計画を練って、飾り付けも料理も頑張った。
赤ちゃんが部屋に入ってきた瞬間、目を丸くして
赤「……何これッ、やばいッ…泣きそ……」
水「泣くのは僕の方だよ ~ ッ笑」
2人でケーキの蝋燭を消して、
2人でプレゼントを開けて、
2人でこのまま歳を重ねて行けたら良いのにって、少しだけ思った。
No.38_『また明日ね』と言い合う日々を大切にする。
何でもない1日の終わり、
同棲前に赤ちゃんが言ってくれていた『また明日ね』。
その言葉が、僕にとっては奇跡の様だった。
『明日』がくる保証なんて僕には無いのに。
当たり前の様に繰り返されるその言葉が、
僕の世界を柔らかくしてくれる。
だから毎晩心の中で、そっと言い返してるんだ。
水「うんッ、また明日ねっ…‼︎」
って。
No.39_赤ちゃんと浴衣で夏祭りに行く。
この前花火を2人で見た、小さな町。
初めて袖を通した紺色の浴衣、赤ちゃんは思わず吹き出してた。
赤「…水ッ、ちょっと……想像以上に可愛くて反則…」
堤灯の灯りがぼんやり僕らを照らす。
手を繋いで歩くだけで、胸が少し痛くなる程幸せに感じる。
りんご飴を一口分け合って、
何気ない夏の一夜が永遠の様だった。
No.40_金木犀の香りを一緒に吸い込む。
秋が近づいたある日、街路樹の足元からふわっと香りがした。
水「あッ、!金木犀だ ~ っ!」
って僕が言ったら、
赤「ぁッ、ほんとだ…笑」
赤ちゃんも同時にそう笑った。
赤「この香り、水のイメージなんだよね…」
水「……それって、嬉しいのかなッ、??」
赤「勿論。優しくて、でも何処か切ない、そんなとこッ、!」
その言葉が胸に沁みて、僕はそっと手を握り返した。
No.41_観覧車の頂上でキスする。
夜景が小さく瞬く観覧車の頂上。
僕らの手は、自然に重なっていた。
水「……ここから落ちても、赤ちゃんと一緒ならい ~ かも」
赤「やめてッ、そ ~ いうの……、笑」
って赤ちゃんが笑った直後、
彼の唇がそっと僕に触れた。
密閉された空間の中で、誰にも邪魔されない時間。
あれはきっと、世界で1番静かで、1番甘いキスだった。
No.42_お互いの誕生日を一年分祝う。
赤「今年は一回きりじゃ足りないでしょ…ッ‼︎」
って赤ちゃんが笑って、
1ヶ月に1回ずつ、誕生日ごっこをする事になった。
小さなケーキと、小さなプレゼントと、
いつもよりちょっと長めの『おめでとう』。
僕が照れて
水「またやるのッ……?笑」
って聞いても、赤ちゃんは毎回きちんと蝋燭を灯してくれた。
沢山の”おめでとう”が胸に沁みてる、今日この頃。
No.43_将来の夢を語る。
赤「もしッ、もっと生きれたら……何がしたい?」
赤ちゃんに問われて、僕は少し黙った。
水「小さなカフェやりたいなぁ…」
水「植物いっぱいの、静かなとこっ‼︎」
赤「じゃあ、俺が看板作る」
って笑う赤ちゃん。
叶わないかもしれない未来の話なのに、
彼は何処までも真剣で、温かくて。
それだけで、僕は胸の奥がいっぱいになる。
No.44_一緒に本を読む。
体調が悪くて動けない日。
赤「俺が本読んであげる」
赤ちゃんが開いたのは、僕が昔好きだった童話。
優しい声が、ページを捲るたびに僕の耳に降ってくる。
眠る様に、でも目覚める様に、
僕の中で何かがふっとほどけていった。
赤「……無理しなくてい ~ んだよッ、」
No.45_手紙を100通書く。
前に未来の赤ちゃんへの手紙を書いてから、
時間のある日は、少しずつ、赤ちゃんへの手紙を書く事にした。
日記じゃなくて、ちゃんと『赤ちゃんへ』って書き始めるやつ。
あと何通書けるか分からないけど、
届く限りの”好き”を丁寧に綴ってる。
水「いつか読んでくれますよ ~ に…‼︎」
なんて願いながら封を閉じる毎日。
No.46_雪の中で雪合戦をする。
滅多に雪が積もらない街で、ある日、起きたら外が真っ白だった。
水「ほぁっ………✨」
赤ちゃんと外に飛び出して、久しぶりに無邪気に笑った。
本気で雪玉を投げ合って、僕が転んだ時、
赤ちゃんに笑われながら言われた一言。
赤「やっぱ水、反射神経ないよねッ…笑」
水「うるさいなぁ…笑」
それでも嬉しかった。
こんなに寒いのに、心は温かくて仕方がなかったから。
No.47_朝焼けを見ながらご飯を食べる。
水「今日は早起きしよっ…!」
そんな約束をして、まだ空が紺色のうちに目を覚ました。
近所の高台で毛布に包まりながら、コンビニのおにぎりとスープを分け合う。
空が次第にじわじわと赤く染まっていく。
赤「……俺、水とこ ~ いう朝が毎日でも良い」
僕もだよ、って喉まで出かけた言葉を、
溢れないように、そっと唇を噛んで飲み込んだ。
No.48_2人だけのオリジナル曲を作る。
赤ちゃんはギターが弾けて、僕は詩を書くのが好きだった。
2人で作った歌は、静かで、何処か優しくて、でも少し切ない。
赤「……歌詞、水が書いたんでしょ…?」
水「うん?」
赤「ずるいじゃんッ……もう……」
涙を流しながら赤ちゃんが言って、でも頑張って歌詞は覚えて。
録音した音源は、今も僕のスマホの中にある。
未来で赤ちゃんが聞いてくれたらいいな、なんて思いながら。
No.49_即興でラジオを録る。
赤ちゃんが不意に、
赤「ねッ、水、ラジオっぽく喋ってみてよ」
なんて言うから、スマホを置いて録音モードにして、
水「ど ~ もこんばんは ~ 、深夜2時の”水のひととき”ですっ…!」
ってふざけてみた。
赤「わッ、めっちゃ好きそれッッ……笑」
それを聞いて目を細めて笑う赤ちゃんに、きゅんとしてしまう。
何でもない時間を残せるかたちにしたら、
未来の僕が聞き返してもまた赤ちゃんを好きになるんだろ ~ なぁ…。
No.50_『愛してる』と素直に伝えてみる。
水「ねッ、赤ちゃんっ……」
赤「ん ~ …?どしたの…?」
水「僕が伝えたい事……、聞いてくれる…?」
少し震える声で言ったら、
赤「うん、何でも言ってみな」
って、すぐに顔を向けてくれた。
水「僕ッ、赤ちゃんの事……、世界で1番愛してるっ、‼︎」
その瞬間、赤ちゃんの瞳がふわっと揺れた。
赤「俺もだよ、水。世界の何より、水の事愛してる」
そう僕に微笑みを向ける赤ちゃんに、
涙を流しながら抱き付くのは、やっぱり僕の方。
『愛してる』。
高校1年生の時に付き合って、
6年経った今でも、
『愛してる』の気持ちだけは変わってないよ。
Next _ 51 ~ 100.
読んでくれてありがとうございます…‼︎🥹🫶
コメント
29件
わーん😿😿 …ほんとに、最後のお願いで寿命伸びるとかないかな……🤔
ねぇ本当に大好きなんだがぁぁ ~🥹🫵🏻💞 リクエスト答えてくれてありがとぅ❕ 一日の最後に水くんが言う言葉がリアルでありそうすぎて……🥲🎀 No.45の、手紙を100通書く…とか、赤くん読んだら絶対泣いちゃうよ ~って想像しながら絶対僕も泣いちゃうっていう🙄( ( 水くんにずっと寄り添ってあげる赤くん本当に優しい、一生二人の幸せな時間を過ごして欲しいなぁ…
わぁ~!投稿ありがと~ございます! 最高ですッ!全部好きなんですけど、1番、『また明日ね』と言い合う日々を大切にする、がどこかともなく切なくて好きです! これからも頑張ってください!