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◆第5話(独占、崩れる)
静かになった階段。
ぷりっつがいなくなっても、空気は戻らない。
むしろ——
さっきより近い。
「……けちゃ」
まぜたが低く呼ぶ。
そのまま、ぐっと手を引かれる。
「え、っ……」
一歩、バランス崩して——
そのまま腕の中。
「ちょ、まぜた先輩……」
距離、ゼロ。
近いどころじゃない。
「さっきの、やだ」
ぼそっと落ちる声。
「ぷりっつと話してるの」
「ただ話してただけですよ……?」
そう言うと、
「わかってる」
即答。
でも——
「でも無理」
そのまま、さらに引き寄せられる。
逃げようとしても、
「逃げんなって」
軽く押さえられる。
強くないのに、離れられない。
(心臓やばい……)
その横で、
「まぜた、やりすぎ」
あっとくんが苦笑する。
でも——
「……止めないんですね」
思わず言うと、
「止めたら俺の番なくなるし」
って、さらっと返される。
(え……?)
意味を理解する前に——
「けちゃ」
今度はあっとくん。
反対側から手を取られる。
完全に逃げ場なし。
「……先輩たち、ほんとずるいです」
小さく言うと、
「知ってる」
まぜたが即答。
そのまま——
少しだけ顔が近づく。
「他のやつとああやって話すなら」
低い声。
真っ直ぐな目。
「俺らの前で、それ以上の顔して」
「……え?」
理解が追いつかない。
「じゃないと、無理」
距離がさらに縮まる。
息、かかるくらい近い。
(近い……無理……)
でも、目逸らせない。
その瞬間——
「それはずるいでしょ」
あっとくんが少し笑う。
でもそのまま、けちゃの手を引いて、
自分の方に寄せる。
「俺にも同じことしてよ」
優しい声なのに、逃がさない。
「けちゃ、俺のことも好きでしょ?」
ドクン、と心臓が鳴る。
(なんでそんなこと……)
知ってるわけないのに。
でも——
言えない。
「……好きです」
小さくこぼれる。
一瞬、静かになる。
「ほら」
まぜたが少し笑う。
「やっぱり」
そのまま、軽く頭を引き寄せる。
「なら、遠慮しない」
その言葉と一緒に、距離が完全に崩れる。
反対側で、
「ほんとにずるいなぁ」
あっとくんが苦笑しながらも、
「でも同じ」
って、小さく言う。
そのまま、指を絡められる。
左右から、逃げられない。
でも——
嫌じゃない。
むしろ——
(もっとこのままでいたい)
って思ってる。
「……先輩たち、ほんとにずるいです」
もう一回言うと、
「だから何?」
「やめる?」
2人同時に聞いてくる。
答えなんて——
「……やめないです」
即答。
その瞬間、
2人とも少しだけ笑う。
「じゃあ決まり」
「もう逃がさない」
距離はそのまま。
むしろ、さらに近くなる。
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