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◆第6話(もう一人の独占)
まぜたに引き寄せられたまま。
距離は、まだ近い。
(近すぎる……)
「……まぜた先輩、離れてください」
小さく言うけど、
「やだ」
即答。
むしろ、少しだけ強く抱き寄せられる。
(ほんとに無理……)
そのとき——
「ね、さすがにそれはダメでしょ」
あっとくんの声。
さっきより、少しだけ低い。
「……何が」
まぜたが返す。
空気がピリッとする。
「独り占めしてるとこ」
そのまま近づいてきて——
けちゃの手を取る。
「え、っ……」
ぐっと引かれて、まぜたの腕から外れる。
そのまま——
あっとくんの方に引き寄せられる。
「ちょっと」
まぜたが不満そうに言う。
「順番くらい守って」
あっとくんは笑ってるのに、目は笑ってない。
(え……これ……)
さっきまでと違う。
少しだけ、本気の空気。
「けちゃ」
名前を呼ばれて、顔を上げると——
すぐ近くにあっとくん。
「さっきの、ちゃんと見てない」
「え……?」
「俺にも見せてよ」
優しい声。
でも逃がさない距離。
「さっき、まぜたに見せたやつ」
心臓、跳ねる。
(見せてない……けど……)
でも、言い返せない。
そのまま、軽く頬に触れられる。
「ほら、こっち」
顔を向けられる。
「……っ」
恥ずかしくて、少しだけ笑う。
その瞬間——
「……それ」
あっとくんが小さく呟く。
「やっぱ反則」
そのまま、ぐっと距離を詰める。
「もうちょっと見せて」
「無理です……」
「無理じゃない」
優しく言うのに、逃げ場はない。
その横で、
「……やりすぎ」
まぜたがぼそっと言う。
でも、今度は止めない。
むしろ——
「けちゃ、こっちも」
って、反対側から手を取る。
完全に挟まれる。
さっきより、もっと近い。
「……ほんとずるい」
あっとくんが小さく笑う。
でもそのまま——
「俺も同じくらい欲しいんだけど」
さらっと言う。
「え……?」
「まぜたばっかじゃ不公平でしょ」
そのまま、軽く肩を引き寄せる。
距離、ほぼゼロ。
(え、ちょっと……)
「けちゃ、俺のことも好きでしょ」
また、その言葉。
今度は——
ちゃんと聞かれる。
逃げられない。
「……好きです」
小さく答えると、
一瞬、静かになる。
それから——
「なら遠慮しない」
あっとくんが少しだけ真剣な顔になる。
そのまま——
ぎゅっと引き寄せる。
「俺にも同じことして」
低く、でも優しく。
でも完全に独占の目。
その横で、
「……負けない」
まぜたもぼそっと言う。
「俺もいるから」
また距離が詰まる。
左右から、同時に。
逃げ場、完全にゼロ。
(なにこれ……)
さっきより強い。
でも——
どっちも離したくないって思ってる。
「……先輩たち」
小さく呼ぶと、
「ん?」
「どうしたの」
2人同時。
近い声。
近い距離。
「……ずるいです」
そう言うと、
「知ってる」
「今さら」
2人とも笑う。
でも——
手は離さない。
むしろ、さらに絡む。
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