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あめ猫
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クールキッドは、セブンに抱かれたまま、少しだけ目を細める。
「……あったかい」
その声は、さっきよりも柔らかい。
体の力が抜けていく。
「……」
セブンは何も言わない。
でも、離さない。
ほんの少しだけ、手の力が自然になる。
ぎこちなさが減る。
クールキッドの呼吸がゆっくりになる。
そのまま——
空気が落ち着く。
静かに。
エリオットはそれを見ている。
何も言わない。
ただ、少しだけ安心した顔。
クールキッドはそのまま、ぽつりと言う。
「……パパ」
「……何だ」
「これ、すき」
短い言葉。
それで十分だった。
セブンの手が、ほんの少しだけ動く。
撫でるわけでもなく。
ただ、離さない。
——それから。
しばらくの間。
大きなトラブルは起きなかった。
ピザ屋のシステムも安定する。
家の機械も、勝手に動くことは減る。
クールキッドは積み木で遊ぶ。
普通に。
崩して、笑って。
たまに——
ほんの少しだけ、手が動く。
でも。
それは暴走じゃない。
“抑えられている”。
遊びの範囲に収まっている。
「……」
セブンはそれを見ている。
完全には止めていない。
でも。
前よりも、分かっている。
やり方が。
「……すごい」
ぽつりと言う。
クールキッドが顔を上げる。
「それ」
積み木を指す。
「崩すのはいい」
クールキッドが頷く。
「でも」
一拍。
「外ではやるな」
クールキッドは少し考える。
それから。
「……うん」
素直に頷く。
前みたいに、隠す顔じゃない。
ちゃんと“理解しようとしている顔”。
「……」
エリオットはその様子を見て、少しだけ笑う。
「成長してんじゃん」
軽く言う。
セブンは何も言わない。
でも。
否定しない。
その空気が、変化を示している。
——
時間が流れる。
季節が変わる。
積み木は増える。
言葉も増える。
「パパ」だった呼び方は変わらない。
でも——
ある日。
「お兄ちゃん!」
クールキッドが走る。
玄関。
エリオットが立っている。
「よ」
少し背が伸びたクールキッドが、抱きつく。
「元気か」
「うん!」
声も、少ししっかりしている。
「学校どうだ」
「たのしい!」
即答。
靴を揃えて、家に入る。
動きも、前より整っている。
セブンは奥からそれを見る。
「……来たか」
「仕事前」
エリオットが答える。
「顔見に」
クールキッドがすぐ話し出す。
「きょうね、せんせいがね——」
話が止まらない。
普通の子どもみたいに。
エリオットが相槌を打つ。
「へえ」
「それで?」
自然なやりとり。
セブンはそれを見ている。
静かに。
違和感は、もうない。
あの頃みたいな、張り詰めた空気もない。
クールキッドは笑っている。
普通に。
でも——
ほんの一瞬だけ。
窓の外。
電線が、わずかに揺れる。
風はない。
誰も気づかない。
クールキッドも、見ていない。
無意識。
それくらいの“残り方”。
「……」
セブンはそれを見逃さない。
でも、何も言わない。
ただ——
目を離さない。
完全に消えたわけじゃない。
でも。
“制御されている”。
それで十分だった。
クールキッドが振り返る。
「パパ!」
呼ぶ。
「なに?」
セブンは短く返す。
「きょうね、お兄ちゃんとあそぶ!」
笑顔。
まっすぐ。
「……ああ」
短く頷く。
それだけでいい。
部屋に、笑い声が広がる。
普通の時間。
でも。
ここに至るまでの全部が、確かに積み重なっている。
if (happyend) {
story.end("here");
}
HAPPY ENDなら、ここで終わり