テラーノベル
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今夜の食事会の出席者は前回と同じ顔触れだ。碧斗の母親はすでに予定が決まってしまっているとのことで、残念ながら欠席だ。
今回は事前にオードブル料理を注文してあった。そのため、家で作るものはそんなにもないし、主役たちに手伝ってもらうわけにはいかないわ、などと言って、母がほとんど一人で準備した。
母には申し訳ないが、柚乃と一緒に立ち働かずに済んで、正直私はほっとしていた。
カトラリーを並べ終えて、母はちらりと時計に目をやる。
「後は、碧斗君と恭一君が来るのを待つだけね。あっ、忘れてた!」
母が突然声を上げた。
それを不思議に思い、私は訊ねる。
「お母さん、どうしたの?」
母は苦笑いを浮かべ、エプロンの紐を解き始める。
「今夜のお祝い用に、笹屋酒店さんに、シャンパンをお取り置きしてもらってたのよ。受け取ってくるわ」
ソファで寛いでいた父が立ち上がる。
「俺が行ってこよう」
キッチンにいた柚乃がダイニングに出てきた。
「私が行ってくるよ」
「車で行った方が早いだろ。やっぱり父さんが」
「わざわざ車で行くような距離じゃないでしょ」
柚乃は笑って父を制しながらリビングのドアノブに手をかけて、廊下に出て行こうとした。
それを母が引き留める。
「ちょっと待って、柚乃。引き換え券があるから」
母はキッチン側に行き、小さな紙片を持って戻って来た。それを柚乃に渡す。
「笹屋さんに連絡を入れておくわ。娘が行きます、って。お金はもう支払ってあるからね。悪いけど、お願いね」
「うん。じゃあ、行ってきます!」
柚乃が笑顔を残して出かけて行き、しばらくたった頃、インターホンが鳴った。戸崎か碧斗のどちらかだろうと思って確かめたモニターには、二人の姿が映っていた。
「詩乃、誰だった?」
キッチンで鍋の中身を確かめていた母が顔を上げて、私に訊ねた。
「戸崎さんと、碧斗だった」
「あら、二人一緒なのね。詩乃、お出迎えしてくれる?」
「うん……」
廊下に出て玄関に向かいながら、私は表情を整えた。一度深呼吸をしてから、ゆっくりとドアを開ける。
「こんばんわ。どうぞ上がってください」
上手に笑えているか気にしながら私はドアを背で支え、二人を玄関内に促した。
ドアを閉めた時、母がやって来る。
「いらっしゃい。さぁ、どうぞ。柚乃は今ちょっとお遣いに出てるんだけど、間もなく帰ってくると思うわ。そうしたら、食事を始めましょうか」
碧斗が戸崎を促す。
「戸崎さん、行きましょうか」
「そうだね。では、お邪魔します」
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#へたくそだけど許して
結月
23
#元カレ
まぁ
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私はドアの前に立ったまま、靴を脱ぐ戸崎の後ろ姿をそっと見ていたが、碧斗の視線に気がついてはっとする。そこに私を気遣う色を見て取って、大丈夫だと伝えるために、碧斗に微笑んで見せた。
本当にそうなのかと疑うように碧斗は眉根を寄せたが、母に呼ばれて慌てて玄関を上がり、すでに先に行っていた戸崎の後を追った。
私もまた二人に遅れてリビングに入って行く。
ちょうど母が二人から手土産を受け取っているところだった。二つの紙袋を手にして、にこにこと嬉しそうだ。
「二人も今日の主役だっていうのに、気を使わせてしまったわね。でも、ありがとう。嬉しいわ。後で皆でデザートに頂きましょう」
それらを冷蔵庫に仕舞い終えてから、母は時計を見て、眉間をふっと曇らせた。
「柚乃、少し遅いわよねぇ。いったいどうしたのかしら。まさか、注文に何か手違いでもあったのかしら」
柚乃が出て行ってから、そろそろ一時間近くがたつ。酒屋までの往復に、そこまで時間はかからないはずだ。途中で寄り道でもしているのだろうかと思った時、母が私に声をかける。
「ねぇ、詩乃。柚乃に電話してみてくれる?」
すぐに返事ができなかった。ここしばらくの間ずっと、柚乃に対して自分が取っていた態度を思うと気まずくて、スマホを置いた場所へすんなりと足が向かない。
ぐずぐずしている私に、母が怪訝そうに声をかける。
「詩乃、どうかした?」
「な、なんでもない。今、かける」
私はカウンターの片隅に置いておいたスマホをのろのろと手に取り、どきどきしながら柚乃の番号をタップした。少し待ったが、柚乃は出ない。私からの電話だからあえて出ないのかもしれない、などと考えているうちに、留守番電話に切り替わった。
「柚乃、電話に出ないの?」
母に訊ねられて私は頷いた。
「気づかなかったのかもしれないから、メッセージも入れてみるね。こうしている間に、もうそこまで来てるかもしれないけど」
しかし、柚乃に送ったメッセージもなかなか既読にならなかった。私からの連絡は、すべて無視しようとでもしているのだろうかと不愉快になりかけたが、突然胸騒ぎを覚えて不安に襲われる。
「私、ちょっとそこまで行って見て来る」
「それならお父さんが行って来よう。詩乃はお母さんを手伝ってて」
「だったら俺が行ってくるよ」
碧斗が立ち上がりかけた時、家の固定電話が鳴った。
電話に最も近い場所にいる父が受話器を取る。
「……はい、えぇ、そうです、藤川ですが。……えっ?!何かの間違いじゃ……」
父の声が緊迫した。どきりとして見つめたその顔が、あっという間に青ざめて行く。
母が緊張した面持ちで父の傍に寄って行く。
父は声を絞り出すようにしながら、電話の相手に告げる。
「すぐに向かいます」
受話器を置いた父は、強張った顔で私と母を交互に見た。
母はしがみつくように父の腕をきゅっとつかむ。
「何かあったの?」
父は母の腕に手を置き、かすれた声で母の問いに答える。
「柚乃が事故に遭って、病院に運ばれたそうだ。今の電話は警察からだ」
「えっ!」
その場にいる全員が父の言葉に驚き、声を上げた。
母は震え声で父に訊ねる。
「そ、それで?柚乃は、無事なのよね?」
「……意識がないそうだ」
「意識が、ない……?」
母は呆然としてつぶやいた。
「お母さん……」
私は母にすがりついた。
母は私の肩を抱き締めて、自分自身にも言い聞かせるかのように繰り返す。
「大丈夫、大丈夫よ、大丈夫……」
「とにかく、病院がどこかは聞いたから、急ごう」
父は硬い表情で私と母を促した後、戸崎と碧斗に向き直る。
「恭一君、碧斗君、そういうことだから、今日は帰ってもらえるかい。時間を作ってもらったのに、申し訳ない」
碧斗が首を横に振る。
「謝る必要なんかないよ。俺たちのことはいいから、すぐに行って!」
それから碧斗は、ソファに腰かけたまま固まってしまっている戸崎に声をかける。
「戸崎さん、大丈夫ですか。とりあえず、俺たちは帰りましょう」
「で、でも、俺も……」
碧斗は戸崎の肩に手を置いた。
「気持ちは分かりますけど、今、俺たちも一緒に行くのは邪魔になると思うんです」
「そ、それはそうかもしれないけど……」
「戸崎さん」
やや強い口調で碧斗に促されて、戸崎は唇を噛み、よろめきながら立ち上がった。その顔は蒼白だった。
彼の背を支えるようにしながら、碧斗はリビングから出て行こうとした。途中ふと足を止めて、振り向き様に私に向かって声をかける。
「詩乃、きっと大丈夫だから」
うん、と声に出してしまったら、その拍子に泣き出してしまいそうだった。だからそうならないようにと、私は唇を固く引き結び、ただ黙って碧斗の顔を見返した。
コメント
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なんと、この展開‼️