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#デジタルイラスト
汚染
39
あめ猫@サボり魔
8,090
ありきたりな雑炊
50
FORSAKENのサバイバーロビーへ続く静かな回廊。
人気のない石畳の上を、シェドレツキーはゆっくりと歩いていた。
右手には、2x2から託された羊皮紙の破片。
そこに刻まれた古代コードを見つめながら、小さく呟く。
「……1xを、俺の影へ繋ぎ直す……」
この術が成功すれば。
1x1x1x1はキラーという呪縛から解放される。
スペクターの支配も終わる。
それは間違いない。
なのに。
シェドレツキーの手は震えていた。
「……本当に、俺でいいのか。」
立ち止まる。
羊皮紙を強く握る。
胸が苦しかった。
「俺が傲慢だったから。」
「俺が1xを怪物にした。」
「俺が封印した。」
「そんな俺が……またあいつを自分の中へ迎えるなんて。」
静かな回廊に声だけが響く。
「また傷付けるかもしれない。」
「また同じ過ちを繰り返したら……」
その時だった。
「……迷っている顔だな、兄弟。」
聞き慣れた声。
振り返ると、回廊の奥からデュセッカーが歩いてくる。
背中には光の刀。
イルミナが青白い光を静かに揺らめかせていた。
「デュセッカー……」
「2x2から話は聞いた。」
隣まで歩いてくる。
「1x1x1x1を君の影へ戻す。」
「その術を使うのだろう。」
シェドレツキーは頷いた。
「……でも怖い。」
「もしまた失敗したら。」
「また1xを傷付けたら。」
「俺は……」
「シェドレツキー。」
デュセッカーの声が静かに響く。
「君は。」
「いつまで過去の自分だけを見続ける。」
その言葉に、シェドレツキーは顔を上げた。
デュセッカーはゆっくりイルミナを抜く。
シャリン――
青白い光が回廊を照らした。
その光は優しく、温かかった。
「覚えているか。」
デュセッカーが言う。
「この刀を鍛えた日を。」
「……。」
「私たちは誓った。」
「過去を忘れない。」
「変わる。」
「成長する。」
「そう誓ったはずだ。」
イルミナの切っ先が、そっとシェドレツキーの胸元へ向けられる。
「過ちを恥じること。」
「過ちを背負って歩くこと。」
「その二つは同じではない。」
シェドレツキーは黙って聞いていた。
「1x1x1x1は。」
「君の罪ではない。」
デュセッカーは真っ直ぐ見つめる。
「君が完璧になろうとして切り捨てた。」
「弱さ。」
「本音。」
「泥臭さ。」
「誰よりも人間らしい心。」
「全部まとめて。」
「君自身だ。」
「……俺自身。」
小さく呟く。
デュセッカーは頷いた。
「あいつは怪物になったのではない。」
「拒絶された。」
「傷付いた。」
「それでも。」
「君の隣にいたかった。」
「だから暴れた。」
静かな言葉だった。
だからこそ胸へ深く刺さる。
やがてデュセッカーはイルミナを鞘へ納めた。
カチン。
澄んだ音が響く。
そのままシェドレツキーの肩を力強く掴む。
「だから。」
「受け入れろ。」
「光も。」
「影も。」
「完璧さも。」
「情けなさも。」
「全部抱えて。」
「もう一度、あいつの手を握れ。」
少しだけ笑う。
「もしまた迷ったら。」
「その時は。」
「私がイルミナで君の頭を叩き割って目を覚まさせる。」
「……怖すぎる励まし方だな。」
思わず吹き出した。
涙まで零れる。
「はは……。」
「本当にお前らしい。」
涙を拭う。
胸の重石が、少しずつ消えていく。
そうだった。
完璧になる必要なんてない。
間違えてもいい。
叱ってくれる相棒がいる。
支えてくれる仲間がいる。
そして。
どんな自分にも「バカ」と怒鳴りながら隣へ来てくれる半身がいる。
「……ありがとう。」
シェドレツキーは静かに頭を下げた。
「デュセッカー。」
「おかげで決心がついた。」
腰のリンクソードを握る。
その柄を力強く握り締める。
もう震えてはいなかった。
「行ってくる。」
「俺たちの。」
「本当の決着をつけるために。」
デュセッカーは静かに微笑んだ。
「ああ。」
「行け、兄弟。」
「今のお前なら。」
「もう二度と、大切なものを手放しはしない。」
シェドレツキーは大きく頷く。
そして振り返ることなく、回廊の先へ走り出した。
その瞳に宿る光は、かつて世界を守ろうと戦っていた神話の時代よりも、ずっと強く、ずっと優しかった。
もう彼は、「完璧な英雄」になろうとしているのではない。
光も、影も、弱さも、愛も。
そのすべてを抱えて前へ進む、一人のシェドレツキーとして歩き始めていた。
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