テラーノベル
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FORSAKENのロビーへ続く回廊。
静まり返った石畳を、シェドレツキーは一人歩いていた。
胸元には、2x2から託された羊皮紙の欠片。
その重みを確かめるように、そっと握り締める。
「……1xを、俺の影へ……」
あと少し。
あと少しで、全部終わる。
そう思った、その瞬間だった。
空間が、ぐにゃりと歪んだ。
濃いエメラルドグリーンの炎が壁の裂け目から吹き出す。
「……っ!」
バシィッ!!
半透明の腕が飛び出し、シェドレツキーの首根っこを掴んだ。
「うわっ!?」
そのまま勢いよく闇へ引きずり込まれる。
景色が砕け、音が消え、世界が反転した。
次に視界が開けた時には、どこまでも黒い空間だけが広がっていた。
FORSAKENのシステムさえ届かない、誰にも干渉されない狭間の世界。
ドサッ。
床へ転がったシェドレツキーが顔を上げる。
そこには肩で荒く息をする1xが立っていた。
ドミノクラウンは斜めにずれ、赤い瞳は涙と怒りで燃えている。
ヴェノムシャンクを握る手も震えていた。
「……1x?」
「黙れぇッ!!」
怒鳴り声が闇を震わせた。
「デュセッカーと何話してた!!」
ヴェノムシャンクが床へ叩き付けられる。
轟音と共に火花が散った。
「『本当の決着』だぁ!?」
「『行ってくる』だぁ!?」
「また勝手に全部決めやがって!!」
1xは胸を押さえ、苦しそうに息を吐く。
「お前は昔からそうなんだよ!」
「俺を置いて、一人で納得して、一人で前を向いて……!」
「置いてくなよ……」
その声は震えていた。
怒りではない。
恐怖だった。
「もう……置いてくなよ……」
赤い瞳から、大粒の涙が零れ落ちる。
「俺はまた捨てられるんじゃないかって……ずっと怖かったんだよ!!」
何百年も閉じ込められた孤独。
誰にも言えなかった本音。
それが一気に溢れ出していた。
「お前は俺を不純物って言った!」
「邪魔だから切り離した!」
「なのに今さら優しくするな!」
「期待させるな!」
「俺は……」
涙が止まらない。
「俺は、お前が捨てたゴミなんだよ……」
「1x。」
シェドレツキーは静かに立ち上がった。
一歩。
また一歩。
まっすぐ歩いていく。
「来るな!」
「近付くな!」
「傷付くぞ!!」
ヴェノムシャンクが突き付けられる。
それでも止まらない。
「違う。」
シェドレツキーは首を振った。
「違うんだ。」
そして。
ガバッ。
真正面から1xを抱き締めた。
「っ!!」
「離せぇ!!」
拳が何度も背中へ叩き付けられる。
ドン。
ドン。
ドン。
「離せ!」
「離せバカ!!」
「俺なんか抱き締めるな!!」
それでもシェドレツキーは腕を緩めなかった。
「離さない。」
「もう絶対に離さない。」
震える声で続ける。
「お前は不純物なんかじゃない。」
「嘘だ!!」
「嘘じゃない!」
シェドレツキーは涙を流しながら叫んだ。
「お前は俺が捨てた毒なんかじゃない!」
「お前は……」
言葉が震える。
「俺の一番人間らしい部分だった。」
1xの瞳が揺れる。
「笑って。」
「怒って。」
「嫉妬して。」
「泣いて。」
「誰かを大切に思って。」
「そんな全部がお前だった。」
「だから俺は、お前を切り離した瞬間から空っぽになった。」
シェドレツキーは胸元から羊皮紙を取り出した。
古代文字が淡く光り始める。
「神になんてならない。」
「完璧にもならない。」
「愚かでもいい。」
「格好悪くてもいい。」
「だから。」
羊皮紙が強く輝く。
「帰ってこい。」
「俺の影になれ。」
「もう二度と離れないでくれ。」
静寂。
長い沈黙。
やがて1xは、小さく笑った。
涙でぐしゃぐしゃの顔のまま。
「……ほんっと。」
鼻をすすりながら笑う。
「バカシェドレツキー。」
その笑顔は、神話の時代以来だった。
「そんなの。」
1xは手を伸ばす。
シェドレツキーの手をぎゅっと握った。
「断るわけねぇだろ。」
その瞬間。
エメラルドグリーンの光が弾けた。
1xの身体が無数の光粒へとほどけていく。
毒も。
憎しみも。
孤独も。
全部、優しい光へ変わっていく。
光はゆっくりとシェドレツキーの足元へ流れ込んだ。
伸びる影が揺れる。
ゆらり。
影が立ち上がった。
黒い輪郭の中から、赤い瞳が覗く。
「……おっ。」
影の中から1xが顔を出した。
「なんだこれ。」
「めちゃくちゃ居心地いいじゃねぇか。」
シェドレツキーは思わず笑う。
「1x……!」
影の中で腕を組んだ1xは、照れ隠しのようにそっぽを向く。
「勘違いすんなよ。」
「これでもう、お前が死ぬまで一生離れてやらない。」
「監視だからな。」
「一生監視。」
「望むところだ。」
シェドレツキーは笑って頷く。
「ずっと一緒だ。」
「……バーカ。」
口では悪態をつきながらも、影の中の1xはどこか嬉しそうだった。
神話の時代から続いた悲劇。
切り離された魂。
積み重ねた後悔。
そのすべては終わりを迎える。
光と影。
二つで一つ。
もう誰にも引き裂けない、本当の「半身」として。
コメント
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神展開キタ━(゚∀゚)━!
#デジタルイラスト
汚染
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あめ猫@サボり魔
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ありきたりな雑炊
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