チャイム が 鳴ッて 、 教室の 騒めき が ゆッくり と引いて行く 。
友人達が 帰り 支度を 整え 、 足早に 廊下へ 消えて行ッた後 、 其処に 残ッたの は 僕と 、 机に 突っ伏した 若井 岳 だッた 。
西日が 差し込む 窓際 。
埃の 粒子 が 橙色に 浮かんで 、 静か な 空気を 揺らめかせる 。
「 …… おい 、 寝るなよ 。鍵 閉められんぞ 」
軽く 声を 掛ける と 、 顔を 上げた 若井 が 、 惘した 目で 笑ッた 。
「一寸 だけ 、 休憩 」
「 御前 な …… 」
言い乍も 、 僕は 席を 立てなかッた 。
隣に 座る 岳で ── 甘さが 濃くな る 。
鼻腔を 擽る 此 匂いに 、 もう 抗えない 。
昼間 よりも はッきりと 分か る 。
教室に 残ッたのは 僕と 此奴 岳 。
寶 、 余計 に 。
── 喉が 渇く 。
ただ 呼吸を している 岳で 、 口内が 痺れ る 。
甘露が 体の芯 に 滴ッて 、 其処 殻 炎を 広げて行く みたい だ 。
「 何 ? 」
若井が 首を 傾げ た 。
無防備 すぎる 距離で 、 柔らかな 瞳を 向けられ る 。
僕は 言葉を 探し て 、 然して 飲み込んだ 。
『 御前 殻 、 甘い 匂いが して 仕方が無い 』
そんな 事 、 如何して 言える 。
「 …… 何でも無い 」
視線を 逸らし 乍 答えた 卦度 、 心臓は もう 限界 だッた 。
此の儘 じゃ 、 僕は ── 。
手を 伸ばして 、 触れて 、 舐めて 、 味わッて仕舞う 。
そんな 衝動が 、 皮膚 の 下で 暴れて居 る 。
「 本当に ? 何か 変だぞ 」
覗き込まれた 瞬間 、 視界に 映るの は 、ほんのり 色づいた 頬 。
直ぐ 其処に 在る 唇 。
手を 伸ばせば 届く 距離 。
『 食べたい 』
其の 言葉が 、 頭の 奥で 真ッ赤 に 点滅 していた 。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!