テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
『愛重恋愛-アイジュウ レンアイ-』〜愛が彼を狂わせる〜
第5話 もう手遅れ
その日の夜――。
『そうっすか…話してくれたんすね。ありがとうございますっす。』
『ベリアンさんの事だから怒るかと思ったけど元々優しいからな。良かったですよ。』
『…うん。そうだね。』
(…2人には言わない方がいいかもね。…まだ納得してない様子だったけれど、大丈夫かな。)
一方その頃――。
『…あの青年は確かこっちの道を――。』
カツン、カツン…。
双槍を引き摺る。
『いらっしゃいませ〜!』
『あ…いました。』
(夜に営んでいる酒場ですか。甘いカクテルの香りですね。)
青年は店の外で呼び込みをしていた。
『すみません。』
『はい?あ、貴方は!悪魔執事の…。』
『はい、ベリアン・クライアンと申します。』
『この間の天使狩り見てましたよ!凄くかっこよかったです!今日主様にあってサインもらったんです!』
青年は嬉しそうに色紙を見せる。
『そうでしたか、ところでこのお店は貴方が?』
『はい、母さんが病で倒れていて、父さんは亡くなりました。働き手がいなくなり…それで僕は自分の店を持つことがずっと夢で…この間やっとオープンさせたんです。』
『そうでしたか…お一人で?』
『いえ、今はバイトも雇ったので毎晩商売繁盛で願ったり叶ったりです。僕には下に妹や弟がいるので少しでも働いて美味しいもの食べさせてやりたいんです。』
『まぁ…ふふ、いいお兄さんですね貴方は。 』
『いえ、そんなことは…所でこんな夜に何を?もしや天使狩りに?』
『えぇ。先程天使の警報が…それで駆けつけて来たんですよ。』
『え、そうなんですか…!?』
『えぇ。』
『…もし良ければ天使を狩るところ見てもいいですか?』
『…クスっ。えぇ。もちろん…♪』
裏路地にて。
カツン、カツン……。
『こんなところに天使が…。』
『えぇ。厄介で困りますよ。私の主様に近付く輩ばかりで。』
『……え?』
『私はただ主様を愛してるだけなのに…邪魔をする人ばかりです。』
『あの、ベリアンさん…?』
『…天使なんていませんよ。もう少し早く気付くべきでしたね。天使狩りなら主様も一緒のはずでしょう?』
ベリアンさんはニコッと笑って僕に近付いてくる。
『っ、何を…っ。』
僕は後ろへ後ずさる。
『…貴方は主様に近付いた。その時点でもう手遅れなんですよ。』
『っ、うぁぁぁぁ…!!』
僕は逃げようとした。だが…。
グサッ!!
『かはっ…っ!』
胸を一突き…槍で突かれた。
ドサッ!
『狩られるのは貴方ですよ。あぁ、もう少し静かにしてくださいよ。周りの人が起きてしまうでしょう。まぁこんな裏路地、来る方なんてそうそういませんけどね。』
私は青年の胸元から色紙をとる。
『主様から何かを貰うことすら私ですら烏滸がましいのに、なんで……っ。』
グシャッ!
色紙をグシャッと握り締める。
『…私は主様との時間を邪魔されたくない。その為には…。狩らないといけない人がいますね。』
デビルズパレス 深夜。
『ふぅ、今夜も異常は無さそうです。』
『……。』
(危なかったですね。ナック君が見回りをしてましたか。裏から回り込みましょう。)
私は血の着いた燕尾服の羽織を脱ぎ、窓から入り込む。
『ふぅ。お風呂にでも入りますかね。』
私はお風呂へ向かう。
コツコツ……。
次の日。
ザワザワ……。
街へ買い物に行くと何やら騒がしい。
『なんかいつもより騒がしいな。』
『そうだね。何かあったのかな?』
私はボスキと一緒にインテリアの買い出しに来ていた。
『いやぁ!お兄ちゃん!お兄ちゃん!!』
『起きろよ兄ちゃん!なんで、こんな…っ!!』
『最近できた酒場の店主が今朝裏路地で何者かに刺された状態で見つかったらしいわよ。』
『嘘、あの若い青年でしょう…?確か歳は…。』
私とボスキは裏路地に行く。
『っ…!!』
そこには血だらけになって倒れてる人とその傍で小さな子供達数人が座り込み泣いていた。
そして、その傍にいたのは羽織をかけ、泣き喚いている女性。
『いや、いやぁ…っ!なんで、ロレッタが…っ。 』
『あの店主のお母さんよ…病気のお母さんの治療費を稼ぐために早く出世して店を開いたとか…。』
『健気だな…それなのになんで…。』
私は人混みを分けて近付いた。
『っ…!?あの人は…っ!!』
『僕、悪魔執事の皆さんのファンなんです!サイン下さい!主様!』
『この間かっこよかったです!』
『あ、あああ…っ!!』
『っ、主様、どうした…!』
(間違いない、あの人は…っ。私にサインを頼んできた若い青年…っ。)
そして、血溜まりの中に見た事のあるものを見つける。
『…私の、サイン…。』
それはグシャグシャにされていて、血に染っていた。
『い、いや…。いやぁぁァァ!!!!』
ドサッ!
私は気を失い倒れた。
『主様!?おい!主様――!!!』
カチャンッ。
『ふぅ。紅茶にはやっぱりマドレーヌですね。』
もぐっ。
『ふふ、甘くて美味しい…。』
(遺体を隠さなかったのは見せしめの為です。
私の主様に近付いたらどうなるかちゃんと教えてあげないとダメですから。)
『主様はボスキ君と買い物ですか…主様の頼みだから許可しましたがやはりモヤモヤしますね…。』
(このモヤモヤを消すには…やはり主様と私の邪魔をする人を全部狩りましょう。誰にも邪魔されたくありませんから。)
次回
第6話 禁句の言葉