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侵略者たち

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侵略者たち

25 - 023 白銀の女騎士(5)

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2024年12月19日

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「うーん……これでは追えませんね……」
 ビアンカは困った表情を浮かべたきり、武器すら仕舞うと、飄々と俺たちが背を向けた。


「何を考えているんだ……ビアンカ・D・ドレイク……。ここで俺たちを止めるんじゃねぇのか……?」


「こっちはアンタらと戦えるってんでウズウズしてたのに、そんなんじゃ興醒めっスわ」


 いや……違う。


「これが……お前の作戦なんだな……」


「ふふ、そうですよ、鮪美くん。僕たちが君たちを分散して、僕たちでUT刑務局を内々に入らせないよう足止め……。ここまでが指揮官の作戦です。でも、ここからが僕の作戦……と言うわけです」


 ――


 俺とロディは剣を構え、学は一歩下がる。


「学、いつまでそうやって守られているつもりだ。しかも今回は、指名手配犯と異世界人と来た……。お前まで牢屋に入れたくはない。早くこちらへ来い」


「姉さん……僕は……」


 ガチャン!!


 学が胸元から取り出したボックスを開くと、中からは歩と同じ、鋭い槍が飛び出した。


「この人たちを信じます……!!」


「そうか、ならば……牢屋で反省しろ……!!」


「来るぞ……!! ロディ、構えろ……!!」


 しかし、横からも奇襲の影が現れる。


「ロドリゲス!! お前を捕まえる!!」


「刑務局 局長 ブライト・D・ローガン……!! 貴様、部下たちと同じ我らの味方ではないのか……!!」


 刑務局 局長だと……!?

 ってことは、あの鮪美の上司に当たる人物……。

 UT刑務局は、剣術に特化された部隊と聞いているが、剣は持っていないみたいだけど……。


 ブゥン……


「オラァ!!」


 ブライトの何もなかった手からは、瞬時に巨大な刀身の刀が現れ、それを軽々と振り回した。

 その膨大な範囲攻撃に、ロディは上空へ避ける。


「ロディ!! 大丈夫か!!」


「案ずるな!! 奴は鮪美やロスタリアほどの速度や派手さはないが、能力『重剣』により、自身の持つ刃の重力を変えられる為、二人にはない、縦矛にもなれる強固な攻めが得意とするが、私の敵ではない!! それよりも優、背後だ!!」


 ロディの言葉に振り向くと、ニタリと笑みを浮かべた男が、今にも迫って来ていた。


「なんだ、お前……!!」


「お前の相手は……俺だ……蒼炎……!!」


 この褐色……地底人……!!

 白髪で褐色、鍛えられた身体は、制服の上からでも分かる筋肉量を見せていた。


 キィン!!


「何故、蒼炎を出さない……。お前、俺を殺さないように手加減でもしているのか……?」


「当たり前だろ!! 人殺しになんかなるか!!」


「俺が、鮫島・A・司の仲間で、ガ・A・ガという、A型世代と聞いても……か……?」


「……それでも、殺せない……」


 ガ・A・ガは、刀を掴みながら再びニタリと笑うと、ムキムキムキ! と筋肉が膨張する。

 いや、これは筋肉と言うよりも……


「これは、岩の鎧だ!! 蒼炎を出そうとも、俺の身体に炎は効かない!!」


「クソッ……! このままじゃ、学が……」


 シュッ……


 ロディと俺が別の敵に足止めをされている隙に、白銀の女騎士、歩は、瞬足で学に駆け寄る。


「さあ、学!! お前を守る盾はなくなったぞ!!」


 学は、苦い顔を浮かべる。


 キィン!!


「貴様ら……」


 学を守ったのは、鮪美とロスタリア。


「UT特殊部隊すら、裏切ったと言うのか……?」


 その背後に、ビアンカとアリスも現れる。


「そうではありませんよ、司令官殿。先程、標的である蒼炎の剣士に取り付けていた盗聴器により、そこにいるお役人さんが、鮫島の仲間であることが分かりました。UT刑務局の方とは、赤城門の前で話し合い、説得に成功し、局長殿と共にロドリゲス・B・フォードマンを捕えることを飲んで頂き、この場に連れて来た次第です」


「そうか……」


 そう言うと、歩は一度槍を下げる。


「ならば、私の標的はあの二人だな」


「おわっ!!」


 キィィン!!


「ちょっと待てよ……!! まずはコイツをとっちめねぇとやべぇだろ!!」


「それは貴様も同じことだ!! 異世界人!! この地球へ害を為すのなら、私が守らねばならないのだ!!」


 なんだコイツ……なんでこんなに必死なんだ……。


 ザンッ!!


 そこに、背後から歩が槍を突き出す。

 やはり当てられないのか、歩の長い髪を掠らせる。


「ふん、今のが当てられないとは……。やはり、軟弱な男に育ってしまったようだ」


「そうじゃ……ねぇだろ!!」

 ゴゥッ!!


 俺は蒼炎を吹き出し、歩の槍に牽制する。


「ふっ、今の貴様の攻撃もそうだ……。相手の急所ではなく、わざと槍に刀をぶつけただろう。貴様の弱さの証だ」


 その背後から、ガ・A・ガ。

 ロディは刑務局の三人に抑えられてる……学は歩の動きに着いて行くのが精一杯……。


「クッソ……!!」


「う、うわあああああああっ!!!」


 そんな時、急に俺の目の前に現れたのは、


「や、山田さん……!?」


「優くんに手出しはさせない!! ま、真面目女王! 一般市民に武器は向けられないだろ!?」


 そんな山田さんの登場に、歩は槍を引いた。


「貴方は……前商会長……。そうだ……私たちは人民に武器を向けることはできない……! しかし……何故邪魔をするんだ……!!」


 山田さんの登場のお陰で、俺はガ・A・ガの攻撃をギリギリで受けることができた。


「ありがとう……山田さん……。でもここは……流石に危ねぇぜ……」


 しかし、俺の忠告も聞かないようなニヤけ顔で、山田さんは振り返って答えた。


「ふっ、んなこと……これから来る奴らにも言ってやらねぇとな……!」


 すると、次から次に、俺の背後には一般市民たちがテレポートされて行く。


「風船の爺さんに、バイトリーダー! 派遣バイトのおっちゃんに、市長さん……!? な、なんで……」


「みんな、緑さんには世話になってる。緑さんに何かあったって聞きゃ、慌てて駆け付ける。それに、ここにいる奴らはみんな、お前にも助けられた奴らだ」


 ババアのところに集まった奴らが、ピンポイントで俺の背後にテレポートして来る理由はただ一つ。

 ルリアールの魔法だ。


「ハッ! こんなことしてもらって、ここまでの奴らが駆け付けてきてくれて、ようやく見えたぜ……」


 ザッ!!


 俺は刀を構え、蒼炎を纏い、ガ・A・ガに向き合う。


 アンタも、本当はそうなんだろ。

 誰が味方なのか、敵なのか、真面目に仕事しているうちによく分からなくなっちまって……。


「ハァァァァ!!」


 人混みを掻き分け、学は槍を大きく振るう。


「こんな……人混みの中で……どうして迷わずに、武器を振り回せると言うのだ……」


「おい、お前。次、ババアにちょっかい掛けたら、この全員で押し掛けて、ケツ100叩きの上、牢屋行きだ。鮫島に伝えとけ……!!」


 ザン!!


 俺と学の剣は、同時に放たれる。


 俺の剣が腹に命中したガ・A・ガは、血反吐を吐きながらも、ニヤリと笑いながら姿を眩ました。


 ガン! ガン! ガン! ガン! ガン!


「ハァ……ハァ……ハァ……」


 学の突き出した槍は、歩の横腹に命中し、鎧の中から拘束具が展開され、身動きが取れなくなった。


「ウォーーーーーー!!」

「メガネ小僧が女騎士をやりやがった!!」


 一瞬の静寂の後、辺りは歓声に包まれたが、暫くしてすぐに沈静化した。

 学が、悲しそうな顔をしていたからだ。


「姉さんは……やっぱ優しいですね……」


「何を言うか……。お前の仲間を殺そうとし、お前を牢屋にぶち込もうとした姉だ……。どうしようもない……。最後には、誰に武器を向けていいのか分からず、蒼炎とお前だけが、唯一迷いなく動けていた。完敗だ……」


 その内に、学は眼鏡を外し、ぐしゃぐしゃに涙を溢す。


「姉さんの甲冑は、昔、僕が最初に作った、”横腹に唯一空間が空いてる物”を今も同じデザインで使ってくれている……。姉さんは……ずっと僕のことを想ってくれていた……」


「ふっ、ずっと昔からこの装備だったから、使いやすかっただけだ。でも……」


 そうして、あの真面目女王、司令の鬼、白銀の女騎士と名を馳せる女は、学と同じ顔で泣き始めた。


「お前が死ななくてよかった……。よかった……!!」


 そう言いながら、二人は抱きしめ合い、互いにぐしゃぐしゃになって泣き合っていた。

 事態の収集に、特殊部隊のビアンカとアリスが動き、部隊の撤収と、市民たちの誘導に動いていた。

 端で戦闘していたロディも、事態の収集を見て、再び瞬間移動のような能力で逃げ出していた。


「ンだよ、いい姉ちゃんじゃねぇか」

 

 俺にも……家族や兄弟がいたら……どんな風だろうと一瞬過ったが、その考えは直ぐに捨てた。

 俺には、ババアがいるからだ。

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