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フライギ
地雷の方はここでさようなら
「……まったく、最悪な天気ですよ」
私は溜息をつきながら、店の軒先で雨宿りをしていた。
しとしとと降る雨は止む気配がなく、夜の街を濡らしている。傘を持っていなかった私は、仕方なく立ち尽くしていた。
「ふふ、相変わらずついてないね、イギリス」
突然、後ろから聞き慣れた声がした。
振り向くと、そこにはフランスが立っていた。彼は大きめの傘を差しながら、優雅に微笑んでいる。
「……フランス、なぜここに?」
「偶然さ。君が雨に打たれてるのを見つけたから、助けに来たんだよ」
「……恩着せがましいですね」
「そんなこと言わずに、ほら、入って」
フランスは私の肩を引き寄せると、そのまま傘の中に入れてきた。
「近いですよ」
「狭いから仕方ないだろう?」
私は少しだけ身を引こうとしたが、フランスの腕がしっかりと私の肩を抱いていた。
「……わざとでしょう」
「さて、どうかな?」
フランスの顔は至近距離にあり、その瞳がじっと私を見つめている。
「……あなたは本当に、距離というものを考えないのですか」
「だって、僕は君が好きなんだから。近づきたくなるのは当然だろう?」
フランスの声は甘く、囁くようだった。雨音にかき消されそうなほど小さいが、それでもしっかりと私の耳に届く。
「……フランス」
「ん?」
私はしばらく彼を見つめてから、静かに言った。
「……ありがとうございます」
「……」
フランスの腕にわずかに力が入る。
「イギリス、今のもう一回言ってくれない?」
「調子に乗らないでください」
私はそっぽを向くが、フランスは楽しそうに笑っていた。
雨の中、二人で並んで歩く。
傘の下、フランスの肩がほんの少しだけ、私に触れていた。