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いりす
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深夜1時。
コンビニ袋を片手に、ロゼはらいとの部屋のソファへ倒れ込んだ。
「……あ〜、このソファ落ち着く……」
「またそれ言いよる」
らいとはキッチンから麦茶を持ってきながら笑う。
「そんな好きなん? 俺ん家のソファ」
「好き。らいの匂いするし」
「は!?」
らいとは危うくコップを落としかけた。
「ちょ、急に何言いよると!?」
「え、本当のこと」
「そういうのサラッと言うなや!!」
顔を真っ赤にしたまま麦茶を押し付ける。
ロゼは楽しそうに受け取った。
「今日も頑張ってたな」
「……別に」
「会議でめちゃくちゃフォローしてたじゃん。後輩助けてたし」
「見とったん?」
「見てるよ、らいのことは」
さらっと言われて、らいとはぐっと言葉に詰まる。
この男、本当に距離感がおかしい。
「……ロゼの方が頑張っとるやろ」
「俺?」
「営業成績トップやし、顔良いし、声良いし、コミュ力お化けやし……なんなんほんま」
「褒めてる?」
「褒めとらん」
「でもらい、俺の歌声好きって言ってた」
「っ、」
「録音聞きながら寝落ちしてたの知ってる」
「なんで知っとるん!?!?」
「スマホ開きっぱなしだったから」
らいとはその場にしゃがみ込んで頭を抱えた。
「終わった……」
「何が?」
「恥ずかしすぎて人生終わった……」
ロゼは声を立てて笑う。
その低くて優しい笑い声を聞くたび、らいとは悔しいくらい安心してしまう。
「らい」
「……なに」
「今日、ちゃんとご飯食べた?」
「……昼はウィダー」
「夜は?」
「……コーヒー」
「だめ」
ロゼの声が少しだけ真面目になる。
「また無理してたでしょ」
「してない」
「してる時の顔してる」
図星だった。
らいとは昔から、頑張ってるところを見せるのが苦手だ。
平気そうに笑って、あとで一人でへばる。
ロゼはそれをよく知っている。
「……別に大丈夫やし」
「らい」
優しく名前を呼ばれる。
それだけで、強がりが崩れそうになるから困る。
「……ロゼには、バレるなぁ」
「そりゃ毎日モーニングコールしてるし」
「それ関係ある?」
「寝起きの声で体調わかる」
「怖」
「愛だよ」
「っ、!」
まただ。
またこうやって、心臓に悪いことを平然と言う。
らいとは赤い顔を隠すようにクッションを抱き締めた。
ロゼはソファから少し身を乗り出す。
「こっちおいで」
「なんで」
「疲れてる時、一人で丸まる癖あるから」
「……見すぎやろ」
「好きだから見ちゃう」
「〜〜〜〜っ!!」
らいとは耐えきれずクッションをロゼに投げた。
ロゼは笑いながらそれを受け止める。
「照れすぎ」
「ロゼが悪い!!」
「はいはい」
ロゼは立ち上がって、らいとの前にしゃがみ込む。
そして子供をあやすみたいに、ぽんぽんと頭を撫でた。
「頑張っててえらい」
その瞬間。
らいとの目にじわっと涙が浮かぶ。
「……っ、」
「あ」
「ちが、これ、その……」
「うん」
「別に泣いとらんし……」
「うんうん」
ロゼは否定しなかった。
ただ優しく笑って、らいとの頭を撫で続ける。
らいとは観念したみたいにロゼの肩に額を押し付けた。
「……ロゼのそういうとこ、ずるい」
「何が?」
「安心する……」
ロゼは少しだけ目を細める。
「じゃあもっと安心して」
そう言って、そっとらいとを抱き寄せた。
らいとはしばらく抵抗するふりをしていたけど、最後には小さく笑って、
「……5分だけやけんね」
と、甘えるみたいに呟いた。