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#怪異
41
#ハッピーエンド
当麻月菜
912
ヂ二ヂ二
15
『お前、どうしたんだ?』
初めて来た横浜の路地裏で、瑠華は怖くて不安でうずくまっていたら、突然、声をかけられた。
反射的に顔をあげると、そこには不思議な恰好をした青年がいた。
『……逃げたいのか?』
すばやく周囲を警戒した後、青年はそう瑠華に尋ねた。
瑠華がなりふり構わず頷いた途端、厚い布に覆われ、悲鳴を上げる間もなく身体が宙に浮く。
『大丈夫だ、安全なところまで逃がしてやる』
青年はそう囁くと、瑠華を肩に担いだまま走りだした。
そして青年の言う通り、瑠華は安全な場所を与えてもらった。
けれど瑠華は、青年の人の良さにつけこんで厄介事に巻き込んでしまった。それなのに──
『ああ、また逢えたな』
魔霧の苦痛で現実に引き戻された瑠華に、彼は優しい言葉をかけてくれた。微笑む彼を見て、瑠華は嬉しかった。とても、とても。
再び眠りに落ちた瑠華は、懐かしい夢も見た。充芭の傍にいた、もふもふした可愛らしい妖たち。もう二度と会えないはずなのに、変わらぬ姿でそこにいた。
(ああ……夢なら、どうか覚めないで)
願う気持ちとは裏腹に、瑠華の意識は覚醒してしまった。
「瑠華さん、良かった。目を覚ましてくださって……」
薄暗い部屋の中、瑠華を看病していた荘一郎は安堵の息を吐く。
「……ここは……どうして?私……」
外で意識を失ったはずなのに、百日紅の館の自分の部屋で寝かされている。
状況がわからずオロオロする瑠華に、荘一郎は雄斗が運んだと説明する。すぐ瑠華が信じられないと言いたげに目を見開いた。
そんな瑠華を見て、荘一郎は安堵した表情から、困り顔になった。
「……瑠華さん、夜中の散歩は感心しませんよ」
「あ……ごめんなさい」
咄嗟に謝った瑠華だが、言い訳ぐらい聞いてほしいと言いたげだ。けれど荘一郎の方が先に口を開いた。
「どうしても散歩に行きたい時は、屋敷の者と一緒にお出かけください。あっスー・山田はいけません。それ以外でお願いします」
「スー・山田さんは、どうして駄目なんですか?」
「素行が悪いからです」
容赦ない評価を荘一郎が下せば、瑠華の頭の中にいるスー・山田がしょんぼり肩を落とした。元気を出してほしい。
(違う、違うっ。私はスー・山田さんに同情している場合じゃない!)
「荘一郎さん、雄斗さんは?」
瑠華の言葉に、荘一郎さんは小さく首を振った。
「雄斗は今、ちょっと野暮用で外出しています。すぐに帰ってきますから、今はお休みください」
荘一郎の口調はとても穏やかなのに、瑠華は凄く嫌な予感がする。あの時と同じ大切なものが消えてしまう感覚と同じだから。
「い、嫌です。私、会ってお願いしたいことがあるんです」
落ち着いてと、両肩を押さえ込む荘一郎を振り切り、瑠華は身を起こす。たったそれだけで息が切れるが、今はそんな事はどうでもいい。
「雄斗さんを連れ戻してきます。何処へ行ったか教えてください」
縋りつくように訴える瑠華を見て、荘一郎の表情が変わった。
「落ち着いてください。巫女さま」
”巫女”という言葉に、瑠華の心臓が嫌な音を立てて跳ねた。
「どうして……それを?」
青ざめる瑠華に荘一郎は苦笑を浮かべ、懐からあるものを取り出した。
「なんで知っているかといいますと……私も、一応、魔祓師なんですよ」
荘一郎が手にしていたのは、雄斗と同じ裏山桜の家紋が刻まれた懐剣だった。しかしまったく同じではない。荘一郎の懐剣には、凌霄花の蔦も刻まれている。
瑠華は、その紋が何を意味しているかわかっている。
凌霄花は、蔓が空に向かって伸びて行く様が、天を支えているようだと言われている。その紋を持つ者は、この国を支えるに値する者の証。
荘一郎は高位の魔祓師で、常盤の結界の秘密を知る数少ない一人だ。
(そっか。荘一郎さんは、私に会った瞬間から、全てを理解していたんだ)
「荘一郎さん……どうして何も訊かずにいてくれたんですか?」
瑠華の問いかけに、荘一郎は何も言わない。
けれど常盤の結界が破れたことも、瑠華が要の巫女だということも知っていて、受け入れてくれたことは間違いない。
瑠華と関われば、何かしらの危害が及ぶこともわかっていたくせに。
「雄斗さんを巻き込んで、ごめんなさい……」
荘一郎とって、雄斗はかけがえのない存在だ。荘一郎と雄斗には、二人だけの長い歴史がある。瑠華はそれを知らず、知ろうともせず、雄斗を厄介事に巻き込んでしまった。
瑠華は雄斗を失いたくない。けれど荘一郎は、もっと雄斗を失いたくないだろう。
そんな瑠華の心を読んだかのように、荘一郎は静かに首を横に振った。
「大丈夫です。雄斗は消えたりしませんよ」
「……本当に?」
もっと確証が欲しくて、瑠華は荘一郎の腕を掴む。
「本当です。何も心配することはありません。雄斗はすぐに帰ってきますよ。それまでに、元気になっておきましょう」
そう言うと、荘一郎は瑠華をゆっくりと横たえ、片手で瑠華の両目を覆う。
「今は、ただ眠ってください。目が覚めたら、雄斗は戻ってきてますよ。あなたが不安になることは何もないです。それに……」
含み笑いをした荘一郎は、こう付け加えた。
「彼は一人ではありませんから」
コメント
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わああ第41話!横浜の路地裏から始まる展開、もうドキドキが止まらなかったよ…😭💕 青年が瑠華を肩に担いで逃がすシーン、一瞬で安全な場所に連れて行ってくれるの、めっちゃ王子様すぎない!? そして荘一郎さんがまさか魔祓師だったなんて衝撃…! ずっと黙って見守ってくれてたの、優しすぎるでしょ…「雄斗は一人ではありませんから」の含み笑い、何か隠してる感じがたまらなく気になる〜! 次話が待ちきれないよ、ゆめかも一緒に待ってるからね!🌸✨