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「……何で私の髪とか目の色と関係ない『翠』が入ってるの?」
新しくなった自分の服を引っ張りながら、子翠がじっと俺を見て首を傾げた。
鋭い。 鋭すぎる。
「え? あ、いや……それはその、あれだ! インスピレーションっていうか、なんとなく直感でな!」
俺はあからさまに目を逸らしながら、必死に言い訳をひねり出した。
(まさか、前世で好きだった中華風の漫画に出てくる、毒に詳しい賢い女の子…の友達のイメージから引っ張ってきたなんて、口が裂けても言えねぇ……!)
完全に図星なのだが、彼女は(あからさまに目を逸らしてる……)と言いたげな、さらに冷ややかな視線を俺に突き刺してきた。うっ、気まずい。アークデーモン上位の観察眼を舐めてはいけなかった。
(てゆうか、このままここに居させたら、多分原初――主にヴィオレとかディアブロにまた玩具にされるか、余計な詮索をされそうだな……。よし、一回ここから離そう!)
俺は話を切り替えるべく、手をポンと叩いた。
「あ、じゃあちょっと、ディーノが真面目に働いてるか見てきてくれるか? あいつ急に来たと思ったら、お菓子食べて感動して居座っちゃってさ!」
「ディーノ……」
「うんうん!」
俺は笑顔で頷き、未だに床に膝をついているディアブロたちの横をすり抜けさせ、子翠を部屋から送り出すことに成功したのだった。
◇◇
あー、だる
リムルのアホが「働け」とか言うから、一応それっぽい場所(一応、迷宮の監視室兼俺の職場だ)にいるけどよ。なんで俺がこんなことしなきゃなんねーんだ。
そんなことを考えていると、気配もなく部屋の扉が開いた。現れたのは、見たこともない悪魔の女。赤いブラウスに黒いネクタイ、ミニスカートを穿いた、どこか不快感のある魔力をまとった女だ。
「君がディーノ?」
ソファーにごろ寝してテンペストの絶品お菓子を貪っていた俺の前に、見慣れない新顔の女が立っていた。
「……え?」
「やぁ、初めまして」と澄ました顔で挨拶してくるそいつを、俺は凝視した。いや、凝視せざるを得なかった。隠しきれてねえぞ、そのおぞましい気配。
一見、ただの人間の女の子に見えるが俺の目は誤魔化せないぞ
「…何隠してんの?」
俺がソファーから身を起こして睨むと、その女は悪びれもせず、小首を傾げて微笑んだ。
俺が警戒を露わにすると、そいつは「……何のこと?」とすっとぼけてみせた。
目が(そっちが言わない限り、こちらは何も言う気はないよ?)と雄弁に物語っている。
やれやれ、これだから悪魔ってやつは。
腹の探り合いは性に合わねえんだよ。
その内側に秘められた尋常じゃない魔素の質、そして漂う気配の古さ……。どう考えてもただ者じゃねぇ。胃が痛くなってきた俺は、頭をガリガリと掻いてため息をついた。もう隠すのも面倒だ。
「……はぁ、ギィが『あのスライムやばいから偵察に行け』だとよー……。」
「あっそ、かわいそうに。言ったら私もギィに消されかねないから、黙っておくよ」
女はあっさりとそう言って、くすくすと笑った。どうやらギィの恐ろしさを知っているらしい。
「……で、誰の差し金なんだよ〜」
俺がそう探りを入れると、女は俺の耳元に顔を近づけ、小さな声で囁いた。
「優樹……ユウキカグラザカ。」
ユウキかよ…まーたあの厄介な男の名前が出てきた。
女は人差し指を自分の唇に当てて、不敵に微笑む。
「お互いバラさないこと。約束、ね」
バラされたくなければこの事をギィやリムルに報告するなよ、という事なのだろう。こっちだって、バレてしまえばギィにも怒られるしリムルにも呆れられる。そう思い、とりあえず頷いておいた。
「お、物分かりがいい…と言いたいところだけど、流石に生きた年月が違うからね。」
こいつ、どこまで知っているんだ?俺の本当の役職?種族?
「ね?始原の七天使、」
心臓が跳ね上がるかと思った。何で初対面でそこまで見抜かれてるんだよ!俺の最古の正体……この女、何者なんだ?俺は冷や汗を流しながら、必死に指を一本立てて念を押した。
「……」
女は何も言わず、ただ面白そうに俺を見つめている。
「わーったよ……黙っとけばいいんだろ〜」
俺が諦めてソファーに深く背を預けると、女もそれ以上は追及してこなかった。お互いに絶対に知られてはいけない致命的な秘密を握り合う、最悪で最高な「共犯関係」の成立ってわけだ。
なんだよこの新入り、めちゃくちゃ油断ならねえじゃん……。
◇◇
俺とそこの新顔……『子翠』って名前らしいが、二人で並んで、ベスター達の研究室で仕事をしている時。近くから漂ってくる異常な魔素のうねりを眺めていた。
俺たちの瞳に映し出されたのは、リムル=テンペストが、あの残りの原初三人娘(ジョーヌ、ブラン、ヴィオレ)に、ホイホイと肉体と名前を与えている狂気の光景だった。
「……なぁ、あいつ何してんの?」
「……さあ。でも 正気じゃないと思う」
冥界の大物が3人同時に進化するっていう、世界のバランスが崩壊しかねない異常事態。その様子を遠目から見ていた俺と子翠は、完全に言葉を失い、揃って盛大にドン引きしていた。あいつの魔素量、マジでどうなってんだよ。
そんな俺たちのドン引いている視線の先から、当の本人であるリムル=テンペストが、何も知らないお気楽な様子で、テクテクと元気そうに歩いてきた。
「お? 何でお前らそんな仲良くなってんの!?」
心底不思議そうに首を傾げるリムル。
その無邪気な顔を見た瞬間、子翠は一瞬でいつもの「従順な部下」の顔に戻り、スッと手を挙げた。
「あ、リムル様じゃん」
切り替え早くね………?
俺は心の中で、この恐ろしすぎる主従(とお騒がせな同僚たち)に囲まれた自分の不憫な未来を察し、再び盛大にため息をつくのだった。
コメント
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え、待って待って!第3話もめっちゃ面白かった!!😭💕 子翠の名前の由来、まさかの前世の漫画キャラからインスパイアってギャグすぎるw しかもリムル様、バレそうになって慌ててディーノのとこに逃げるの草😂 そしてディーノ×子翠の共犯関係マジでエモい…!「始原の七天使」までバレてるのヤバすぎるし、お互い秘密握り合うの最高だよね〜!! 最後の原初3人進化のドン引き具合とリムル様の「仲良くなってんの!?」って能天気なギャップが天才すぎる…ゆめさん、続きが待ちきれないよ〜!!🌸
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